セールス一服感などで家計部門が低下……2013年7月景気ウォッチャー調査は現状下降・先行き横ばい

2013/08/09 15:45

内閣府は2013年8月8日付で、2013年7月時点における景気動向の調査、いわゆる「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによれば現状判断DIは先月から続き4か月連続して減少し52.3となったが、水準値50は上回る状態を維持した。先行き判断DIは先月と変わらずの53.6となり、引き続き水準値の50以上を維持することとなった。結果として、現状下降・先行き横ばいの傾向を示している。基調判断は先月とは異なり「景気は、緩やかに持ち直している」となっている(【発表ページ:平成25年7月調査(平成25年8月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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セールス一段落と夏物伸び悩みがマイナス要因


調査要件や文中のDI値の意味に関しては、今調査の解説記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で説明しているので、そちらでチェックしてほしい。

2013年7月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比マイナス0.7ポイントの52.3。
 →4か月連続の減少。「変わらない」がやや大きめな増加を示している。
 →家計では飲料などの販売が堅調だが、高額商品の伸びがひと段落ついたのに加え、夏物セールが低調だったことを受けて低下。企業動向はドル安で仕入れ価格上昇などのマイナス要因はあったものの、受注・生産増加で上昇。雇用動向は建設業やサービス業で求人増加の動きがあり上昇。

・先行き判断DIは先月比で横ばいの53.6。
 →インフラや生活必需品の価格上昇懸念があるが、政策効果への期待は大きく、家計で低下、企業・雇用で上昇。
円安に伴うコスト増、電気料金をはじめとするインフラ周りの料金値上げに伴う、家計の負担増は先月から継続している(現状判断における家計部門全体の低下は4月以降続いている)。一方で企業や雇用面で景気の回復感を覚える実態が見え始めているのも分かる。

先行きでは飲食関連の下げが気になる


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向を簡単にチェックしていくことにする。まずは現状判断DI。


↑ 景気の現状判断DI(-2012年7月)

今回発表分では上記の概略にもある通り、家計でマイナス・企業と雇用でプラスという、はっきりと明暗が分かれる形となった。そして全体では家計に引っ張られ、マイナスを示している。

マイナス幅が一番大きいのは小売。これはリリースにある通り、とりわけ百貨店で夏物商品の伸び悩みが見られたのが原因。ただし気候的には今夏は猛暑なことから、季節動向の結果としてよりは百貨店という部門特有の問題による不調の可能性もある。

一方で雇用はかろうじてプラスだが誤差の範囲で留まっているものの、企業はそれなりに明らかなプラスへの動きが確認できる。特に製造業の値が頼もしい。受注・生産が具体的に増加を果たし、景気の躍動感を覚えるところも増えて来たのだろうか。

続いて景気の現状判断DIの動向を、資料にある長期チャートで確認する。主要指数の動向のうち、一番下落しやすい雇用関連の指数の下がり度合いが把握できるように、前回の不景気時、つまり2001年当時における下げの最下層時点の部分に赤線をこちら側で新たに追加し、今回の不景気との比較をしやすくしている。


↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)(-2012年7月)

2007年夏以降に顕著化した直近の金融危機・不景気では、2008年後半のリーマンショックを経てさらに事態が悪化。これまでの不況ぶりが前菜であったかのようなメインディッシュ的状況を呈することになる。各指数はITバブル崩壊時(2001年当時)を難なく超えて下落。その後リバウンドの形で上昇するが、経済そのもの、そして市民の心理が受けた傷は大きく、基準値50を超える事無く天井とする形での動きが続く。

そして2011年3月に発生した東日本大地震・震災で再び大きく、加速度としてはリーマンショック以上の勢いで各値は下落を示す。その後やはりリバウンドをするものの、低迷感の強い流れが日常化する形となった。

2012年11月以降は日本国内の政情変化に伴い、期待感とその期待に応える形で一部実態としての株価・為替の動きがあり、それらに後押しされる形で各指数は上昇。今年に入って海外要因などで株価や為替はやや不安定な動きを示し、それに伴い指数も揺さぶられるが、指数は引き続き水準値50を上回っている。

景気の先行き判断DIも現状同様、家計が全マイナス・企業と雇用が全プラス。


↑ 景気の先行き判断DI(-2013年5月)

もっともマイナス値が大きいのは住宅関係のマイナス1.8。ただし同値はこの数か月異様なまで上がっていたこともあり、その反動と考えられなくもない。また飲食関連は引き続き下落を続け、今月もまた唯一の50割れを記録している。円安に伴うコスト高は企業動向でも変わらないはずだが、昨今のファストフード全体に浸透している不調感がそのまま反映されているのかもしれない。

次の折れ線グラフ上の過去の動きで確認できるが、雇用関連の値は他の指数に先行するパターンが多い。さらに「雇用値」が「合計値」を下回ると、過去2回の事例では大規模な「全体値」の下落、そして大きな景気の落ち込みが生じている(2001年前半と2008年前半)。今回月では雇用値はプラスに転じており、このパターンに伴う懸念はやや遠のいたようだ。


↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)(-2013年7月)

変動傾向は現状指数とほぼ同じ。しかしその一方で、2007年夏の金融危機ぼっ発、そしてリーマンショック後におけるリバウンドなどでの上昇時の戻りがやや鈍い。これは概して現状認識よりも、先行き不透明感の方が大きいのが要因。つまり「先の見通しが立たず、希望も持てず、心理的な『景況感の回復』が見られにくい状態」が続く人が多かったので、値も低迷したままとなっている。そして2011年3月の震災が、さらにその状況に拍車をかけることとなった。

また現状指数と同じ動きだが、2012年11月以降は今までの不透明感が一転し、大きな上昇を見せている。ここ数か月は現状同様に、株価・為替の急変を受け下落しているが、先行きに対する期待感は大きく、現状値と比べるとわずかながら高い水準を維持している。

家計では景況感の回復と価格高による足踏み感が交差中


発表資料には現状・先行きそれぞれの景気判断について、その判断を下した理由が詳細に語られたデータも収録されている。そこで世間一般で一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)の事例を抽出してみることとした。

■現状
・今月は初旬から好天に恵まれたことで、飲料水やアイスクリームなどの夏型商品がけん引し、売上が前年を上回っている。今までと違う傾向として、低価格の雑酒、発泡酒から、高単価のビールに移る動きがみられ好調である(コンビニ)。
・クリアランスセールの前倒し実施で、先月はかなりのプラスが出たが、今月は予想以上にマイナスが出ており厳しい状況である(百貨店)。
・天候が不順で、特に客足の伸びる夕方の豪雨には閉口している。当市の一大イベントである夏祭りも雨にたたられ、商店街に人が歩いていなかった(商店街)。
・好調を維持してきた海外特選ブランドは、円安により数度にわたって値上げが行われ、販売量が減少している(百貨店)。
・今月に入りセールの売上が伸びない。日々暑く、来客数も少ない。商店街全体の客も少なく、大変厳しい状況が続いている(衣料品専門店)。
・7月からのパンやツナ缶などの値上げにより、値上げ商品の動きは悪くなっている(スーパー)。

■先行き
・石油製品の値上がりで家計も企業も経費が先に増加しているが、何と言っても現政権の経済対策に対する強い期待感が消費を押し上げている(一般小売店[土産])。
・梅雨明けが遅れ、残暑の予報が出ていることから、今後、秋物の立ち上がりが遅れることが予想される(衣料品専門店)。
・ガソリン代、食品、日用品も値上がりし、外食まで金が回らない。消費税増税も予想され、先行き不安が外食に影響する(一般レストラン)。
・ガソリン価格がかなり高騰しており、今後もこの傾向が続くと予想される為、新車販売への影響は避けられない(乗用車販売店)。
今年は梅雨明けは平年比で随分と前倒しされたはずだが、雨による不調を訴える声も確認できる。抽出した区分が「家計動向」のため、円安による商品価格の値上げに絡んだ話が多いが、一方でガソリン代に関する言及は企業などでも頻繁に見受けられる。

特に企業部門では上記概要でも記した通り、具体的な注文の増加に関する言及が多く、さらなる今後への期待が見受けられる。ただしコスト高は相変わらずで、その調整に苦心しているところも少なくない。



政策効果の
実態が少しずつ企業に
プラスの効用として
表れつつある。
その一方で家計を中心に
コスト高の影響も
見え始める。
直近の不況は2007年夏にはじまる金融危機、リーマンショック、震災など複数の要因を経る形となり、人々の心理状況にも大きな変化を与えている。特に震災は直接生命の危機にさらされたこともあり、保守化・守りの姿勢の強化を人々の心に深く刻み込んでいる。この動きはとりわけ小売業に大きな影響を与えている。

一方で日本国内では昨年末に大きな政情変化があり、これが景況感回復のきっかけとなった。多くの産業の足かせだった過度の円高は是正されはじめ、期待感を先取りする形で株価は上昇。さらにその期待が実体化するにつれて、世情の雰囲気は持ち直しを見せつつある。

昨今では外部要因による株価や為替の乱高下、そして景気が回復する過程での遅延性に伴う足踏み、一時的後退感の雰囲気もある。またこれまでの状態における負の遺産である、電気代の値上がりが(特に家計において)大きな負担として実体化しており、消費行動をはじめ、各方面にも影響を与えはじめている。

今回月では現状・先行き共に「家計後退」「企業前進」という、特徴的な動きを確認できた。これが数か月継続するようならば、景況感の回復が実体のものとして、まずは企業サイドで浸透しはじめた証となる。外部要因に振り回される状況なのがやや気になるところだが、今後の動向には今まで以上に注視したいところだ。

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