「グラフでプラス領域が表れていない」・前年同月比でマイナス6.0%(2013年4月分大口電力動向)

2013/05/24 14:45

電気事業連合会は2013年5月21日に同会公式サイトにおいて、2013年4月分となる電力需要実績の速報を公開した。その資料によると同年4月の電力需要(使用量)は10社販売電力量合計で661億kWhとなり、前年同月比でマイナス6.0%となった。産業用の大口電力需要量は前年同月比でマイナス4.0%を記録し、これで11か月連続で前年同月の実績を下回ることになった。このマイナスは前月に続き、全主要業種で前年同月実績を下回ったのが原因。全業種で節電が進んでいるようである(【電力需要実績発表ページ】)。

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今調査の概要および用語解説は過去の同調査に関する記事の一覧ページ【大口電力使用量推移(電気事業連合会発表)】で説明を行っている。そのページで確認してほしい。

2013年4月では大口全体で前年同月比マイナス4.0%。「前年同月比」だが、それだけ各種工場の施設の稼働による電力消費が(昨年の同じ月と比べて)減ったことになる。

大口電力使用量産業別前年同月比(2013年3月-2013年4月)
↑ 大口電力使用量産業別前年同月比(2013年3月-2013年4月)

冒頭で触れた通り、そして数か月続いている傾向だが、今月も全業種で前年同月比の値がマイナスを示している(グラフでプラス領域が表れていない)。1-2%程度のマイナスへの振れ幅なら「ぶれ」「誤差」の可能性もあるが、ほとんどの項目でそれを超した下げ幅を示しているため、実体として下げていると見て間違いない。

節電か、生産減か、それとも


比較対象となる1年前の2012年4月では、2011年3月の震災による物理的破損による影響も「ほとんど」無くなっており、それと比べて5%前後、「非鉄金属」では10%を超える下げ率は、やや強い注視が必要となる。仮に節電効果の表れだとしても、1年間で1割もの削減が可能とは考えにくい。稼働率が落ちていると考えざるを得ない。ただし後述するように、一部業種では自家発電をフルに活用し、大口電力の購入を減らしている場合もあるため、それにより購入量が減っている可能性もある。

先日開催された、今夏の節電目標に関する「電力需給に関する検討会合」では震災直前の年度、2010年度と比較した、昨冬における大口電力需要層における需要減少分実績の資料が公開されている(【「数値目標なし」…2013年夏の節電要請内容発表】)。

大口需要家による需要減実績(冬期節電期間の2012年12月3日-2013年3月29日における対2010年度比)
↑ 大口需要家による需要減実績(冬期節電期間の2012年12月3日-2013年3月29日における対2010年度比)

電力会社の管轄にもよるが、大体震災前と比べて8%前後の需要減が確認できる。ただし資料にも「ほとんどの電力会社管内において、「家庭」よりも「大口需要家」の需要減が大きい。これは企業において、節電のみならず、減産等による需要減があったものと考えられる」との説明があり、需要減が単純に節電によるものだけでなく、工場内の減産=稼働率減少が起きていることを示唆している。

一連の「大口電力需給動向」でここ数か月マイナス値が相次いでいるのも、単に節電によるもの、自家発電によるものだけでなく、減産を起因とするものもあると見て間違いない。

次のグラフは今件データにおける、2010年度比を算出したもの。要は震災直前比の値である。

大口電力使用量産業別「2010年度」同月比(2013年4月)
↑ 大口電力使用量産業別「2010年度」同月比(2013年4月)

唯一「鉄鋼」はプラスだが、それ以外はすべてマイナス。特に「非鉄金属」「紙・パルプ」「機械」の下げ率が気になる。

中長期的な動き


中長期の流れをつかむため、そして記録保全の意味も含め、2007年1月以降の全産業別の前年同月比推移グラフを掲載しておく。

大口電力使用量産業別前年同月比推移(-2013年4月分)
↑ 大口電力使用量産業別前年同月比推移(-2013年4月分)

このグラフから動向を見ると「2008年秋のリーマンショックで大きな下げ(稼動率低下が主要因)」「リーマンショックの下げの反動などによる上昇も、2010年4月が天井」「安定成長」の流れで推移していたのが、2011年3月の東日本大地震・震災で下げ基調に移行しているのが分かる。

その後2012年2月までは多くの項目でマイナス圏での推移が続いているが、これは工場の物理的な損害、さらには原材料の調達不足、タイムシフト・デイシフトをはじめとする各種節電対策を原因とする、稼働率の低下・生産調整が影響している。もちろん上記で例を挙げたように、電力会社からの供給を減らし、自家発電で補う事例も増えているため、それも影響しているはず。

2012年3月以降は「2011年3月以降の震災による大きな減少」からの反動で、多数の項目で大きく跳ねている。しかしこのリバウンドもすぐに終わり、4月以降は失速、6-7月には完全に低迷状態に陥り、それ以降は低迷の状態が継続している。今回の2013年4月・全体値の「前々年」同月比、つまり震災後における変化はプラス1.6%になる、つまり震災直後の電力ひっ迫時(2011年4月)と比較して、1.6%しか大口電力使用が増えていないことは、知っておいて損は無い。



今件大口電力は国内景気、そして内需、さらにはそれと連動する各種産業、とりわけ特に第二次産業・製造業の動向を推測する物差しとなる。被災工場の物理的復興は進むも、電力の安定供給や取扱商品・サービスの需要回復を待たずに生産施設を閉鎖した事例をはじめ、節電対策での消費電力減退、景気低迷に伴う生産調整など、生産力の低下が生じている。

今夏も前体制の失策の後遺症として、2012年夏と似たような電力需給状況になる可能性が多分にある。電力需給の観点では比較的状況は改善されているものの、それを果たすために浪費するコストは膨大で、廻り回って電力料金の値上げにつながるため、リスクの視点から考えると、状況の改善とは言い難い。

今後電力供給がどのように回復していくか、単に電力の需給問題だけでなく、産業との関わり合いの点でも気になる。安定した、節電要請の無い、それこそ湯水のように(無論無駄遣いはせずに)、コスト面も含めて特段意識することなく、空気を呼吸するかのように使える電力供給こそ、製造業が安心して仕事を続けるための前提条件に他ならない。その環境を整備するのが、行政の責務であり、最優先事項といえよう。


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