あまりにも無防備すぎる米未成年者のソーシャルメディア利用事情

2013/06/02 15:00

このエントリーをはてなブックマークに追加
情報のオープン化2013年5月21日に米国内の調査機関【Pew Research Center】が発表した、同国内の未成年者のソーシャルメディア利用状況に関するレポート【Teens, Social Media, and Privacy】によると、米未成年者のソーシャルメディア利用者の多くは、プライベートな情報をかなりの率で公開している状況が確認された。Facebookが原則実名利用制度を用いているのも一因だが、例えば2割は自分の携帯電話の番号まで公開している。


スポンサードリンク


自らの手でオープン化を進める米未成年者のプライバシー


調査要項の詳細や、ソーシャルメディア関係の言葉の定義は、先行する記事【大人以上にソーシャルメディアに溺れる米子供達】で解説済み。そちらを参考のこと。

以前別記事で記した通り、アメリカの未成年者においてはFacebookが圧倒的、そしてツイッターも急速に利用性向を高めつつある。

↑ 子供・成人によるSNSやツイッターの利用性向(米、2006年-2012年)(インターネット利用者限定)(以前の記事から再録)
↑ 子供・成人によるSNSやツイッターの利用性向(米、2006年-2012年)(インターネット利用者限定)(以前の記事から再録)

そこで気になるのがプライバシーに関する問題。子供はまだ色々と経験が浅く、啓蒙も十分なされておらず、個人情報を守ることの重要性を認識していない可能性が高い。目の前にあるパソコンやスマートフォンを介して世界にアクセスする状況を、近所の友達とのおしゃべりと同じように考えている節もある(これは大人も同様だが)。必然的に自分の個人情報への取り扱いも危なっかしいものとなる。

次のグラフはソーシャルメディア利用者に限定した、プライバシー関連項目を投稿しているか否かの問いへの回答。この6年ほどの間に、かなりオープン化しているのが分かる。

↑ 利用しているソーシャルメディアに投稿している項目(ソーシャルメディア利用者限定、複数回答、米2006年・2012年)
↑ 利用しているソーシャルメディアに投稿している項目(ソーシャルメディア利用者限定、複数回答、米2006年・2012年)

世界に手が届くデジタルの世界と、現実の世界との境界線が薄っぺらなものとなる、いわゆる「デジタルネイティブ化」していると表現すればそれまでだが、公開度が進んでいる。特に携帯電話番号の公開率が2割に届いているのが驚き(これはもちろん、公開領域を限定した上での公開も含まれるが)。

写真掲載は女子が上


この公開傾向について、もう少し細部に、そして属性別に見たのが次のグラフ。

↑ ソーシャルメディアに掲載している項目(ソーシャルメディア利用者限定、複数回答、米2012年)
↑ ソーシャルメディアに掲載している項目(ソーシャルメディア利用者限定、複数回答、米2012年)

↑ ソーシャルメディアに掲載している項目(ソーシャルメディア利用者限定、複数回答、米2012年)(世代別)
↑ ソーシャルメディアに掲載している項目(ソーシャルメディア利用者限定、複数回答、米2012年)(世代別)

男女間ではあまり差異が無い。ソーシャルメディアを利用している米未成年者の92%が本名、91%が自分の写真、71%が学校名、居住都市名、20%が携帯電話番号を公開している。無論全面的にオープンというわけでは無く、公開領域を定めている事例が多いものの、そして実名利用が原則のFacebook利用者が多分にいることもあるが、それでも公開度合いが大きい気はする。

世代別では概して14-17歳と年上の方が高めの値を示している。これは保護者の意図も働いているものと考えられる。とはいえ見方を変えると、12-13歳の時点、つまり日本ならば小学6年生から中学2年生の時点で、89%が本名、82%が自分の写真、そして25%が自分の動画を公開してしまっている。デジタルネイティブとしては当たり前の行動なのか、それともプライバシーに関する啓蒙が不十分なのかまでは分からないが、リスキーであることに違いはない。



「公開領域云々」とあるが、例えばFacebookには個人情報の公開範囲を設定できる仕様がある。ところがこれを使い、「友達まで」に限定している人は6割でしかない。

↑ Facebook利用者における情報公開領域(米2012年、12-17歳、Facebook利用者限定)
↑ Facebook利用者における情報公開領域(米2012年、12-17歳、Facebook利用者限定)

しかも本人が「友達まで」とした情報ですらも、その相手の「友達」が第三者に流す可能性は、悪意のあるなしを問わず十分にある(何しろコピーが簡単なデジタル情報なのだから)。さらに今調査でのFacebook利用者の「友達」は425.4人、ツイッターならば171.5人のフォロワーがいる。物理的な、リアルで付き合っている学校や近所の友達のみに限定したものとは考えにくく、デジタル社会でのみのつながりによる「友達」も多分にいることは容易に理解できる。

あるいはそこまで理解した上で、オープンにする行為もまた、デジタル・ネイティブ時代のプライバシーの考え方なのかもしれない。


■関連記事:
【どこまで見せる、教えるか? ソーシャルメディア利用時の個人情報の開示範囲(2011年版情報通信白書より)】(2011年9月、日本)


スポンサードリンク


関連記事


このエントリーをはてなブックマークに追加
▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2024 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー|Twitter|FacebookPage|Mail|RSS