繊維と化学がプラスに、非鉄金属のマイナス幅拡大(2013年6月分大口電力動向)

2013/07/24 14:45

電気事業連合会は2013年7月19日付で同会公式サイトで、2013年6月分となる電力需要実績の速報を公開した。それによると同年6月の電力需要(使用量)は10社販売電力量合計で639億kWhとなり、前年同月比でマイナス0.3%となった。一方、産業用の大口電力需要量は前年同月比でマイナス1.2%を記録し、13か月連続で前年同月の実績を下回った。このマイナスは繊維と化学を除く主要業種で、前年同月実績を下回ったのが原因とリリースでは説明している(【電気事業連合会:電力需要実績発表ページ】)。

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繊維と化学がプラスに


今調査の概要および用語解説は、過去の同調査結果を元にした定期更新記事の一覧ページ【大口電力使用量推移(電気事業連合会発表)】で解説が行われている。そのページで確認のこと。

2013年6月では大口全体で前年同月比マイナス1.2%となった。「前年同月比」なので季節属性などに影響はされない数字であり、各種工場の施設の稼働で生じる電力の消費が減ったことになる(稼働率そのものではないことに注意)。


↑ 大口電力使用量産業別前年同月比(2013年5月-2013年6月)

前回月は化学1業種が久々に前年同月比でプラスを示したが、今回月ではさらに繊維が加わり、合わせて2業種がプラスとなった。ここしばらくは全業種マイナスの月が続き、グラフもプラス領域が無いものばかりが形成されていたため、数字そのものはもちろんだが、バランス上の安心感を覚える。

また、紙・パルプや窯業・土石、機械もマイナス幅を減らしている。しかし鉄鋼と非鉄金属では大きくマイナス幅を拡大。プラスマイナスで全体としては、幅は縮小したものの、引き続きマイナス圏を維持することとになった。

生産減か、稼働率減少の節電か、それとも稼働に影響の無い節電か


比較対象となる1年前の2012年6月は、先の2011年3月に発生した東日本大地震・震災からは1年以上が経過しており、回復可能な工場においては、物理的破損からはほぼ回復している。そのことから、今回マイナス値を占める業種が多いのは、震災の直接・物理的破損起因による大口電力消費量の減退とは考えにくい。やはり工場の一部閉鎖なども含め、工場そのものの稼働率の低下が考えられる。

他方、大口電力消費量の減少は、稼働率の低下による直接的な電力消費量の低減だけでなく、稼働率の低下を伴わない節電、さらには自家発電の利用による「みなし節電(自家発電分を節電したと換算する仕組み)」の効果によるところも大きい。「大口電力使用量推移」解説ページでも一部触れているが、繊維業界や製紙業界でその動きが活発化している。

また昨年10月に資源エネルギー省で公知された【夏期の電力需給対策のフォローアップについて(PDF)】を紐解くと、例えば今回月で最もマイナス幅の大きかった非鉄金属業界では、
・自家発電の導入
・照明LED化、空調28度設定
・照明間引き
・窓ガラス遮熱フイルム、遮熱塗装の導入
・グリーンカーテン
・作業服の薄地化

などの稼働率低下を伴わない節電対策が確認できる。一方で海外への生産シフト、一部生産設備・工程の停止など、稼働率に直接影響を与える節電取り組みも確認でき、電力消費量の低下が(全部ではないものの)工場の稼働率低下によるものであることも確認できる。

ちなみに次のグラフは震災前、2010年度と比較した今回月の大口電力使用量。節電と稼働率の低下の合計ではあるが、これだけ震災を経て各業種で電力使用量が減っている状況にあることを認識しておく必要はある。


↑ 大口電力使用量産業別「2010年度」同月比(2013年6月)

中長期的な動向確認


上記は短期的、あるいは個別月での動向である。次のグラフは連続的な流れをふかん的に確認するためのもので、2007年1月以降の全産業別の前年同月比推移を記したものとなる。


↑ 大口電力使用量産業別前年同月比推移(-2013年6月分)

2008年秋のリーマンショックが、金融業界や市場だけでなく、各実態産業界にも大きな影響を与え、工場などの稼働率が低下。それを受けて電力使用量も急降下した様子が分かる。昨今の節電による電力消費量低下とは、明らかに異なる要因によるものだ。2010年の秋口の上昇も、この急落の反動でしかない。

その後はやや安定した流れを見せていたものの、2011年3月の東日本大地震・震災で大きく下げ、その後は一様にマイナス基調で推移している。これは震災による物理的な損害に加え、各種要因による稼働率の低下が一つ。そして先のリーマンショックによる低下と異なり、電力需給問題や電気料金の引き上げを起因とする、「稼働率に影響を与えない節電」によるところが大きいと考えられる。

ちなみに今回の2013年6月・全体値の「前々年」同月比(2011年6月との比較)、つまり震災後における変化はマイナス3.2%。言い換えれば、震災直後における電力ひっ迫時(2011年6月)と比較して、一般電気事業者からの大口電力使用量は3.2%減じていることになる。



今夏は例年と比べて梅雨明けも早く、各地で高い気温が記録され、昨年と比べると熱中症による搬送患者数も増加する動きを示している。主に冷房のために電力消費量は当然増えることになるが、電力需給は2012年夏と比べれば劇的な改善がなされたわけでは無く、ひっ迫感は継続中。

そしてその状況ですら、維持のために行われる電力会社各社の金銭的負担は大きく、その負担は電力料金の値上げ、そして各大口電力需要者への負担増とつながる。これが大口電力需要家に対するプレッシャーとしてのしかかっている。

製造業全般において安定的な、そして安価な電力の供給は、生産活動の維持には欠かせない存在。その環境の継続整備のため、行政はこれまで以上の尽力が求められる。その確保により経済が安定し、国が富むとなれば、高い優先順位を割り振る必要があることは言うまでもない。

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