電通『マーケティング・プロモーション』がプラス28.5%と強い(電通・博報堂売上:2013年4月分)

2013/05/15 07:55

博報堂DYホールディングスは2013年5月13日に、同社グループ主要3社(博報堂、大広、読売広告社)の2013年4月における売上高速報を発表した。これにより、電通が同年5月9日に先行する形で発表した単体売上高と合わせ、日本国内の二大広告代理店における2013年4月次の売上データが揃った。今回は両社の主要種目別売上高前における年同月比を計算した上でグラフを生成し、両社それぞれの広告売上動向、そして広告業界全体の動きを確認していくことにする。

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グラフを作るために取得したデータに関する解説、各項目の留意事項は【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】で記述している。そちらで確認のこと。

二大広告代理店(電通・博報堂)の2013年4月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2013年4月分種目別売上高前年同月比

本震から2年以上経過し、各方面の努力もあり、東日本大地震・震災の直接的な影響は、少なくとも広告費の額面数字の上では終息している。そして今では震災以前から継続する形で、広告業界やメディアのトレンドがグラフ上には描かれていると見て良い。具体的には、中期的な流れとして「4マス(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)が苦境の中にある。しかしテレビは例外的にやや復調が見えている」「デジタル系や屋外広告のような非4マス系の一部が堅調」という具合。

今回月・2013年4月分の特徴としては「4マス軟調」「インターネットは強含み」「従来型は押し並べて弱いが、電通の『マーケティング・プロモーション』がほぼ唯一突出した強さを見せる」の3項目を挙げることができる。比較対象となる1年前の状況を示す記事を見ると、震災直後の大幅マイナスから1年が経過した月であることから、震災の際の大きな減少分との比較により、軒並み数十%のプラスを示している。「新聞」ですら2割近い伸び。それとの比較であることを考えれば、マイナスばかりなのも仕方ないように思える。ただし博報堂の「雑誌」は2012年4月の値がマイナス19.8%と大きく落ち込んでいたため、その反動でプラスにぶれたようだ。

電通の各年4月における広告売上総額推移をグラフ化すると次の通り(同じ月の推移を見ることで、季節属性を考慮しなくても良くなる)。

電通月次売上総額推移(各年4月、億円)
↑ 電通月次売上総額推移(各年4月、億円)

電通の広告売上総額動向を見る限りでは、すでにリーマンショック(2008年秋)のダメージからは脱しており、2007年夏に始まる金融危機・不況前の水準まで手が届いた感はある。このような状況の中、引き続き大きなマイナスを示している部門は、時代の変化に耐え切れない結果が数字に表れている可能性がある。またこの数か月では4マス中唯一手堅い動きを示していた「テレビ」ですら、マイナスを呈しているのが興味深い。

先月の記事で「3月は年度末なので、年度末調整をした、あるいは次年度の方針のフライング的なものがあったのかもしれない」としたが、今回月の動きを見る限りでは前者よりは後者の雰囲気を強く感じることができる。

また4マス以外では電通の「マーケティング・プロモーション」が強い。もっとも同項目は1年前はマイナス0.8%。この反動が一気に出たのかもしれない。なお額面は120億3300万円と大ぶりで(今回月の新聞・雑誌・ラジオを合わせた額よりも大きい)、小さな額面ゆえのぶれとは考えにくい。何かまとまった案件が入ったのか、あるいは新年度として営業方面で気合いを入れた結果が出たのだろう。

なお今件記事中最上位にあるグラフに記された値は、「個々の会社の前年同月比」。取引額そのものとは違うことに注意されたい。例えばインターネット分野は市場規模がまだ小さいため、額面も小さい。そして個々の分野の額面をそれぞれの会社毎に比較した場合、博報堂より電通の方が大きくなる。

電通・博報堂DYHDの2013年4月における部門別売上高(億円、一部部門)
↑ 電通・博報堂DYHDの2013年4月における部門別売上高(億円、一部部門)

先日【「数字目標なし」…2013年夏の節電要請内容発表】でも伝えたように、今夏の電力需給は数字目標を伴わない節電要請に留まったが、依然綱渡りの状態に違いは無く、さらに電力会社をはじめ各方面に多大な損失(金銭面だけでなく、経済・インフラ上の安定面)が生じる状態が続いている。

電力はあらゆる産業において欠かせない存在であり、それはまた広告業界も変わらない。今なお多量の電力消費を要する広告には(多々にして無見識な)非難が寄せられ、その可能性を考慮してクライアント側も腰が引ける状態が続いている。

駅構内節電中新スタイルの広告手法として注目され数年前から目立つようになった「デジタルサイネージ(デジタル系、インターネット系技術を取り入れた従来型広告の発展版。液晶パネルがよく使われる)」も、震災直後からはかなり状況が改善されているものの、以前と比べて展開の仕方は地味さを覚えるものがある。そのような環境下では電力消費の心配が要らない、立て看板などの従来型野外広告に注目が集まることになる。震災後はそれまで以上に際立つようになった「従来型広告の堅調さ」も、これら電力事情によるところが大きい。

一方でデジタルサイネージに限らず、過度の節電は売上へのマイナスの影響があることも忘れてはならない。暗い場面での意思決定は積極性を欠いてしまう。また、防犯上の観点でもマイナスとなる。

震災による直接的な影響が収束に向かい、各広告種類が再び本来の力量による動きを示す中、4マス中「テレビ」以外の3項目における軟調さが継続している(今回月はテレビも不調だったが)。これはそれら媒体の「メディア力」の低下を意味する。その低下が「絶対的なもの」か、他メディアと比較しての「相対的なもの」かは、広告費という一側面だけでの断定はリスクがある。断ずることができるのは「広告出稿側から厳しい評価がなされている」ことだけ。

今後も広告費動向をベースに広告業界そのものの変化を注意深く見守り、そこから発展する形で他の業界の動き、さらには社会全般との関連性を探り、各メディアにおけるパワーバランスの変動を感じ取りたいものだ。

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