過酷な天候で客離れ、電気料金や消費税が圧迫感……2013年8月景気ウォッチャー調査は現状下降・先行き下降

2013/09/10 08:45

内閣府は2013年9月9日、2013年8月時点における景気動向の調査、いわゆる「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると現状判断DIは先月から続き5か月連続して減少し51.2となったが、水準値50は上回る状態を維持した。先行き判断DIは先月から減少し51.2となったものの、引き続き水準値の50以上は維持した。結果として、現状下降・先行き下降の傾向を示している。基調判断は先月と変わらず「景気は、緩やかに持ち直している」となっている(【発表ページ:平成25年8月調査(平成25年9月9日公表):景気ウォッチャー調査】)。

スポンサードリンク


荒れる天候が客足を引っ張る


調査要件や文中のDI値の意味については、今調査の解説記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で説明している。そちらでチェックしてほしい。

2013年8月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比マイナス1.1ポイントの51.2。
 →5か月連続の減少。「やや良くなっている」が減少、「変わらない」「やや悪くなっている」が多少大きめな増加を示している。
 →家計では高額品や新型車が堅調ながらも、猛暑や豪雨で小売店などのサービス関連で客足が伸び悩み、ネガティブな動きに。企業動向は夏休みの影響で受注や生産の増加に一服感があり、低下。雇用関連は建設業を中心に求人が増加し上昇。

・先行き判断DIは先月比で2.4ポイント低下の51.2。
 →政策効果や駆け込み需要の期待がある一方、電気料金などの上昇や消費税によるマインド低下を嫌って全部門で低下。
小売業は天候の荒れ具合が災いし、それ以外は公共料金の値上げや消費税引上げへの懸念でマインドが低下している。消費税率引き上げ判断に関する材料の一つとなるには違いない。

住宅・製造関係が下げるが雇用はプラスな現状判断DI


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向を簡単ながらもチェックしていくことにする。まずは現状判断DI。


↑ 景気の現状判断DI(-2012年8月)

今回発表分では上記の概略にもある通り、家計と企業でマイナス・雇用でプラスという、はっきりと明暗が分かれる形となった。そして全体では雇用だけでは家計と企業を引っ張りきることは出来ず、マイナスを示している。

マイナス幅が一番大きいのは住宅。リリースでは特に言及は無いが、家計、さらには企業動向までを合わせて一番高い値を示しており、その反動が出ているものと考えられる。またサービス・小売も下げ率は大きめだが、これは猛暑と豪雨で客足そのものが遠のいたのが一因。暑い分には夏物が売れるものの、暑すぎても客が来店しないという、難しいところがある。なお今回の下げで、家計動向では住宅以外がすべて50を切る形となった。

続いて景気の現状判断DIの動向を、資料にある長期チャートで確認する。主要指数の動向のうち、一番下落しやすい「雇用関連」の指数の下がり方が把握できるよう、前回の不景気時、2001年当時における下げの最下層時点の部分に赤線を新たに追加し、今回の不景気との比較をしやすくしている。


↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)(-2012年8月)

2007年夏以降に顕著化し日本にもその波が襲いかかった、世界規模の直近における金融危機・不景気では、2008年後半のリーマンショックを経てさらに事態が悪化していく。これまでの不況がまるで前菜であったかのようなメインディッシュ的不況(恐慌)状態を呈することになる。各指数はITバブル崩壊時(2001年当時)を超えて下落。その後リバウンドの形で上昇するが、経済そのもの、さらには加速度的な不況感で市民の心理が受けた傷は大きく、基準値50を超える事無く天井とする形での動きが続く。

そして2011年3月に発生した東日本大地震・震災で再び大きく、勢い的にはリーマンショック以上のスピードで各値は下落を示す。その後はリバウンドをするものの、低迷感の強い流れが日常化した。

2012年11月以降は日本国内で大きな政情変化があり、期待感とその期待に応える形で一部実態としての株価・為替の動きが起き、それらに後押しされる形で各指数は上昇。今年に入って春先以降は海外要因などで、株価や為替は不安定な動きを示し、それに伴い指数も揺さぶられている。直近では消費税の引き上げ時期判断と電気料金の値上げが圧力となっている。

景気の先行き判断DIは現状と比べ、やや下げ幅が大きい。これは直上で触れた「消費税」「電気料金」の2点に関して、より強い懸念があるのが要因。


↑ 景気の先行き判断DI(-2013年8月)

もっともマイナス値が大きいのは住宅関係のマイナス6.6。先月のコメントにもある通り、これまでの数か月間他項目と比較しても、上昇幅がやや過剰だったことに対する反動が一因。もう一つは同じ過剰でも、住宅供給のピッチがやや急すぎて、しばらくは需給関係のバランスを保つために、やや供給を落とさざるを得ないのではないかとする考えによるものだろう。特に消費税周りでは、仮に当初予定の期間通りの引き上げが決まれば、引上げ後には急速に需要が冷え込む可能性が高いことから、それを受けてのマイナスと考えられる。

次の折れ線グラフ上の過去の動きで確認できるが、雇用関連の値は他の指数に先行するパターンが繰り返されている。そして「雇用値」が「合計値」を下回ると、(過去2回の事例では)大規模な「全体値」の下落と、景気の落ち込みが生じている(2001年前半と2008年前半)。今回月では雇用値は前月から再びマイナスに転じたものの、今のところは全体値を上回っており、心配するほどの状態ではなさそうだ。ただし、「この先」に対する思案の結果なだけに、現行よりも消費税周りでの影響が大きく出ているのが気になる。


↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)(-2013年8月)

変動傾向は現状指数とほぼ同じだが、2007年夏の金融危機ぼっ発、そしてリーマンショック後におけるリバウンドなどでの上昇時の戻りは、現状指数と比べると鈍い。これは心理的な面で考察した場合、現状認識よりも、先行き不透明感の方が大きいのが要因。つまり「先の見通しが立たず、希望も持てず、心理的な『景況感の回復』が見られにくい状態」が続く人が多数に及び、その結果、値も低迷したままとなった次第。そして2011年3月に発生した震災が、さらに人々のマインドに圧力をかけることとなる。

また現状指数と同じ動きだが、2012年11月以降は政局の変化で今までの不透明感が一転し、大きな上昇を見せている。そしてここ数か月は現状指数同様に、株価・為替の急変を受け、さらには電気料金の値上げや消費税の引き上げ問題に対する不安から、頭を垂れる状況に陥っている。

家計では景況感の回復と価格高による足踏み感が交差中


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断に関して、その判断を下した理由を詳細に連ねたデータも収録している。そこで世間一般で一番身近な「家計(現状・全国)」「同(先行き・全国)」の事例を抽出したのが次の一覧。

■現状
・新型車効果で来客数は増加し、販売も好調で、エコカー補助金のあった前年を上回っている(乗用車販売店)。
・夏場の猛暑により、エアコン、冷蔵庫が好調である。猛暑の影響もあるが、来年消費税が上がるということで、新築した客が家電製品を買うという動きが出ているようである(家電量販店)。
・7月は衣料品が苦戦したが、8月は猛暑により夏物衣料が好調に推移している。また、高額商品がここ数か月では顕著な伸びを示している(百貨店)。
・客単価が引き続き堅調である。猛暑で夏物の動きが良く、お盆の期間が長かったことも好影響を与えた(スーパー)。
・局地的な豪雨があるなど、天候不順となっている。雨中は入店客もなく商売に大きな影響が出ている。晩夏、初秋物は堅調だが、気温が低いせいか夏物衣料品が厳しく、足を引っ張っている(百貨店)。
・工事現場の客の減少と、猛暑の影響で来客数が前年を下回っており、売上は3か月前より3-4%落ちている(コンビニ)。
・猛暑が大きく影響していると思うが、来場数は前年比で大きく減少している(ゴルフ場)。

■先行き
・待望の新型車投入が10月にある。来年の消費税増税もあることで市場も活気付く(乗用車販売店)。
・消費税増税前の高額品を中心とした購買増加と、アベノミクスによる成長戦略への具体的な動きへの期待感が高まる(百貨店)。
・電気料金を始めとした各分野での値上がりにより、消費者の生活防衛意識がいっそう高くなるとみられるため、今月同様の厳しさが続くと予想される(百貨店)。
・食料原価の値上げと客の節約志向で客単価が上がらず、今後も厳しい状況が続く(コンビニ)。
・消費税増税が来年度実施されるであろうという状況で、客の財布のひもが緩むとは思えない(スーパー)。
猛暑は一部小売で売り上げを底上げする形となったが、一方で客足そのものを引かせる事例も少なくない。さらに豪雨により気温も下がって夏物への関心も低下した上で来客も減るというダブルパンチを受けている事例もある。

また、電気料金の値上げや消費税引上げ懸念のように、家計に直接影響を与えうる要素が重しとなっているのも見て取れる。消費税については駆け込み需要というポジティブな要素もいくつか確認できるが、どちらかといえばマイナス要因の方が意見としては多い。

なお夏季休業に関しては、今年は日どりの関係から長期化したところが多く、それが企業にはマイナスに働く場面(例えば受注量が減った)が多く見受けられた。



政策効果の
実態が少しずつ企業に
プラスの効用として
表れつつある。
その一方で家計を中心に
消費税周りや
電気料金引上げ懸念など
コスト高の影響も
見え始める。
直近の不況は2007年夏にはじまる金融危機、リーマンショック、震災と、大きく分けても3つの要因を経る形となり、人々の心理にも大きな変化を与えている。特に震災は多くの人が直接生命の危機にさらされたことから、保守化・守りの姿勢の強化を人々の心に深く刻み込んでいる。この動きは小売業を中心に大きな影響を与えている。

昨今では外部要因による株価や為替の乱高下、そして景気が回復する過程での遅延性に伴う足踏み、さらには消費税引き上げ懸念や電気料金をはじめとした公共料金の値上げによる重圧感が、景況感の一時的後退感を演出している。特にこれまでの状態における負の遺産、電気料金の負担は家計だけでなく企業にものしかかっており、消費行動だけでなく企業の収益にも影響を与えはじめている。

電気料金は資源価格の高騰も一因であるため、外部的要素も少なくないが、同時に「負の遺産」を清算する方向にかじ取りが出来れば、ある程度は解消できる。一方、消費税の引き上げは最終的には政治判断となるが、現状の今件指数を見る限り、当初の予定通りの引き上げは時期尚早の感は否めない。

また、先日決まった2020年の東京オリンピック・パラリンピックを受け、マインド的な昂揚感に加え、実態としての需要増加が期待できる。これが各指数にどのような影響を与えることになるのか。次月以降もその動きは見逃せない。

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2016 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー