コスト増と株価の下落への不透明感…2013年5月景気ウォッチャー調査は現状下降・先行き下降

2013/06/11 14:45

内閣府は2013年6月10日、2013年5月時点における景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を公開した。その公開データによれば現状判断DIは先月から続いてて2か月連続して減少し55.7となったものの、水準値50は上回る状態を維持した。先行き判断DIは先月から転じて2か月ぶりに減少したが、やはり水準値の50以上を維持している。結果として、現状下降・先行き下降の傾向を示している。基調判断は先月から変わらず「景気は、持ち直している」としている。そろそろ天井付近に来ている感も否めない。同時に直前に発生した株価下落が心理的要因となっている(【発表ページ:平成25年5月調査(平成25年6月10日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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家計でマイナス多し、先行きは全項目でマイナス


調査要件や文中のDI値の意味に関しては、今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で説明が行われている。そちらでチェックしてほしい。

2013年5月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比マイナス0.8ポイントの55.7。
 →2か月連続の減少。「良くなっている」「やや良くなっている」が減り、「変わらない」「やや悪くなっている」が増加。「悪くなっている」は減少。
 →家計では高額品が引き続き好調、連休中の人でも多かったが、天候不順で衣料品販売が低迷、飲食などが連休後に伸び悩み、低下。企業動向は円安に伴い、製造業を中心に売上・収益の増加が見られ上昇。雇用関連は一部で求人が伸び悩み、低下。

・先行き判断DIは先月比でマイナス1.6ポイントの56.2。
 →為替の適正化や夏のボーナス増加に伴う期待があるが、コスト増と株価の下落への不透明感があり、全部門で低下。
現状は天候事由と求人周り、先行きは円安によるコスト増に加えて、調査時点で生じている株価の下落(主に米金融緩和政策の引き締め懸念によるもの)により、不安要素が重なり、マイナスとなっている。

「現状」「先行き」共にやや下落も規模は小さい


それでは次に、それぞれの指数動向を簡単にチェックしてみよう。まずは現状判断DI。


↑ 景気の現状判断DI(-2012年5月)

今回発表分では先月から続き、マイナス項目の方が多い。伸び続けていた飲食関連も、上記にある通り連休明けの失速状況が反映され、大きく値を落としている。

プラスだったのは企業全体と製造業のみ。とはいえ大きく下落したのは飲食のみで、それ以外はせいぜい1-2ポイント程度でしかない。

続いて景気の現状判断DIの動向を、資料に添付されている長期チャートにしたもので確認する。主要指数の動向のうち、一番落ち込みやすい雇用関連の指数の下がり度合いが把握しやすくなるように、前回の不景気時、つまり2001年当時における下げの最下層時点の部分に赤線を当方で追加し、今回の不景気との比較をしやすくしている。


↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)(-2012年5月)

2007年夏以降の(サブプライムローン問題の露呈をトリガーとした)直近の「金融危機」をきっかけに、各値は下落傾向を見せていた。しかし2008年後半の「リーマン・ショック」により、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えてさらに下落する。

その下落も2008年12月前後で落ちつき、ようやく上昇(回復)に転じる。しかし反動の力をもってしても、結局基準値50までには手が届かない。実経済の体感として、「可も無く不可も無く」の好況感は得られなかった次第だ。そしてそれ以降は50を「天井」とし、小さな上下変動を繰り返す(2011年2月まで)。

2011年3月に発生した東日本大地震・震災は、全項目をして、単月の動きとしてはリーマンショックを超える勢い、言葉通りほぼ垂直で下落させてしまう。幸いにもその後の回復ぶりも記録的な上昇カーブとなり、同年7月分では震災直前の水準にまで戻すこととなった。これは震災による垂直降下のリバウンドの勢いによるもので、景気回復感よりむしろ「あの頃の不安感よりはマシ」という心理によるものと考えるべき。

そしてその「リバウンド」も長くは続かず、2011年8月以降は失速。ところが2012年11月には「弱い上昇でしかなく、単なる反動かもしれない」の懸念もあったが回復の兆しが見られ、その後は月を重ねるに連れて上昇速度を強め、明らかに景気の回復的な動きが見られる。DIは水準値50をはるかに上回り、判断文言「景気は、持ち直している」にもリアルさがある。

・2010年に入り、
下落から反転。
・「雇用と全体の下落逆転」。
・東日本大地震による震災で
急降下。
・その後震災前までの状況に
リバウンドなどで回復したが、
間もなく失速、低迷へ。
・政治環境の変化とそれに伴う
社会の動きで
上昇、高値で安定化。
震災直前までは、雇用指数(上側の線)とその他の指数の差(かい離)が拡大していた。これはかつての2003年後半以降の傾向と類似しており、これが踏襲されれば「その時点での」景気状況の継続化、具体的には「どん底ではないものの、やや不況な状態」の慢性化に至る可能性があった。

だが東日本大地震・震災がその可能性を無きものとした。その上、タイミングを同じくして欧州債務危機の懸念の再来、さらには震災に伴う社会情勢の混沌化、電力不足の長期化などが市民心理に追い打ちをかけ、各景況感とも水準値より低いままで低迷することとなった。

そして2012年秋以降になると、主に国内情勢の変化に伴い、実態に裏付けられる形での景気感の上昇カーブが描かれている。この数か月は高値で安定化への動きを見せている。

景気の先行き判断DIは先月のブレーキ感が続き、全項目でキレイにマイナスとなった。


↑ 景気の先行き判断DI(-2013年5月)

もっともマイナス値が大きいのは飲食関連のマイナス4.2。先月でも伸び率が最低だっただけに、今回は上記の通り連休後の売れ行き不振が引き金となった他、株価下落による消費者の財布の紐の引き締めも懸念材料となったようだ。

