未成年者と高齢者の万引き推移をグラフ化してみる(最新)

2018/08/09 05:07

2018-0806警察庁は2018年7月24日に同庁公式サイトにおいて、2017年分の各種犯罪に関する統計データをまとめた「平成29年の刑法犯に関する統計資料」を発表した(【警察庁・報道発表資料一覧ページ】)。今回はこの掲載データ、さらには一部で総務省統計局などのデータを併用し、過去のデータも合わせて「万引き」と呼ばれる行為の動向を、主に未成年者と高齢者(65歳以上)にスポットライトを当てる形で確認していく。昨今では特に高齢者の万引き行為が社会問題視されているが、警察が把握している限りにおいては、どのような状況で推移しているのだろうか。

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万引き数は減る方向に


まずは今回発表の2017年分も含めた、現時点で取得可能な値を基に生成した、万引き検挙人員の経年推移グラフ。警察庁の「万引き検挙人員」では、未成年者として公開されているのは14歳から19歳まで。14歳未満は「触法少年」の扱いになり、刑法第41条の規定「14歳に満たない者の行為は、罰しない」に従い、刑事処罰されないので、今データにも反映されない。また、店舗内で発生した事案に関して、警察に連絡せずに示談などで済んだ場合も今件検挙数には反映されない。未成年者、高齢者では特にその類の事例は少なからずあることが推測されるが、今件公開値では観測は不可能である。

↑ 万引き検挙人員数(年齢階層別)
↑ 万引き検挙人員数(年齢階層別)

全体としては2005年までは漸増の一方、そしてそれ以降は漸減傾向だった。2009年は一時的に再び増加に転じたが、それ以降は再減少の動きを示している。この動き自体は喜ばしい話。直近の2017年では前年から4000人近く減少。記録のある限りでは最少数を更新している。

これを全体、さらには記事タイトルにもある通り、スポットライトを当てている高齢者(65歳以上)と未成年者(14歳から19歳)に限定し、その動きを見たのが次の折れ線グラフ。

↑ 万引き検挙人員数(未成年の検挙・補導数は14-19歳)
↑ 万引き検挙人員数(未成年の検挙・補導数は14-19歳)

2017年の未成年における万引きによる検挙人数は7552人、高齢者は2万6106人。手元にあるデータ(1998年以降)においては、2008年、そして2011年以降は連続しており2017年まで合わせて8回目の「高齢者の万引き検挙者数が未成年者以上」の状態。未成年者数の減少、高齢者の増加といった人口そのものの増減、そして未成年者の行動性向の変化も一因だが、留意すべき動きには違いない。

絶対人数か、人口比か…検挙者の人口比率


「高齢者の検挙数増加は大問題」「高齢者そのものも増えているのだから仕方ない」双方の意見とも理解できる。そこで「該当年齢階層人口」に占める「万引き検挙者」の比率を算出し、別の切り口から万引きの現状を推し量ることにする。

1998年以降の人口推移について総務省統計局の【人口推計】から1歳単位の総人口を取得。絶対人数では無く、その年齢階層における検挙発生率に該当する値を導き出す。この類の数字は対十万人比が多いのだが、直感的に分かりやすいように対一万人比で各値を算出し、グラフを生成する。

↑ 万引き検挙人員数の該当年齢階層人口に占める比率(一万人に対する人数、未成年の検挙は14-19歳)
↑ 万引き検挙人員数の該当年齢階層人口に占める比率(一万人に対する人数、未成年の検挙は14-19歳)

↑ 万引き検挙人員数の該当年齢階層人口に占める比率(一万人に対する人数、未成年の検挙は14-19歳)(直近5年間)
↑ 万引き検挙人員数の該当年齢階層人口に占める比率(一万人に対する人数、未成年の検挙は14-19歳)(直近5年間)

高齢者は微増から横ばい。直近数年間でようやくゆるやかながらも下落傾向を見せ始めた感はある。他方未成年者はイレギュラー的な動きもあるが、大きな流れとしては減少、この数年間はその勢いを加速化ざせている(直近年は勢いを減じたが)。このままならもう数年で、未成年者の値は全体値と変わらない水準にまで達するかもしれない。

この原因について資料では解説は無い。単純に未成年者の人口が減ったからでは無く、むしろ万引きをする機会が減っている(個人書店の減少)、監視体制の強化、さらには未成年者の行動性向の変化(スマートフォンなどへの注力)が要因として挙げられると思われる。来年以降も同様のペースで減少を続けるのであれば、さらなる検証が必要となろう。

2001年からの数年間と、2008年から2009年の増加の動きを見ると「不景気になると未成年者の万引きが増える」との法則が推定できる。もっとも2011年から2012年に大きく減少していることから、今件データだけではその法則を裏付けることはできない。2011年は震災の影響もあるのだろう。



今回使用した元データである警察庁の「犯罪情勢」でも表現方法として「万引き」が使われている。しかしこれは実のところは「窃盗」に他ならない。さらに「万引き」の際に店員や警備員に抵抗し、何らかの暴力を振るった場合(例えば逃走中に警備員を払いのけ、警備員を転倒させただけでも)には「強盗」(事後強盗)に該当し、罪は一層重いものとなる。

「万引き」は得てして心の迷い、気の緩みによるものとされる。しかしそれが本人はもちろん、場合によっては周囲の人の人生を大きくゆがめてしまう。言葉の印象の軽さから軽率に道を外してしまわないよう、くれぐれも注意してほしい。また願わくば、「万引き」という表現そのものを止め、「窃盗」と表記することにより、罪の意識を認識させるようにしてほしいものだ。

なお高齢者の万引きに関しては、対象が食料品であるケースが件数・比率的に多い。このことから「高齢者は貧困により万引きをしてしまう」との解説を見受けられる。

↑ 検挙事件に係る万引き被害品数(解決事件除く、被疑者年齢階層別)(2017年)
↑ 検挙事件に係る万引き被害品数(解決事件除く、被疑者年齢階層別)(2017年)

↑ 検挙事件に係る万引き被害品数における食料品の割合(解決事件除く、被疑者年齢階層別)(2017年)
↑ 検挙事件に係る万引き被害品数における食料品の割合(解決事件除く、被疑者年齢階層別)(2017年)

理由の一つとしては確かにその通りではあるのだが、高齢者の行動性向(行動全体に占める日常生活に欠かせない食品の調達の機会比率が高い)や、他の各種調査(例えば【法務省の平成26年版 犯罪白書の特別調査「前科のない万引き事犯者の実態と再犯状況」】)を見るに、そのように簡単に説明できる類のものでは無いのも事実ではある。

今後、高齢者を中心に万引きの理由に関して警察庁からその手掛かりとなる資料が公開されるようになれば、それに関しても精査する必要があるかもしれない。


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