若年層の失業率、ギリシャで6割を突破…EU失業率動向(2013年4月分)

2013/06/03 07:55

先進諸国、中でもヨーロッパにおける経済状態の動向を推し量る指針の一つとして注目されている「若年層の高失業率」。この値が高いほど就業構造上の「先進国病」の症状が重いと言われている。そこで当サイトでは【EU統計局(Eurostat)】で毎月定期的に発表している失業率統計データを元に毎月、最新情報や前月比の確認と情勢の分析精査を行っている。今回はその2013年5月31日発表・2013年4月分の値を基に各種グラフを更新し、状況の把握を試みることにした。ギリシャの若年層失業率はついに6割を超えてしまっている(該当リリース:【Unemployment statistics】)。

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EU27か国で11.0%


文中・グラフ中にあるEA17やEU27については一覧ページ【ヨーロッパ諸国の失業率動向(EU統計局発表)】上の解説部分で確認してほしい。

ILO基準における2013年4月時点の発表データによる失業率は次の通り。EU27か国では11.0%・EA17か国では12.2%を記録している。なおこのグラフもあわせ今記事では、直近2か月分のデータが未掲載(調査途中)の場合、原則として掲載時で公開されている最新月分のデータを代用している。

↑ 2013年4月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)
↑ 2013年4月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)

今回月はトップのギリシャとそれに続くスペインの差が0.2%ポイントに圧縮された。もっともギリシャの値は2013年2月時点のものなので、同時期で見れば差は0.4%ポイントとなる。また全体的には債務問題で良く耳にする国が上位に位置しており(例えばポルトガルやキプロス、イタリアなど)、失業問題と経済、債務問題がそれなりに深い関係にあるのが理解できる。

今回も前回の記事同様に、該当月の前月(2013年3月)の値との差異を計算し、グラフ化を行う。過去のデータも修正がなされていれば、逐次最新のものに差し替えを行っているため、この差異も最新のデータによるものとなる。具体的には【Data Explorer】を参照した上で、必要国のデータを逐次抽出し、入力、計算している。

↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2013年3月→2013年4月)(またはデータ最新一か月前→最新)
↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2013年3月→2013年4月)(またはデータ最新一か月前→最新)

国内人口の少ない国では統計値がぶれやすく、また国によっては誤差が生じやすい。そのため、プラスマイナス0.5%ポイント以内は誤差と見て、動きは無視している(以前は0.3%ポイントだったが、小国によっては大きなぶれが誤差で生じているのが確認されたため、0.5%ポイントに修正した)。今回月ではキプロスの悪化が目に留まる。

キプロスは【国債・公債のデフォルト確率上位国をグラフ化してみる(2013年4月15日版)】などでも触れている通り、ユーログループの支援を受けるために銀行口座を一時閉鎖する措置をとり、またその際に大統領親族による不正行為が明るみに出るなど、一時混乱状態に陥っていた。その影響が経済、そして労働市場にも波及したものと考えられる。元々同国では経済状態の悪化で失業率が高まっていたが、今件でさらに悪化した形だ。

↑ 2012年3月-2013年4月での失業率(季節調整済)(キプロス)
↑ 2012年3月-2013年4月での失業率(季節調整済)(キプロス)


↑ キプロス大統領の不正を伝える解説映像。
↑ キプロス大統領の不正を伝える解説映像。【直接リンクはこちら】

ギリシャで6割を超えた若年層失業率


冒頭の解説にある通り、昨今の失業問題で特に強い懸念にあるのが、若年層の失業率。直近の2013年4月時点では25歳未満の失業率はEA17か国で24.4%・EU27か国でも23.5%を記録しており、5人に1人以上が失業状態。中でもギリシャの62.5%(2013年2月)、スペインの56.4%を筆頭に、ポルトガルやイタリア、スロバキア、上記で取り上げたキプロスなど、経済的に弱い国、労働市場での問題点を抱える国、急激に経済が冷え込んだ国において、若年層失業率の高さが際立つ形となっている。

↑ 2013年4月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(4月データが無い国は直近分)
↑ 2013年3月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(4月データが無い国は直近分)

↑ 2013年4月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(4月データが無い国は直近分)
↑ 2013年4月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(4月データが無い国は直近分)

前述のようにプラスマイナス0.5%ポイント以内を誤差基準とすると、ギリシャ、ポルトガルの悪化、ハンガリー、エストニアの改善が見受けられる。ギリシャは先月から続き財政緊縮による労働市場の悪化が要因で、今回初の6割超が確認される形となった。

欧州の若年層、特に南ヨーロッパ全域で著しい若年層の失業率増加に対し、無論各国政府やEU全体でも強い懸念を抱いている。そしてその対応策として、職業訓練やインターシップ制度の拡充、エラスムス計画(Erasmus、EU間での学生の積極的な交流、流動化を進める計画。大学同士の協力拡充も含む)に熱心になっている……が、今のところ数字に反映される成果は出ていない。


↑ ヨーロッパ若年層の失業の現状を伝える報道(公式)。
↑ ヨーロッパ若年層の失業の現状を伝える報道(公式)。【直接リンクはこちら】



先日【欧州委員会、財政緊縮策から経済成長政策への転換を表明】でも伝えたように、IMFに続き欧州委員会も債務問題において「財政再建(≒緊縮)」から「経済成長」にかじ取りを変えたこともあり、緊縮財政に伴う失業率の増加、特に若年層へのプレッシャーの高まりにはブレーキがかかる可能性がある。とはいえ、労働市場の上での構造的問題点にもダイナミックなメス入れをしなければ、やはり若年層へのしわ寄せは続く。経済回復の実態が見えてきても、彼ら・彼女らへの恩恵、つまり雇用の安定化は後回しになりかねない。

経済が活性化されれば、大抵の問題は解決するもの。しかし、その過程でいかにバランスよく、これまで傷ついてきた社会システムを修復・再構築していくか。今まで以上に各国のリーダーシップが問われることになる。

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