全体的にほぼ安定、穀物価格が下落の動き(2013年8月分世界食糧指数動向)

2013/09/10 09:45

2013年9月5日付で国連食糧農業機関(FAO、Food and Agriculture Organization)は、毎月恒例となる【世界食料価格指数(FFPI:FAO Food Price Index)】のデータ更新を実施し、2013年8月分について発表を行った。この値は1990年以降にFAOが世界の食料価格の変化を月単位で定期的に集計、計算した上で発表しているもの。今回はこの8月分の最新発表値をベースとして複数のグラフを生成・再構築し、現在の世界規模での食料価格の動向を眺めていくことにする。

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金融危機で上昇し、高値安定。昨今はいくぶん下げ基調に


今記事のデータ取得元や用語の解説については、一連の記事のまとめページ【世界の食料価格の推移(FAO発表)】で行っている。そちらで確認のこと。

最初に生成したのは、現時点での最新値(2013年8月分)までを反映させた、公開全データを使った折れ線グラフ。1990年以降の中長期的な食料価格の変移概要が一目で把握できる。詳細を推し量るには難儀するが、概要を俯瞰できる点では有益なものである。


↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2013年8月)

砂糖は相場関係ではしばしば話題に登るように、価格変動性が高い食料品である。その砂糖の動向を表す砂糖指数(グラフ中ではオレンジ色の線)は、他と比べると上下の値動きが激しい。一方、それ以外の項目は得てして2005年前後までは、下限を50、上限を150とした領域(水準値を100とし、プラスマイナス50内手のボックス圏)での値動きを示していた。

ところが2005年終盤から全体的に少しずつ上昇の気配を見せるようになる。そして金融危機のきっかけ「サブプライムローンショック」(2007年夏-)の時期になると、大きく上昇の機運が見えてくる。その後は上昇の反動による急降下、さらには「リーマンショック」(2008年9月以降)を経て、高値安定の動きに至る。

直近では2011年後半期から、各食品項目により下げ率に違いはあるものの、少しずつ値を落としている。この数年間上昇一本槍の砂糖指数の動きもブレーキがかかり、さらには反動の下落状態に転じている。だが確実に下落を継続しているのは砂糖と油脂のみで、他は上下を繰り返しながらも全体的には高値維持の状態にある。

続いて、グラフ生成開始時期を金融危機が明確化した2007年にして、描写対象期間を短くし、金融危機以降の動向を詳しく見ていくことにする。


↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2013年8月)

砂糖指標の動きを見ると2010年初頭から、ジェットコースターのような急落と急上昇で、峡谷を描くかのような動きが見える。これは過熱感のあった砂糖相場で、豊作の報をきっかけとした相場反動(反落)が起きた結果である。だが中期的な価格上昇の原因となる「需要の拡大(新興国、特に中国)に伴う需給バランスの不安定感」が解決したわけではなく、砂糖価格はほどなく再上昇をはじめている。そして2012年中ほどまでは、他の指数と比べて高い領域(300を底値)での値動きに終始していた。

ところが直近の一、二年では、2011年中旬の約400を天井として、そこから少しずつ、そして確実に値を落とす流れにある。これは豊作による供給の増加、景気後退に伴う甘味需要の減退が主な原因である。各国で景気回復機運が高まる中、そろそろ反転の動きがあってもおかしくは無いのだが。

前月比と前年同月比の動き


昨今、さらには直近の食料価格の動向を確認するため、各指標における「前年同月比」と「前月比」をそれぞれ算出した上で併記し、数字の変移が分かりやすいようにしたのが次のグラフ。


↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2013年8月)

総合指数は前月比でマイナス1.9%と先月に続きわずかながら下落、前年同月比ではマイナス5.1%とこちらも先月同様の下落。全般的な指数の下げが昨年来、今に至るまで継続しているのが分かる。

個別項目を見ると、前年同月比では乳製品が大きなプラスでこれは先月から変わらず。穀物・油脂・砂糖が大きなマイナスで、こちらも先月からの継続。一年間の区切りで見ると、これらがそれぞれ大きな上昇、下降を示しているようすがうかがえる。一方で前月比では穀物がやや大きな下げを見せているが、それ以外は概して小幅な値動きに留まっており、この数か月の視野で見れば値は安定の方向にあるようだ。乳製品は昨年の同時期が大きく下げていたため、その反動が表れているのだろう。

リリースでは今月の動きについて「穀物指数は大きな下落。世界的な増産傾向が影響している。特に(アメリカの干ばつによる不作懸念があるにも関わらず)トウモロコシの大幅な増産による価格下落(14%減)が、指数そのものに大きく作用している」と言及しており、穀物指数の下落が主にトウモロコシの価格下落によるものであることを説明している。

需給双方の立場で見ても、食料品価格は安定していることが望ましい。安値では生産者が、高値では消費者が疲弊してしまうからだ。一時的な値の大幅な動きはどちらかを富ませるが、相手方が苦痛を覚え、恒久的な商売が難しくなってしまう。その観点では(数年前と比べれば高値維持にあること次第はやや問題だが)昨今の値動きの安定感は望ましい形といえる。

農林水産省のレポートで現状を確認


人口増加と諸国の生活水準の向上は概して継続的なものであり、中期的には相場動向による上下変動を経ながら、食品価格は上がり続ける。原油輸出国だった国が、自国の発展と共に石油の消費量が増え、輸入国に転じる仕組みと同じである。異常気象、世界的な特定食品へのブーム、バイオエタノールのような産業レベルでの大変革、あるいは「緑の革命」のような、需給関係のバランスを大きく動かす事態があれば、その動きも変わりうるが、それらも最近では概して食料価格を押し上げる方向の事象が続いている。

今記事で毎月精査している【農林水産省の海外食料需給レポート】の2013年8月分で最新の動向を確認すると、主要穀物品種のうち小麦・とうもろこし・大麦・米で生産量が増加し、史上最高の量となる見込み(これは先月から継続している。特にとうもろこしや米で史上最高の生産量の予想が続いている)。一方消費量も小麦・とうもろこし・大麦・米で増加し、こちらも史上最高の量となる見込みが出ている(こちらも先月から変化なし)。結果としては期末在庫量見込みは生産量が消費量を上回ることから、前年度より増加して4.6億トンとなり、期末在庫率も19.3%と上昇する見込み。つまり8月時点における穀物需給予測動向は、7月から大きな変化はないことになる。上記で「価格そのものは安定の方向にある」としたが、それを裏付けるものといえる。

昨年の各地域での干ばつに伴う食糧生産量の減少から状況は改善し、在庫は増加の動きを見せている。しかし消費量が継続的に増加し続けている事実は忘れてはならない。昨今では値は比較的安定しているものの、昨年のように気候変動などで生産量が落ち込めば、再び数年前の高値圏への値動きを見せるかもしれない。注視を継続し、その気配をつかみ取りたいところだ。

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