次いで大きな下げ幅は住宅関連のマイナス3.8だが、昨月が64.2とやや上げ過ぎた感も強い。今回の下げはむしろ良い調整と見るべき。

「現状」同様今「先行き」でも他の指数より上乗せされやすいのが雇用関連の値。先月「間もなく、あるいは今月分が天井のようだ」としたが、現実その通りとなり、マイナスを示すこととなった。ただし下げ幅は最小限で、高値安定ともいえる。

次の折れ線グラフ上の過去の動きで把握できるが、雇用関連値の動きは他の指数に先行するパターンが多い。中でも「合計値」を下回った場合、過去二回で大規模な全体値の下落、大きな景気の落ち込みが起きている(2001年前半と2008年前半)

直近では一時そのような事態が生じたが、すぐに再び「合計値<<雇用関連」との形に戻っている。アノマリー的な話(パターンとして同じような状況は繰り返される)を気にしていた人には一安心だろう。


↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)(-2013年5月)

先行きの合計DIは金融不況の勃発後、ほどなく前不景気の基準を下回る値を示している。それだけ今回の不況に対する不安感が大きい証拠である。そしてその後2008年10月の「リーマン・ショック」で急降下の動きを見せる。

その後は不安な心理状況・経済状態を反映し、合計DIは基準値50を天井として、その下層での動きを継続。そして追い打ちをかける形で発生した、2011年3月の震災による大幅な下落は「リーマン・ショック」時と同じ、急降下のグラフを生成する。直後の下落のリバウンドも十分なものとはいえず、値は基準値50付近を迷走していた。先の見通しが立たないのだから、値が上向かないのも当然。

そして現状指数と同じく、2012年11月以降は打って変わる形で、大きな上昇を見せている。上昇傾向は現状指数を先行する形の様相を呈していたが、現在ではほぼ天井を迎え、現状と大きな違いを見せずにいる。

連休後の天候とコスト上昇が懸念材料


発表資料には現状・先行きそれぞれの景気判断において、その判断を出した理由が詳細に語られたデータもある。世間一般では一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)の事例を挙げてみると、次の通り。

■現状
・高額商品の動きは、海外ブランド、宝飾時計を中心に引き続き好調に推移している。衣料品については5月に入り寒暖の差が激しく、上昇方向には向かないものの、雑貨が帽子、傘などの季節商材を中心に好調で、全体を押し上げている(百貨店)。
・天候にも恵まれ、ゴールデンウィークは多くの人出があり、月を通してにぎわった(商店街)。
・月の前半は、気温の影響もあり春夏物の動きがあまり良くなかった。中旬以降は気温の上昇に伴い衣料品、住居用品、食料品とも前年を上回っている(スーパー)。
・消費者はゴールデンウィーク中にお金を使い、ゴールデンウィーク後は外出を控えるので、ゴールデンウィークを過ぎると極端に売上が落ち込み、来客数も激減する(一般レストラン)。
・衣料や住居が特に悪く、今月も前年の97%と前年割れで推移している。近くに開店した大型商業施設の影響は先月よりも改善傾向にあるが、天候不順の影響が大きい(スーパー)。
・ゴールデンウィークごろから気温が全般的に低く、衣料品の動きが非常に鈍い(スーパー)。
・夏物の出足もまずまず良く、ゴールデンウィークはかなりにぎわったが、母の日以降は通行量、来街客とも大きく減っている(商店街)。

■先行き
・輸出メインの製造業が多い地域のため、円安で利益が増加し、夏のボーナス時期には消費意欲の向上を期待できる(百貨店)。
・夏のボーナスの増額など、景気の良い話題が多いが、店頭での買物動向に変化はみられない。円安により原料が値上がりする商品等もあり、買物動向が活発になるとは思えない(スーパー)。
・景気の回復期待を象徴していた株価が急落したほか、円安による輸入品の価格上昇が生活に影響を及ぼし、家計支出が抑えられる懸念がある(一般レストラン)。
連休明けの天候不順がかなり大きくマイナスに作用していたのが改めて把握できる。また一部報道では株価が上がると「一部の人にのみ恩恵」、下がると「皆が影響」と、良くわからない解説をするが、それにつられる形の反応も見えている。上記にある通り、昨今の株価下落の事由まで把握・公知できていれば、消費動向に大きな影響は与えないはずなのだが。

他方、為替動向に伴う、コスト高の影響も見え始めている。さらに今回掲載していないものの、企業動向周りでは一部業界の再編の動きもみられ、安穏とはしていられないようだ。



国内政治環境の変化が
政策転換の期待を生み、
実経済の変化、さらには
景気を動かしていく。
2007年夏に始まった直近の金融不況による不景気は、2011年3月の震災で、過去の不景気パターンを踏襲することなく、新たな流れを形成することになった。物理的な影響に加えて人々の心理にも大きな変化(特に「心理の保守化・防衛本能の発起」)を与え、小売業方面にも影響が及んでいる。

直近数か月では2012年秋以降の日本国内における政治環境の変化で、先行きの不透明感が払しょくされ、期待、そしてそれに伴う実態感が経済面に現れている。他方、適正レートへの為替変動に伴う円安で、原材料のコストアップ、電力問題を中心とした「これまでの」政策による負の遺産が、負担としてのしかかりつつある。

今後は見通しが明るくなった道を突き進むため、過去のくさびを抜き取り、歩みを確かなものとする必要がある。明日に希望が見出せるような道のりが示されれば、人々の不安も少しずつ和らぎ、景況感も改善していく。そして回答者の気持ちの集積結果「景気ウォッチャー」もまた、良い値を示し続けることだろう。


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【定期更新記事:景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】(まとめ)

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