貯蓄が多いとお金の使い道にも余裕が…貯蓄額別・日頃のお金の使い道をグラフ化してみる(2016年)(最新)

2016/05/25 10:24

保険とは何か負担がかかる事案が生じた際に、その事案を解消するのに必要となる対策を事前に用意することを意味する。健康・医療保険ならば怪我や病気の際に生じた医療費を補てんするものであり、「保険として傘を持ってきた」状況ならば、万一雨に降られてもずぶ濡れにならないための対抗手段の確保に他ならない。そしてさまざまな物品やサービスの代替となるお金を貯めておく、つまり貯蓄は、多種多様な状況に対応できる究極の保険ともいえる(企業が余剰金を好むのも、さまざまな問題事案に対し臨機応変に対応できるからに他ならない)。今回は総務省統計局が定期的に行っている調査の一つ「家計調査」のうち、先日2016年5月17日付で2015年分の速報値が発表された「貯蓄・負債編」をもとに、各家計(二人以上世帯)における、貯蓄額別のお金の使い方の違いを確認していくことにする。究極の保険たる貯蓄額の違いが、日々のお金の使い方にどのような変化をもたらすのだろうか(【家計調査報告(貯蓄・負債編)-年平均結果速報-(二人以上の世帯)】)。

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貯蓄高が大きいほど生活の上で使う額も余裕も増えてくる


今件記事で用いる専門的な用語をいくつか抽出し、支出と収入との関係を説明すると次の通りとなる。

・(実)収入……世帯主の収入(月収、そしてボーナス臨時収入)+配偶者収入など

・支出……消費支出(世帯を維持していくのに必要な支出。「食料費」「住居費」「光熱費」など)
     +非消費支出(消費を目的としない費用。税金・社会保険料など)
     +黒字分(投資や貯金など)

つまり「消費支出」とは「手取り収入の中から、社会生活の過程でお財布から出していく金額」を意味する。

まず最初に生成・精査するのは、「一か月あたりの」貯蓄現在高階級別消費支出を示したグラフ。現在貯蓄をどれだけ持っているか、その額面で区分した、一か月における生活費の違いを示している。なお貯蓄・負債編では単身世帯に関しては調査が行われていない。また今件は単に二人以上世帯を対象としているため、勤労者以外、例えば年金生活者や個人営業の世帯、世帯主が役員の世帯なども該当する。さらに貯蓄高は単純な貯蓄の額であり、負債との相殺は行われていない。

↑ 貯蓄現在高階級別消費支出(月次、万円、2009-2015年)(二人以上世帯)
↑ 貯蓄現在高階級別消費支出(月次、万円、2009-2015年)(二人以上世帯)

例外のパターンも想定されうるが、平均としては貯蓄現在高が大きい人ほど収入も大きい傾向がある。そして税金や社会保険料なども収入が上がれば増えるが、完全な正比例ではないので、当然「貯蓄現在高≒収入が大きい方が、消費(できる)支出額も大きくなる」。

実際、貯蓄額の違いにより最大で約6割強の消費支出の違いが出ている。また経年別変化を見ると、400万-600万円層でわずかだが継続的な減少がある以外は、大きな変動は見られない。また直近年の2015年に限ると、貯蓄額の上で中堅層において大きな消費支出の増加が確認できる。

具体的消費支出項目を見ると……


以前【エンゲル係数の推移をグラフ化してみる】における「エンゲル係数」の考え方で解説したが、漫画やドラマに登場するような豪邸に住む、それこそ湯水のようにお金を使える富豪でない限り、多少収入額が大きくても「食費」が跳ね上がり「光熱・水道費」が急上昇することは無い(無論多少の上昇はある)。従って、消費支出全体が大きくなれば、「食費」「光熱・水道費」の”割合”は漸減していくことになる(これこそがエンゲル係数の基本的な考え方である)。これを確認できるのが、次の貯蓄現在高別に区切った、主要項目別の消費支出の中身を確認したもの。

↑ 貯蓄現在高階級別消費支出の費目別構成比(2014年)(参考)
↑ 貯蓄現在高階級別消費支出の費目別構成比(2014年)(参考)

