ネットが強し、一般広告はオリンピック招致効果?(電通・博報堂売上:2013年8月分)

2013/09/11 11:30

博報堂DYホールディングスは2013年9月10日に、同社グループ主要3社(博報堂、大広、読売広告社)における2013年8月の売上高速報を公開した。また電通はそれに先行する同年9月6日に単体売上高を発表している。これにより日本国内の二大広告代理店における2013年8月次の売上データが出揃った。今回は両社の主要種目別売上高の前年同月比を計算して各種グラフを生成し、それぞれの広告売上動向や広告業界全体の動きの精査を行う。

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4マスは博報堂の雑誌と両社テレビが堅調


データ取得元の詳細、各項目に関する算出上の注意事項に関しては、まとめ記事【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】で確認をしてほしい。


↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2013年8月分種目別売上高前年同月比

震災における混乱で消費者の消費性向は大きな落ち込みを見せたが、月日の流れと共にそれも収束に向かい、現在は震災前の業界動向を継続する形で状況は推移している。具体的には「従来型メディアの4マス(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)の影響力低下」「インターネットの伸長」「従来型広告の復権」というもの。一方で低迷化する4マスの中では「テレビはやや復調」の流れも確認されている。これは人口構成上の高齢化で、テレビを視聴する人が継続的に増加している(絶対数、人口全体比の双方で)のが一因であるとされている。

今回の8月分を確認すると、4マスにおいては電通の新聞と博報堂の雑誌が健闘している。1年前の状況を精査した記事で確認すると、両項目とも大きなマイナス値を示していることから、その反動が多分にあるものと考えられる。他方テレビは前年同月でも両社ともプラス値が確認されており、今回もプラスだったことから、成長を見せていることが分かる。またインターネット広告は両社とも手堅い動き。この動きは数か月継続している。

興味深いのは一般広告の動き。とりわけ両社のその他部門、電通のマーケティング・プロモーションが抜きんでた躍進ぶりを見せている。金額が少額だったことによる「ぶれ」的なものでもなく(電通の場合その他部門は135億2900万円、マーケティング・プロモーションは168億1300万円)、特異な状況には違いない。

この動きについてリリースでは特に解説は無いものの、8月で広告が大きく動く催しといえば、東京オリンピック招致周りの各種運動が想定される。実際、8月の電通における営業所別売上を見ると、東京本社のみ大きなプラスを示しており、オリンピック関連の広告展開による成果と思われる。


↑ 電通・営業所別売上(前年同月比・2013年8月)

電通の総額推移など具体的金額をグラフ化してみる


次のグラフは電通の各年8月の広告売上総額推移をグラフ化したもの。同じ月の推移を確認することで、季節属性(季節や月により広告出稿の大小が生じる)を気にすることなく、年ベースでの動向を知ることができる。


↑ 電通月次売上総額推移(各年8月、億円)(-2013年)

電通の総額動向を見る限り、リーマンショック(2008年秋)、さらには震災(2011年3月)のダメージからは脱し、直近の金融危機(2007年夏以降)の水準にすら戻った感はある。ただし上記で説明の通り、2013年8月の売上総額の上昇分の多分に、オリンピック招致効果と思われるものがあるため、今回の動きは半ばイレギュラーなものと見た方が良さそう。広告市場全体の復興ぶりを確認するには、来月以降もこの流れが継続するか否かを確認しなければならない。

一方でこの電通の売上総額に限らず昨今の動向においては、売上総額は同じだったとしても、それを構成する要素には過去と比べて大きな変化が生じていることを認識しておく必要がある。具体的には上記にある通り「テレビ以外の4マスが漸減」「テレビ・インターネット・従来型が漸増」というもの。シェアも当然、少しずつだが動いている。

なお今記事の最上位にあるグラフは、「個々の会社の前年同月比」であることに注意してほしい。比率と金額がごちゃごちゃとなり、例えば「電通のプラス5%分と博報堂のプラス5%分が同じ金額を示している」と誤解無きように願いたい。下記に具体例をいくつかグラフとしてまとめたが、個々項目では電通の方が概して額面は大きい。そして項目別ではインターネット分野の市場規模は、テレビにははるかに及ばない。


↑ 電通・博報堂DYHDの2013年8月における部門別売上高(億円、一部部門)

今月は特に、電通のその他部門がイレギュラー的な動きをしたため、博報堂との間で大きな差異が生じている(19.4倍)。

震災直後と比較すれば随分と状況は改善されたが、それでもなお電力の浪費に対する風当たりは、(無駄遣いに関する震災以前からの否定的な動きと比較しても)非常に大きなものがある。新しい広告手法として注目されている「デジタルサイネージ(デジタル系、インターネット系技術を取り入れた従来型広告の発展版。液晶パネルの利用が多い)」も、多分に委縮してしまった感は否めない。電力消費の勘案が要らない従来型広告の堅調さも、その一因にはこの電力事情があるのだろう。

従来型広告、4マスに目を向けると、テレビ以外の後退感が著しい。これは「メディア力」「訴求力」が低下したという広告出稿側による判断の結果によるものといえる。唯一伸びているテレビも、上記で説明した通り高齢者人口の増加によるところが多分にあり、質の向上を伴ったものでは無いことから、現状に甘んじることも出来まい。

2020年夏季オリンピック・パラリンピックの東京開催決定により、広告市場も小さからぬ動きがあるものと考えられる。具体的に電通・博報堂の売上に、どのような影響が生じるのか。来月以降の動向を今まで以上に注視したいところである。

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