4マスでは新聞・雑誌がプラスだが、昨年の反動か(経産省広告売上推移:2013年9月発表分)

2013/09/12 11:30

経済産業省は2013年9月10日付で同省公式サイト内「特定サービス産業動態統計調査」において、2013年7月分となる速報データ(確定値に先立ち公開される値)を発表した。その公開値によれば、2013年7月の日本の広告業全体における売上高は前年同月比でプラス2.3%となり、増加傾向にあることが明らかになった。今件記事で精査対象となる5項目(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ・インターネット)中では「ラジオ」がマイナス6.5%と、もっとも低迷しているのが確認できる(【発表ページ:経済産業省・特定サービス産業動態統計調査】)。

スポンサードリンク


新聞5.0%・雑誌は7.0%のプラスで堅調、ネットもプラスだが…


「特定サービス産業動態統計調査」の詳細解説は一連のまとめ記事(【定期更新記事:4大既存メディア広告とインターネット広告の推移(経済産業省発表・特定サービス産業動態統計調査から)】参照のこと)で行っているので、そちらを参考のこと。なお最新のデータ以前の値(今回なら2013年6月分以前)は、速報値の後に発表される確定値で修正された数値を用いている(入力し直している)ので、値が前月記事とは異なる場合がある。特に今回はインターネットの項目で大きな変更が確認されている。


↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2013年6-2013年7月)

前月分との比較がしやすいよう、前回記事分(2013年6月分)データ(確定値に修正済み)と並列してグラフ化している。今回月は軟調さが続く従来4マスの中でも唯一回復の兆しを見せる「テレビ」が大きく値を落とすこととなった。前年同月の値を確認するとプラス4.1%であることから、いくぶんはその反動があるのかもしれない。中期的には不調が続く「新聞」も、今回は前月に続きプラス値だが、これは前年同月の低迷ぶり(マイナス5.1%)の反動と、7月4日に公示された参議院選挙によるものと考えられる。

また先月はプラス25.7%と大規模な上昇が見られた「インターネット」だが、今回確認時において、6月分(8月発表分)の確定値が下方修正されていた。具体的にはプラス25.7%がプラス8.9%(額面は422億2900万円から365億8000万円)という次第。多少の修正はよくある話だが、今回は「ぶれ」がかなり大きかったようだ。

該当月、つまり2013年7月における大手広告代理店電通・博報堂の売上動向に関する記事【博報堂の雑誌が前年同月比で3割超のプラスに、ネットは両社共に強い(電通・博報堂売上:2013年7月分)】で確認すると、博報堂の雑誌部門が健闘し、テレビは両社ともマイナス値を示しており、類似点が多い。日本の二大広告代理店の動きは概して、日本全体の広告市場と大きく変わりが無いのが分かる。

テレビの広告費はケタ違い、その分今回月の下げも影響が大きい


今回も該当月(2013年7月分)における、各区分の具体的売上高をグラフ化する。広告代理店業務を営む日本の企業は、最大手の電通と博報堂のみだけではない。そして各広告種類の区分が業界内で完全に統一されているわけではないので(同じ仕事内容でも企業によって別区分に分類されている場合もある)、当サイトで月次更新している「電通と博報堂の-」との額面の完全一致性は無い。今調査内のみにおける月単位の、比較用の参考値として考えてほしい。


↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2013年7月、億円)

金額面では「インターネット広告」の額面が「新聞」の額を超える月が継続中。今記事で抽出している主要5項目内では「テレビ」に続き第2位の地位を固定化。今月は新聞が堅調なこともあり、インターネットとの差異は10億円未満に留まっている。【新聞広告とインターネット広告の「金額」推移をグラフ化してみる(2012年7月まで対応版)】で解説したように、両者は順位変動を繰り返しながらも次第にインターネットの優位性が明確化しつつあるのだが、今年2月以降は「新聞<<インターネット広告」の状態が継続している。

しかし「インターネット広告」は他のメディアと比べ、額面上の起伏が大きい。また今回の、前月分の大幅修正のような「ぶれ」も多分にある。見方を変えればそれだけ柔軟性・機動力に富んだ展開が可能で、広告出稿側もダイナミックな切り替えができる広告媒体ともいえる。


↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2013年7月)

次のグラフは公開されているデータの中期的推移を示したもの。今調査でインターネット広告の金額が登場したのは2007年1月以降なので、それ以降に限定した流れを図にしている。


↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2013年7月分まで)

各項目の動向を概略的にまとめると「インターネットは2009年前半に数か月に渡る低迷を記録するが、その後回復。それ以外はプラス圏」「テレビは2010年から回復基調。震災時は落ち込むが、それ以降は金融危機以前よりも復調か」「ラジオはマイナス圏を継続中」「雑誌はリーマンショック(2008年秋)で一番大きな痛手を受け、震災でも大きくマイナス。その後も厳しい状態が続く」という具合になる。

また今グラフ期間中には2007年夏の金融危機ぼっ発(サブプライムローンショック)、2008年秋のリーマンショック、2011年3月発生の東日本大地震・震災と、3つの経済的にネガティブな事象が起きており、各時期で押し並べて値が下落している。一方、下がり方やその後の回復動向は一様では無く、媒体毎に多種多様。個々の柔軟性、景気動向への適応力の相違が分かる。紙媒体「新聞」「雑誌」は双方とも、それらの観点において、厳しい現状におかれているようだ。



技術の進歩や社会情勢の変化に伴う、需給関係の動きはどの業界にもつきもの。時代の先端、時勢の流れには他業種以上の敏感さが求められる広告業界では、特にそれが著しい。上記解説にある通り、この数年の間では金融危機や震災のようなイレギュラーな出来事で、その動きが加速化している(一部では足踏みさせられているものもあるが)。それら多様な変化にもまれつつも、同業界内では構造変化が確実に起きている。

先日の「電通と博報堂の-」でも触れたが、2020年夏季オリンピック・パラリンピックの東京招致が決定したことで、これから広告業界にも少なからぬ影響が生じる可能性がある。恩恵を受けるだけに留まるのか、それとも業界の構造変化を加速させる形となるのか。いずれにしても、今後の動向に注目したいところだ。

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2016 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー