【更新】有力連載続々登場「サンデージェネックス」が伸びる…少年・男性向けコミック誌部数動向(2013年1月-3月)

2013/05/17 14:45

【社団法人日本雑誌協会】は2013年5月15日、四半期単位で更新している印刷部数について、公開データベースを更新する形で2013年1月-3月分の値を公表した。協会側が許諾を受けている主要定期発刊誌について「印刷証明付き部数」を提示したもので、業界の動向・実情を示すものとしては、各紙・各出版社が発表している「公称」販売部数より精度が高く、検証素材としても役立つものである。今回は当サイトの読者層を考えた上で、もっとも注目するであろう「少年・男性向けコミック誌」のデータを各種切り口でグラフ化し、前回発表分からの推移も合わせ検証していくことにする。

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データの取得場所の解説、「印刷証明付部数」など用語の説明、諸般注意事項は一連の記事まとめ記事【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

まずは少年向けコミック誌。相変わらず「週刊少年ジャンプ」が最上位についている。言葉通り「群を抜く」勢い。

2012年10-12月期と最新データ(2013年1-3月期)による少年向けコミック誌の印刷実績
↑ 2012年10-12月期と最新データ(2013年1-3月期)による少年向けコミック誌の印刷実績

「ジャンプ」は直近データによれば印刷部数はで283万5455部。ジャンプでもさすがに返本が皆無ということは無く、販売実数はこれよりも少なくなる。大体250万部前後が目安だろうか。雑誌を取り巻く環境の変化の中で、これだけの値を維持することの偉大さ、王者ジャンプの威厳を再認識させられる。もっともこれも最盛期の1995年時点の値、635万部と比較するとやや見劣りがしてしまうと共に、時代の流れを感じさせる。

今回は前回と比較すると、「ドラゴンエイジ」「少年エース」の2誌が非公開化してしまった。確認したが双方とも休刊の動きは無く、単に編集部、あるいは出版社側の方針によるものと思われる。特に「少年エース」は直下の男性向けコミックでも「ガンダムエース」が同じく非公開化していることから、角川グループレベルでの方針転換があったものと推測される……が、実態は定かではない。

続いて男性向けコミック誌。こちらも世間一般のイメージ通りの印刷部数展開だが、一部「あの雑誌が……?」という値を見せるものあり、興味をそそられる。

2012年10-12月期と最新データ(2013年1-3月期)による男性向けコミック誌の印刷実績
↑ 2012年10-12月期と最新データ(2013年1-3月期)による男性向けコミック誌の印刷実績

直上でも触れているが、男性向けコミックでは「ガンダムエース」が非公開化。こちらも相変わらず販売は継続中で、やはり編集部・雑誌社サイドの方針によるもののようだ。

「ビッグコミックオリジナル」「ヤングマガジン」「週刊ヤングジャンプ」によるトップスリー状態は継続中。ただしいずれも前四半期と比べて部数を落としているのも事実。それに続く諸誌では「モーニング」が奮闘中だが「ビッグコミック」は軟調。いずれにせよ、上位陣には絶妙なパワーバランスが維持されており、順位に変動はない。

【隔週刊誌「ビジネスジャンプ」「スーパージャンプ」の統合月2回刊誌、「グランドジャンプ(GRAND JUMP)」に決定】にて解説したが、青年向け漫画誌の「ビジネスジャンプ」「スーパージャンプ」両誌は休刊しているため、すでにグラフからは姿を消している。そして代わりに再構築誌版として登場した雑誌「グランドジャンプ」と「グランドジャンププレミアム」2誌のうち、前者のみがデータの公開を行っている。先日連載陣の一部入れ替えも行われたが、片方のみの公開方針に変わりはない。

その「グランドジャンプ」の、今四半期における印刷部数は21.0万部。「ビジネスジャンプ」の最後期データ23.9万部を下回る状況が続いている。

↑ グランドジャンプの印刷実績(万部)
↑ グランドジャンプの印刷実績(万部)

統廃合によるご祝儀相場的な上乗せ効果はすでに過ぎ去り、下落が継続している。

前期比較で動向を眺める


続いては今件データを基に、各誌の前・今四半期間の販売数変移を計算し、こちらもグラフ化する。季節変動「など」を考慮しない変移になるが、短期間の動きをダイレクトに知るのには有益なグラフとなる。

今回データが非開示となった雑誌、今回はじめてデータが公開された雑誌はこのグラフには登場しない(比較のしようがないため)。上記にある通り、「ドラゴンエイジ」「少年エース」「ガンダムエース」は未登場となる。

まずは少年向けコミック誌。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2013年1-3月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2013年1-3月期、前期比)

まず目に留まるのは「サンデージェネックス」の突出した上昇ぶり。これは「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」のアニメ化に伴う注力に加え、広江礼威氏による「ブラックラグーン」の連載再開、伊藤明弘氏による「ABLE」の連載開始など、インパクトのあるタイトルの登場によるところが大きい(もっとも部数そのものは数千部の上乗せに留まっているが)。

一方、今四半期では前期と比べ、大きくマイナス値を示した雑誌が多いのも特徴の一つ。マイナス5%超を意味する赤着色の雑誌が前回は2誌に留まっていたのに対し、今回は5誌にまで増加している。「ウルトラジャンプ」「別冊コロコロコミックスペシャル」は前期の反動の面もあるとはいえ、穏やかならぬ状況ではある。

続いて男性向けコミック。こちらは少年向けと比べると多少ながらも健闘している感はある。

↑ 雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)(2013年1-3月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)(2013年1-3月期、前期比)

今回はプラス誌が2誌のみ(0.0%の2誌は前四半期とまったく同じ)、マイナス値を示す雑誌がほとんど。ただし下げ幅は多少ながらも少年向け雑誌と比べるとおとなしめ。その分、マイナス5%超えの「コミック乱ツインズ戦国武将列伝」と「スーパーダッシュ&ゴー!」の下げ方が目立つ。

中でもここ数回ほど連続して大きくマイナス圏を進んでいた「スーパーダッシュ&ゴー!」だが、先日【「スーパーダッシュ&ゴー!」休刊、一部作品はウェブで夏から展開継続】でも伝えたように、4月発売号・第10号をもって休刊が決定した。夏からはウェブコミック誌として新装されることになる。「文庫本タイトルを積極的に漫画化し、相乗効果を狙うためのコミック誌」という切り口そのものは注目すべきものであったが、雑誌販売を押し上げるだけの何か(企画か、作品か、時代の流れに乗るための要素か…)に欠けていた結果なのかもしれない。

季節変動を考えなくても良い前年同期比で検証


これまで数年に渡り定点観測を続けデータを取得したことにより、過去の値を用いて「前年同期比」も算出可能となった。そこで今回も「季節属性」を考慮せずに済む「前年同期比」のグラフも作成する。今回は2013年1-3月と、その1年前の2012年1-3月分の比較というわけだ。雑誌の販売数における年ベースでの伸縮率が把握できる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2013年1-3月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2013年1-3月期、前年同期比)

「少年サンデースーパー」の大きな下落が目立つ。これは以前解説したように、同誌が1年前に当たる2012年1月売りの3月号からリニューアル・新装刊を果たしたことに伴い、部数を大きく底上げしていたため。リニューアルの効果は半年がピークで、その後部数は漸減、現四半期の状況に至るため、このように大きな下落の値が出ることとなった。

また前四半期のグラフではあえて触れなかったが、「ゲッサン」が前年同期比では大きくプラスを示している。前期比ではもっとも大きな下落だったのに……と不思議に思うかもしれないが、これは過去に触れた通り、あだち充氏の作品「MIX」効果などによるところが大きい。要は「低迷」「『MIX』効果で急上昇」「失速」の過程にあり、今四半期は失速中なものの、まだ「急上昇」時の勢いが残っているため、前年四半期ではプラスを示している次第。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲッサン)(部)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2013年1-3月期、前年同期比)

週中発売の二大週刊誌として知られている「週刊少年マガジン」「週刊少年サンデー」。今四半期期では前者がマイナス4.9%、後者がマイナス7.1%と、双方とも部数を削っている。印刷部数そのものはそれぞれ137.7万部・50.2万部と、他誌と比べれば大きな数字だが、その分「減少比率」で大きな値を示している現状には憂慮すべきといえる。

続いて男性向けコミック。こちらは少年向けコミックを超えるマイナスぶり。

↑ 雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌)(2013年1-3月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌)(2013年1-3月期、前年同期比)

プラスを示した雑誌はゼロ。マイナス5%以下は4誌のみで、あとはすべて5%超えの下落。「スーパーダッシュ&ゴー!」は上記にある通り休刊・ウェブへの移行が決まっているが、他誌もうかうかしていられない状態には違いない。無論各誌ともデジタル系メディアとの連動や編集方針の改革など、四方に向けて手を打っているのは確認できるのだが、それが成果としては表れていないようだ。



今四半期データは2013年1月-3月の動向を反映しており、2011年の震災をはじめとした特異状況による変動は(震災の反動も含めて)受けていない。その上で赤系統に着色された(マイナス5%超)棒が多いグラフばかりとなったことからは、少年・男性向けコミック誌では全般的に売上の減少、業界規模の縮小の流れが継続しているのが分かる。

特に季節変動を無視して考察できる「前年同期比」で印刷部数がマイナス10%超えを繰り返す雑誌が複数存在していることから、売り上げをプラスに押し上げる切り口が早急に求められる現状を再認識させられる。

【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編)・総世帯版、2012年分まで反映)】【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(拡大版)…購入世帯率や購入頻度の移り変わり(家計調査報告(家計収支編)・二人以上世帯版、2012年分まで反映)】などで触れている通り、雑誌・週刊誌では書籍と同じように「購入世帯の減少」「購入する人でも購入冊数の減少」と多元的に「雑誌離れ」が起きている。

Dモーニング雑誌販売の一番の窓口といえるコンビニですら、【コンビニの出版物販売額をグラフ化してみる(後編:全体編)(2012年「出版物販売額の実態」版)】で解説している通り、出版物販売額は減少中で「雑誌離れ」が継続、その上【少年・青年雑誌の無いコンビニ雑誌コーナー】の実況レポートにもある通り、雑誌・書籍販売コーナーから少年・青年雑誌を取り除くコンビニも増えている。

これらの危機的状況を打開するための一つのアプローチとして進められているのが、デジタルメディアへの積極的な進出や、デジタルとアナログ(リアル、紙媒体)との相乗効果を狙った企画の展開。そして電子出版による「雑誌」の展開。紙媒体で無いため今件の印刷証明部数には反映されなくなるが、「時間潰し」のツールが雑誌や新聞からデジタル・モバイル端末に代わる昨今では、売上先として有望視されている。先に【デジタル版「モーニング」が月額500円で・講談社iOS用アプリ「Dモーニング」の提供開始】で紹介した、月額課金モデルを用いた電子雑誌「Dモーニング」は、大きな可能性を秘めた手法として注目したい。

また、以前から紹介している【Jコミ】だが、読者が作者を直接後押しし、読者も数々の特典が得られる「JコミFANディング」も第二回目を展開し、これも第一回同様大いに好評を博している。過去作品の掘り下げと需要の再喚起、さらには新作へのアプローチへの道筋を作り出すなど、「コンテンツ」の本来の価値を十分に活かしたビジネスモデルを続々と送り出しており、電子書籍におけるポジティブな可能性を見出すことができる。今後さらにどのような切り口が生み出されるのか、期待と共に、新たな時代を予見させる。

今や中高生ですら携帯電話といえばスマートフォンを指すのが一般的となった昨今では、紙媒体としての雑誌の立ち位置は昔と比べ、随分と不確かなものとなっている。紙媒体としての雑誌の販売スタイルを維持する、あるいは他メディアとの連動性を高める、いずれにせよ、既存のアプローチではすでに限界で、雑誌出版の当事者は大胆かつ斬新な展開が求められている。欧米ではすでに「電子書籍リーダーなどによるデジタルメディアで書籍を読み」行動も、一般の紙媒体によるもの同様「読書」として取り扱っている。日本もそう遠くないうちに、それが当たり前のものとなる。

紙には紙の、デジタルメディアにはデジタルメディアの利点がある。それは誰も疑う余地のない事実。それと共に時代が大きく動いているのも、また事実。現状を正しく見極めた上で、正しいかじ取りをしながら前進することが、今の出版業界には求められている。

※2013.05.19.雑誌名に一部間違いがあり、本文・グラフ共に修正しました。印刷部数及び分析内容に変更は有りません。ご指摘ありがとうございました。

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