ギリシャの若年層失業率58.7%に改善、スペインは56.1%に悪化…EU失業率動向(2013年6月分)

2013/08/02 14:45

EU(欧州連合)内外の統計情報を集約し、各国、さらにはEU全体の政策に役立てる統計情報を提供するEU統計局(Eurostat)は2013年7月31日付で、関連諸国の失業率データについて最新値となる2013年6月分の値を公開し、その分析レポートも合わせて発表した。今回はその値を用いて、主にEU諸国における失業率、中でも若年層の値にスポットライトをあて、状況の把握を行う。若年層失業率の高さで知られるスペインやギリシャの動向が気になるところだ。

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ギリシャ・スペインは全体で26%台


グラフ中などに出てくるEA17・EU28に関しては一覧ページ(【定期更新記事:ヨーロッパ諸国の失業率動向(EU統計局発表)】)上の解説部分で確認のこと。なお先月の記事で詳しく解説しているが、今年7月からEUにクロアチアが加盟し、EU加盟国数は28か国となった。今般記事でもこれまでの27か国から28か国で各値は収録・計算をし直している。

さて、ILO基準における2013年6月時点の失業率は次の通りとなる。EU28か国では11.0%・EA17か国では12.1%を記録している(先月から変わらず)。このグラフもあわせ今記事では、直近2か月分のデータがEurostat上で未収録の場合、掲載時点で公開されている最新月分のデータを代用している。例えばギリシャは2013年4月分までの値が公開されているため、ここでは6月分として収録・掲載している。


↑ 2013年6月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)

今回月ではトップはギリシャとなり、スペインはそれに0.3%ポイントの僅差をつけての2位についている。ギリシャの値は上記にある通り最新値は2013年4月時点のものでそれを用いているため、単純比較はやや問題があるが、仮に同月の値同士で両国の値を比較すると、スペインは26.5%となるため、やはりギリシャの26.9%の方が上になる。

今回最新値を入力した上で、やや気になるのはキプロスの失業率の上昇具合。

↑ 2012年3月-2013年6月でのキプロスの失業率(季節調整済)

踊り場的な月もあるが、この一年以上の間、上昇の一途をたどっている。【キプロス支援と預金封鎖と「預金税」と】などでも解説しているが、同国ではユーログループからの財政救済を受けるために預金封鎖という手立てを講じ、大きな経済的混乱を招くことになった。その後中央銀行の財務改善化をはじめとした財政再建策は順調に進んでいる。ただし、経済そのものの見通しは不透明感が強く、景気動向は引き続き思わしくない状況が継続中。それが失業率の悪化にも表れているようだ。

失業率がとりわけ高いギリシャやスペイン、そしてキプロス以外にも、ポルトガル、クロアチア、アイルランド、イタリアなど、財政・債務問題でしばしば話題に登る国々が、今失業率の上位にも名前を連ねている。単純に失業問題がそれ自身だけでなく、それぞれの国の経済問題、そして財政問題と密接な関係があることを示唆している。

今回も該当月の前月(2013年5月)の値との差異を計算し、グラフ化を行う。Eurostatでは過去データも逐次修正されているため、前月分もその修正を反映した上でのものとなる(【Data Explorer】上の値を使用)。


↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2013年5月→2013年6月)(またはデータ最新一か月前→最新)

国内人口の少ない国では統計値がぶれやすい。また国によって誤差が生じやすい(さらに経験則からは人口が少ない国ほど誤差、修正が起きやすいことが判明している)。今件ではプラスマイナス0.5%ポイント以内は「誤差」と見なしている。その観点で見ると、キプロスの悪化がとりわけ目に留まる。これは直上でも解説した通り、同国のここ一、二年における経済状態の悪化が失業率の値にも反映されたものと考えられる。

ギリシャ・スペイン共には先月から低下、しかし5割以上は維持の若年層失業率


昨今の失業問題で特に大きな社会問題とされているのが、元々雇用上の立場では弱い立場にある若年層の失業率。直近の2013年6月時点では25歳未満の失業率はEA17か国で23.9%・EU28か国でも23.4%を記録しており、5人に1人以上が失業状態にある(間もなく4人に1人となりそうだ)。

全体の失業率上位でもお馴染みのギリシャの58.7%(2013年4月)、スペインの56.1%を筆頭に、クロアチア、ポルトガル、イタリア、キプロスなど、経済的に不安定な状態にある国や、労働市場・構造上の問題を抱える国での高さが目立つ。最上位のギリシャやスペインは、これでも先月分と比べればいくぶん改善はされたものの、未だに「若年層の過半数が失業状態」という状況に変わりはない。


↑ 2013年6月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(6月データが無い国は直近分)


↑ 2013年6月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(5月データが無い国は直近分)

プラスマイナス0.5%ポイント以内を誤差基準としているので、今回月ではイタリア、スロバキアの悪化、ポルトガル、ブルガリア、リトアニア、エストニアの改善が確認できる。特にエストニアは前月比でマイナス2.5%ポイントと大幅な改善が起きている。過去のデータを紐解くと、今年に入ってから急速に若年層失業率は改善の方向にあることが分かる(同国では現時点で2013年5月分が最新データ)。


↑ 2012年9月-2013年5月での25歳未満の失業率(季節調整済)(エストニア)

同国はバルト三国の中でもIT化を推し進めていることで知られており、2007年には世界初のインターネット国政選挙を開始、NATOのサイバー防衛センターの設立やEUのIT関連機関の新設などが確認できる。経済もIT化の後押しを受け、順調に成長を続けており、公的債務の状況も堅調。GDP比は10.0%と、EU諸国では最低値を示している。また昨今では失業問題よりも、むしろ労働力不足が懸念されているほどとのこと。これらの要因が、昨今の失業率低下を導いているようだ。

一方、先月「日本の大幅悪化」とした件だが、今回は最新値で前回月と比べ1.0%ポイントの改善を示している。前回は何らかのイレギュラーによる結果のように見える。



欧州の債務問題は大規模な方針転換を果たし、新たなベクトルに向けてかじ取りを進めているものの、状況全体が変わるのには相当な時間を必要とする(大きなスケールの船ほど、舵は重く、方向を変えるのに時間はかかるのと同じ理屈)。その過程でEU、さらにはユーロ圏そのものの存在意義が問われる場面もあるが、一方で経済協力体の魅力は大きく、周辺諸国からのアプローチは今なお続いている。同地域全体の根底の心境にある想い「一つの欧州」という理念の体現化であるだけに、参加を希望する国が次々手を挙げるのも無理はあるまい。

経済状態の改善は、その国の社会問題の大部分を改善する。「豊かになれば、大抵の物事が上手くいく」という原則は、やや下衆なところもあるが、疑いようのない真実である。EU諸国がその仕組みを上手に使いこなし、連携し、経済力を押し上げ、「共に」上昇を果たせれば、各国の失業率も改善に向かうに違いない。

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