乳製品が先月から転じてやや下げを見せる(2013年5月分世界食糧指数動向)

2013/06/10 11:30

2013年6月6日に国連食糧農業機関(FAO、Food and Agriculture Organization)では、毎月恒例となる【世界食料価格指数(FFPI:FAO Food Price Index)】のデータ更新を行い、2013年5月分を発表した。この値は1990年以降にFAOが世界の食料価格の変化を月ベースで定期的に集計し、計算をした上で発表しているもの。この値は昨今高騰を続けており、各種食料品市場の世界的動向、政治情勢にも影響を与えている(間接的・相関関係的にだが)。今回は先月の記事に続く形で、この発表値を元にいくつかのグラフを生成すると共に、食料価格の現状を推し量ることにする。

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中期的な動向は上昇気味


今記事のデータ取得元や用語の解説に関しては、一連の記事のまとめ【世界の食料価格の推移(FAO発表)】で行っている。そちらでチェックをお願いしたい。

まずは、現時点での最新の、公開全データを使った折れ線グラフを生成する。1990年以降の中長期的な食料価格の変移概要が一目で分かる、資料性の高いものである。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2013年5月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2013年5月)

砂糖は元々相場変動性の高い食料品のため、その砂糖の動向を示す砂糖指数(オレンジ色の線)は当然、上下の値動きが激しい。しかしそれ以外の項目では2005年前後まで、下限50・上限150の領域(水準値100、プラスマイナス5割内)で小刻みに変動する程度だった。

ところが世界的な金融不況が2007年夏に始まると、各値は特に上昇方向への大きな流れを見せ始める。「サブプライムローンショック」(2007年夏-)時の急上昇とその後の大きな反動による下落、そしてその後に起きた「リーマンショック」(2008年9月)以降は、全体的に上昇する一方だった。

2011年後半期からは種類によって下げ率に違いはあるが、少しずつ値を下げている。とはいえ大きな下落幅を示しているのは砂糖と油脂のみ。他の種類は高値で横ばいのまま。

続いて、グラフ生成開始期間を1990年では無く2007年として対象期間を短くし、直近の金融危機以降の動向を明確化できるようにしてみる。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2013年5月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2013年5月)

砂糖指標を見ると2010年初頭から、細い「U」の字を描くかのような急落と急上昇が目立つ。400近くを示していたものが、数か月で200近くにまで下落し、ほぼ半減している。これは元々過熱感のあった砂糖相場で、豊作の報をトリガーとした反動(反落)の結果。まさに「ナイアガラの滝」。

だが価格上昇の原因「需要の拡大(新興国、特に中国)に伴う需給バランスの不安定感」は解決しておらず、すぐに再び砂糖価格は上昇をはじめている。そして2012年中ほどまでは高い領域(300を底値)での上げ下げを繰り返していた。直近の1年ばかりは、その下値抵抗線を破る形で値を下げ続けている。

これは豊作による供給増加、そして不景気による甘味需要の減退が原因。もっとも需給バランスの均衡化や、一部地域での景気回復に伴い、底値を探すような動きを示しているのも見逃せない。

前月比と前年同月比、そして今月の状況


昨今、そして直近の食料価格の上下動向を確認するため、各指標の前年同月比、そして前月比を併記し、数字の変移が分かりやすいようにしたのが次のグラフ。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2013年5月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2013年5月)

総合指数は前月比でプラス5.1%とやや上昇気味だが、前年同月比ではマイナス0.3%とほぼ変わらず。やや高めに推移しているものの、この数か月では安定しているようだ。

個別項目を見ると、前年同月比で油脂や砂糖が1割以上の下げ幅を示しており、やや変動が気になるところだが、これは先月4月と変わりない。一方乳製品は前年同月比で大きく値を上げていて、この1年における価格上昇の著しさを知ることが出来る。もっとも前月比はマイナスに転じており、天井感も見えている。

リリースでは今月の動きについて「穀物指数の前月比でのプラスは、トウモロコシ価格の上昇(アメリカでの作付けの遅れ、先月の価格下落の反動)が主な理由。小麦や米はほとんど値が変わらず」「油脂指数は変わらず。ヤシの豊作を原因とした低下は継続中。アメリカの2013-14年の大豆収穫量見通しも堅調で、値が上がる要因が見つかりにくい」「乳製品指数はやや下落。チェダーチーズは値上がりしたが、脱脂粉乳、バター、粉ミルクが大きく下げている。ただし生産国での天候状況が不安定要因として残る」「食肉指数は安定。鶏肉価格が上昇を続けているが、他の種類には大きな変動は無し」「砂糖指数は前月比でわずかに下落。一方で前年比では大きく下落し、先月に続き今の値が底値に近いことを指し示している。砂糖の世界最大の生産国にして輸出国ブラジルでの豊作予想、そして各国輸入量の減少が原因」などと説明されている。

食料価格は一般市民の日常生活に直結する。毎日食事は欠かせないからだ。そのため価格の上昇は市民価格への負担増となる。また上昇に限らず急激な価格変動は、生産・販売側の経済事情をも大きく変動させる。そして変動が大きすぎると対応が難しくなる。

需給双方の立場から、食料品価格は安定していた方が好ましい。この数か月は昨年と比べて安価で、比較的安定した動きを見せている。ただし乳製品指数が昨年と比較すると大きな上昇を示しており、注意が必要になる。

農林水産省のレポートでは


食料価格の上昇を後押しする要因を考えると、「新興国の成長に伴う需要拡大」「穀物を中心とした燃料(バイオエタノール)の材料への転用」「天候の不順による作物の不出来」「地力減退による不作」「商品先物市場への資金流入に伴う相場の過熱感」などが挙げられる。一方、価格下落要素は「景気後退による需要縮小」「豊作」以外に見つけにくい。「緑の革命」に代表される、科学技術を用いた品種改良で増産は不可能ではないが、地力を下げかねない。

例えば大規模な異常気象のように、需給関係のバランスを大きく動かす事態が発生しない限り、中期的には相場動向による上下を経ながら、値は上がり続けることになる。原油輸出国だった国が、自国の発展と共に石油の消費量が増え、輸入国に転じる動きと同じである。

昨今では毎月確認している【農林水産省の海外食料需給レポート】の2013年5月分で直近動向を確認すると、主要穀物品種のうち小麦・とうもろこし・大麦で生産量見込みは小麦、とうもろこし、大麦、米で増加。昨年度の不作の反動に加え、作付け面積の増加が原因。また消費量も増加。これは飼料用需要、エタノール用需要、食用需要の増加に伴うもの。ただし生産量が消費量を上回る予想が出ており、期末在庫も上昇が見込まれている。

人種や居住地域を問わず、生活に欠かせない食事のベースとなる穀物価格、嗜好品・贅沢品のかなめとなる砂糖や油脂の価格は、社会情勢の動向と密接な関係がある。各種食料品の価格は社会・経済状況を反映するし、社会や経済の状況を推し量る一要素となる。今後も世界食料価格指数の精査を続け、社会の動きを少しでも察したいものだ。

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