↑ 貯蓄現在高階級別消費支出の費目別構成比(2015年)
↑ 貯蓄現在高階級別消費支出の費目別構成比(2015年)

上記の説明の通り、貯蓄額が大きい区分の方が「食料」「光熱・水道」「交通・通信」などの比率は落ちる。3000万円以上の貯蓄があったとしても、毎日執事とメイドさんが身の回りの世話をしてくれるわけでは無く、リムジンでお出迎えを受けることもないからだ。

また「貯蓄現在高≒収入」が大きいほど(グラフ上では右側になるほど)「その他の消費支出」「教養娯楽」の2項目(一番上と上から二番目)の比率が増加している。このうち「その他の消費支出」とは具体的に「諸雑費」「こづかい」「交際費」「仕送り金」が主な項目として例示されており、簡潔には「色々雑多に自分の自由意思で使えるお金」と表現できる。

消費支出額そのものも増え、それに占める割合も増える。結論として「貯蓄現在高≒収入が大きい方が、自分の思う通りに使い回せるお金の額が大きい」ことになる。当たり前の話でしかないが、今件の数字・グラフはその常識的な話、あるいはイメージ的な事象について、数字的・統計的に裏付けたものとなる。

他方、同一年における貯蓄額の違いによる各品目別の構成比は金銭的な豊かさによって差異が出てくるが、経年変化における差異は、昨今では特に食費(エンゲル係数に直結する)は以前ほど意味がないものとなりつつあることを加えておく。【中食の増加が食費底上げの原因なのかなあ、という感じ】などでも言及している通り、ここ十年ほどの間にスーパーやコンビニの急速な日常生活への浸透、それに伴う惣菜や冷凍食品などを用いた中食文化の普及が進んでおり、食の上での投資額の増加が、生活の豊かさを表す指標の一つとなりつつあるからだ(自炊料理を敬遠しがちな高齢者の全体に占める比率の増加もそれに拍車をかけている)。エンゲル係数の経年的変化上の比較は、あくまでも食文化・食生活の環境が同一である場合にのみ有効となる。昨今の状況変化は、その前提をくつがえしかねないほどの動きに違いない。

2014年から2015年への変化を確認する


前年分2014年分との違いを算出すると、1年間の間に消費生活上でどのような変化が起きたのかを推し量ることができる(絶対金額では無く比率値の変化であることに注意)。

↑ 貯蓄現在高階級別消費支出の費目別構成比(2014年から2015年への変化)(ppt)
↑ 貯蓄現在高階級別消費支出の費目別構成比(2014年から2015年への変化)(ppt)

一部イレギュラーが生じているものの、全般的に「食料」「保険医療」が増加している。「食料」の増加は食品価格の上昇に加え、上記に解説した中食文化の普及浸透が大きな要因と見て良いだろう。「保険医療」は高齢層比率の増加が一因と見て良い。

興味深いのは「その他の消費支出」。上記の通り交際費やたばこなどのし好品が該当する項目だが、低貯蓄額層では大きく上昇し、高貯蓄額層では低下している。掲載は略するが絶対金額も同様の動きを示していることから、低貯蓄額層では以前よりも金銭的な余裕が出てきた感はある。

他方「光熱・水道」「被服及び履物」「交通・通信」は大きく下げている。「光熱・水道」は多分に電気・ガス代の単価引き下げによるもの。「交通・通信」もまた、「自動車等維持費」におけるガソリン代の単価引き下げによる減少の影響が大きい。「被服及び履物」の減少はやや気になるところだが、それ以外の項目は単価の減少によるものであるから、むしろ世帯にとっても好ましい話に違いない。



今件で抽出・算出し、グラフを生成した各種値も含め、家計調査報告の公開値はあくまでも平均値であり、絶対的な基準値では無い。しかも二人以上世帯に限定されており、単身世帯の状況はまだ別のものになる。当然、平均値を大きく外れる事象も無論多数存在する。

だが社会全般の動向を概要的に表現していることにも違いはない。今件結果を眺めていると、記事内で解説した動き以外にも色々と、世の中のお金周りの動向が見えてくるに違いない。


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