久々にプラスの産業が、しかしその他は大きく下げる(2013年5月分大口電力動向)

2013/06/20 11:30

電気事業連合会では2013年6月19日付で同会公式サイトにて、2013年5月分電力需要実績の速報を公開した。その資料によれば同年5月の電力需要(使用量)は10社販売電力量合計で651億kWhとなり、前年同月比でマイナス0.7%となった。一方で産業用の大口電力需要量は前年同月比でマイナス1.9%を記録し、12か月連続で前年同月の実績を下回った。このマイナスは化学を除く主要業種で前年同月実績を下回ったのが原因と説明されている(【電気事業連合会:電力需要実績発表ページ】)。

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久々にプラスの業種が


今調査の概要および用語解説は過去の同調査を基にした定期更新記事の一覧ページ【大口電力使用量推移(電気事業連合会発表)】で解説している。そのページで確認願いたい。

2013年5月では大口全体で前年同月比マイナス1.9%となった。「前年同月比」であり、季節属性などに影響はされない数字として、各種工場の施設の稼働による電力消費が減ったことになる。


↑ 大口電力使用量産業別前年同月比(2013年4月-2013年5月)

今回月は久々に、化学1業種ではあるものの、前年同月比の値がプラスとなった。ここしばらくは全業種がマイナスだけで占められていたため、やや安心感すら覚える。一方、繊維、紙・パルプや非鉄金属はマイナス幅をさらに拡大しているが、窯業・土石、鉄鋼、機械は幅を縮小しているのが確認できる。このため全体でもマイナス幅が縮小することとなった。

生産減か、稼働率減少の節電か、それとも稼働に影響の無い節電か


比較対象となる1年前の2012年5月では、2011年3月に発生した東日本大地震・震災での物理的破損からはほぼ回復している。しかも今件は震災前との比較では無く、1年前との比較であり、震災の直接・物理的破損起因による大口電力消費量の減退とは考えにくい。やはり工場(の一部)閉鎖なども含め、稼働率の低下が考えられる。

先月も指摘した通り、震災直前の年度・2010年度と比較した、昨冬での大口電力需要層における需要減少分実績は、電気事業者各社管轄とも8%前後の需要減がなされている。


↑ 大口需要家による需要減実績(冬期節電期間の2012年12月3日-2013年3月29日における対2010年度比)(再録)

資料でも「企業において、節電のみならず、減産等による需要減があったものと考えられる」との言及がある通り、昨今の大口電力使用量の減退は、節電と需要減の双方によるものと考えられる。

実際、一連の「大口電力需給動向」の統計データを基に、2010年度比(震災直前比)を算出すると、紙・パルプのマイナス13.2%を筆頭に、鉄鋼以外のすべての業種でマイナス値を示している。多くの産業で稼働率の低下(工場の閉鎖も含む)と積極的な節電が行われていると見て良い。ただしその節電には、稼働率の低下を伴わないもの(LEDの採用や、消費電力の小さい機材の導入)もあることを忘れてはならない。


↑ 大口電力使用量産業別「2010年度」同月比(2013年5月)

一方、一部業種では自家発電を用いることで、電気事業者からの大口電力の購入を減らしている場合もある。今件は事業者側の販売実績なため、自家発電が増えればその工場での電力消費は変わらなくても、今件の数字に現れる購入量が減っているという事例もある。この場合、「みなし節電(自家発電分を節電したと換算する仕組み)」として認定されることもあり、能力を有する企業では積極的な取り組みの姿勢を見せている。特に繊維業界や製紙業界で、その動きが活性化している。

中長期的な動き


上記は短期的、あるいは個別月での動向。連続的な流れを確認するため、2007年1月以降の全産業別の前年同月比推移グラフを生成する。


↑ 大口電力使用量産業別前年同月比推移(-2013年5月分)

2008年秋に発生したリーマンショックが、各産業界にも大きな影響を与え、工場などの稼働率が低下。それに伴い電力使用量も急降下した様子が分かる。翌年の秋口の上昇も、この急落の反動でしかない。

その後はやや安定した流れを見せていたが、それも2011年3月の東日本大地震・震災で大きく下げ(リーマンショックと比べればその規模は小さいが)、その後は一様にマイナス基調で推移している。

これは震災による物理的な損害に加え、流通網の混乱に伴う原材料の調達不足、さらには節電対策による稼働率の低下・生産調整、そして上記で説明した「稼働率に影響を与えない節電」(自家発電の利用、省エネタイプの機材導入)によるものと考えられる。

ちなみに今回の2013年5月・全体値の「前々年」同月比(2011年5月との比較)、つまり震災後における変化はプラスマイナスゼロ%。言い換えれば、震災直後の電力ひっ迫時(2011年5月)と比較して、一般電気事業者からの大口電力使用量は増減ナシということになる。



今夏は例年と比べて気温が上昇し、暑い夏になるとの長期予報が出されている。当然電力消費量は増えるが、電力需要は2012年夏から劇的な改善がなされたわけでは無く、ひっ迫感は継続している。さらにその状況を維持するため、電力会社各社の金銭的負担は大きく増加しており、それが回り回って電力料金の値上げ、各大口電力需要者への負担増とつながるため、電気「量」ではなく電気「料」での危機感を覚える需要家も増えているものと思われる。

製造業にとっては空気のように、必要以上の意識をすることなく使える電力こそ、安心して継続営業を続けるための必要不可欠なインフラとなる。その環境を整備することが、製造業の安定化につながるのであれば、それもまた行政の責務といえよう。


■関連記事:
【「数字目標なし」…2013年夏の節電要請内容発表】(2013年4月)

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