博報堂の雑誌が前年同月比で3割超のプラスに、ネットは両社共に強い(電通・博報堂売上:2013年7月分)

2013/08/11 10:00

博報堂DYホールディングスは2013年8月9日付で、同社グループ主要3社(博報堂、大広、読売広告社)の2013年7月の売上高速報を公開した。また電通はそれに先行する同年8月7日に単体売上高を発表している。これにより日本国内の二大広告代理店における2013年7月次の売上データが出揃う形となった。今回は両社の主要種目別売上高の前年同月比を計算してグラフを生成し、それぞれの広告売上動向や広告業界全体の動きの精査を行うことになる。

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4マス不調だが博報堂の雑誌が抜きんでる


データ取得元の詳細や各項目に関する算出上の注意事項については、まとめ記事【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】で確認のこと。


↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2013年7月分種目別売上高前年同月比

震災以降一時的に大きく揺れ動いた消費者の消費性向は落ち着きを見せ、現在はほぼ震災前の業界動向が継続、さらには拡大化する形で状況が推移している。

その動向とは具体的には「4マス(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)の影響力低下」「インターネットの伸長」「従来型広告の復権」というもの。一方で昨今では4マスの中で「テレビはやや復調」の流れも確認される。これには人口構成上の高齢化により、テレビを視聴する人が継続的に増加している(絶対数、人口全体比の上で)のが一因であるとされている。

今回の7月分を確認すると、4マスは概して軟調だが、博報堂の雑誌が大いに健闘する動きを示している。これは比較対象となる1年前の状況を精査した記事にある通り、同社の雑誌の1年前がマイナス19.1%を示していることから、その反動が多分にあると考えられる。もっとも2年比計算をしてもプラス10.7%で、単なる反動に限らず、同社雑誌部門が純粋に売り上げを大きく伸ばしたことにも違いない。

インターネット広告は両社とも手堅い動きで、この動きは数か月継続してのもの。また一般(従来型)広告も概して順調に推移しており、4マスのような低迷感は見られない。

電通の総額推移など具体的金額をグラフ化してみる


次のグラフは電通の各年7月の広告売上総額推移をグラフ化したもの。同じ月の推移を確認すれば、いわゆる季節属性(季節や月により広告出稿の大小が生じる)を気にすることなく、年ベースでのすう勢を知ることができる。


↑ 電通月次売上総額推移(各年7月、億円)(-2013年)

電通の総額動向を見る限り、リーマンショック(2008年秋)、さらには震災(2011年3月)のダメージからは脱しており、直近の金融危機(2007年夏以降)の水準へ向けて、順調に回復しつつある状況が見て取れる。なお2010年7月が特異な動きを示しているが、これはワールドカップ効果によるもので、同社の「その他」項目の前年同月比が400%近い値を示した結果。イレギュラーなものと見なして良い。

一方で電通に限らず昨今の動向を見るに、同じ水準の金額とはいえ、それを構成する要素には過去と現在とでは大きな変化が生じている。そしてその変化は現在も進行中。上記で示した傾向「4マス軟調だがテレビは例外的に強め」「インターネットと従来型広告は伸長」がその代表的な動き。

ちなみに今記事最上位にあるグラフは、「個々の会社の前年同月比」であることに注意してほしい。絶対額の差異にそのまま結びつくわけではない。例えば「電通のプラス5%分と博報堂のプラス5%分が同じ金額を示している」と誤解する向きがあるが、その認識は間違っている。下記に具体例をいくつかグラフとしてまとめたが、個々項目では電通の方が概して額面は大きく、項目別ではインターネット分野の市場規模はテレビにははるかに及ばない。


↑ 電通・博報堂DYHDの2013年7月における部門別売上高(億円、一部部門)

例えばテレビの項目に限っても、電通の金額は博報堂の2倍近くに及んでいる。またその電通でテレビとネットの差異は、実に12倍近くに達している計算となる。

熱中症患者の動向を見ても分かる通り、今年は去年以上の猛暑を迎えている。電力供給では昨年のような数字目標付きではないが、節電要請が成されていることに違いは無く、電力(を浪費していると見られがちな挙動)に対する風当たりは相変わらず強い。数年前から注目を集め始めた「デジタルサイネージ(デジタル系、インターネット系技術を取り入れた従来型広告の発展版。液晶パネルの利用が多い)」は震災以降の電力事情の中で、「無駄に見える電力消費はバッシングの対象になりうる」とのリスクが生じ、勢いは展開・開発共に足踏み状態にある。電力関係でほとんどリスクを生じない従来型広告の業績が順調なのも、一部にはこの電力事情によるものがあると考えられる。

テレビ以外の4マスの動きが鈍い、むしろ後退している状況は、少なくともクライアントの目から見れば、それら媒体の「メディア力」「訴求力」が低下したことの反映ともいえる。テレビは唯一成長を見せているが、その事由も質の向上では無く、人口構成比によるところが大きい事情を思えば(、そして質は概して低下傾向にあることを考慮すれば)、このままの状況が続くことで「臨界点」を突破し、お得意様足る高齢層からも距離を置かれる可能性も十分にある。

経産省が毎月発表している広告売上推移と共に、今件両社の売上は、広告業界の動向だけでなく、日本国内のメディアの挙動を推し量れる貴重なデータに他ならない。メディアのパワーバランスに変化があれば、その気配を数字として知ることができるだろう。

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