「つい回しちゃうよね」カフェで使う備品に一工夫して「スマートさ」をアピールする広告

2013/05/28 11:30

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駐車するSmart以前【「気が付きにくさ」が売り文句になる広告】【置き場所を変えるだけで「ここまでミニサイズか」と驚かされる自動車の広告】などでも紹介したように、サイズの小ささ、そして燃費の良さをセールスポイントとしている、メルセデスの小型車両「Smart」。「小さい事は良い事だ」とばかりに、手を変え品を変え、世界を股にかけて広報展開をしている。今回紹介するのは、ロシアの首都モスクワで「Smart」が行ったプロモーション。モスクワでは他国の大都市同様、駐車場不足に悩まされており、小型の「Samrt」は絶好のアピールが出来る場所。さてどのような切り口で攻めたのだろうか(I Believe in Advertising)。


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↑ Mercedes-Benz smart 「The Simplest Test Drive Ever」 by BBDO Moscow
↑ Mercedes-Benz smart 「The Simplest Test Drive Ever」 by BBDO Moscow。

モスクワでは駐車場不足が深刻で、ドライバーは平均して1日19分も駐車場探しに奔走させられるほど。しかし一方で、その駐車場不足には自動車の大きさも一因というのが「Smart」側の発想。説明にいわく、同車は全長が一般車両の横幅プラスα程度でしかないので、縦に駐車をすることにより、1台分のスペースに2台を留めることができる。これなら駐車場スペースはほぼそのままで、2倍の(台数の)収納能力を持つことになる。

↑ 大混雑のモスクワ
↑ 大混雑のモスクワ

↑ 路上駐車で縦置きすることにより一般車両1台分の幅で2台の駐車が可能、との説明(ややはみ出るが)
↑ 路上駐車で縦置きすることにより一般車両1台分の幅で2台の駐車が可能、との説明(ややはみ出るが)

そこでこの「Smartの小ささを活用すれば、駐車場不足に悩むことは無くなる」というメリットをアピールするために行われたのが、セルフサービスのカフェテリアへのプロモーション。チェーン店全体(18店舗)で一日あたり1万人も利用する大繁盛のお店だが、やはり駐車場事情同様に、やたらと混雑するのが問題だった。

↑ 人気があるがゆえに、店内はいつも大混雑。カウンターにも人がぎっしり
↑ 人気があるがゆえに、店内はいつも大混雑。カウンターにも人がぎっしり

この「カウンターでの混雑」が、「駐車場での混雑」と同じ構造ではないかと気が付いたのが「Smart」側。ならば「Smart」と同じように、トレーを横にではなく、縦に使ってもらうことで、スペースを2倍使え、混雑も緩和できるではないか。そしてその混雑緩和ぶりを体験してもらえれば、同時に「Smart」の利便性も実体験したことになり、大いに共感が持てるに違いない。

ではどうすれば、トレーを縦に使ってもらえるのか。

「Smart」側が考えたのは、宣伝用のステッカーをトレーに貼ること。ステッカーには車両本体の全体図、駐車場を有効活用できることの利便性、そしてテストドライブが楽しめるアプリケーションにアクセスできるQRコードが描かれている。それらはトレーを縦に配することで、はじめて読めるように貼られている。通常の横のままトレーを使うと、文字も横のままで読みにくく、自動車の絵も何となくしっくりこない。

人の好奇心は旺盛なもので、手元に持っているトレーに何か描かれていると、ついそれに目を通したくなる。当然自然とトレーを回転させて縦にして使うようになる。

↑ 文字を読むためにトレーを縦に使うようにしてしまう
↑ 文字を読むためにトレーを縦に使うようにしてしまう

↑ 「縦にしないと読めないよね」一人が始めると皆が「なるほど」とばかりに真似をする
↑ 「縦にしないと読めないよね」一人が始めると皆が「なるほど」とばかりに真似をする

そしてトレーに書かれているメッセージを読み、カウンターでのスペースの節約と渋滞緩和を実感しながら、「Smart」のメリットを疑似体験したと認識させられる次第。まさに「もっともシンプルで分かりやすい、駐車時のメリットを体感できるテストドライブ」なわけだ。

今プロモーションでトレーを使った人は9000人に及び、問い合わせの電話は想定された量の186%増しを記録。実車の試乗を申し込む人は平均的な月台数の250%増しとなる85人に達するなど、相当な効果があったとのこと。そしてカフェテリア自身でもこの「縦利用推奨シール」により、カウンターにおけるお客の処理効率が38%上昇したのだそうな。

↑ スマートフォンでトレー上のQRコードを読み込む人も少なくない
↑ スマートフォンでトレー上のQRコードを読み込む人も少なくない

「目に留まったものは、つい読みたくなる」という心理をうまく使い、トレーを自らの意志で回転させ、それによるスペース節約の効用を自社車両のメリットに投影させる。非常に巧みで、良くできた切り口に違いない。


ちなみに。あまりにもの発想の良さが気にいられたのか、キャンペーン中に該当するトレーのうち50枚程が盗難にあったそうな。


■関連記事:
【トレーに絵と宣伝を描いて自動車のアピールをしてみよう】(トリガー記事)


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