夏のボーナス増加を含めた政策効果への期待…2013年4月景気ウォッチャー調査、現状下降・先行き上昇

2013/05/12 15:00

内閣府は2013年5月10日、2013年4月時点での景気動向の調査、「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、現状判断DIは先月から転じて6か月ぶりに減少し56.5となったが、引き続き水準値50は上回った。先行き判断DIは先月から転じて2か月ぶりに上昇し、水準値の50以上を維持している。結果として、現状下降・先行き上昇の傾向を示している。基調判断は先月から継続する形で「景気は、持ち直している」としている(【発表ページ】)。

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現状も先行きも家計でマイナス多し、企業はプラス


調査要件や文中のDI値の意味に関しては、今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で説明が行われている。そちらでチェックしてほしい。

2013年4月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比マイナス0.8ポイントの56.5。
 →6か月ぶりの減少。「やや良くなっている」が減り、「変わらない」「やや悪くなっている」が増加。
 →家計では高額品が引き続き好調だったが、天候不順で春物が売れずに減少。企業動向は円安に伴い、製造業を中心に売上・収益の増加が見られたことで上昇。雇用関連は年度末・新年度向け求人の減少により低下。

・先行き判断DIは先月比でプラス0.3ポイントの57.8。
 →仕入れ価格や電気料金の不安はあるが、円安や株価の上昇で夏のボーナス増加を含めた政策効果への期待があり、全部門で上昇。
特に現状の企業動向で、先月が「受注・採算の改善」だったのが、今月は「売上・収益」と具体的な利益の話に変わっていることに注意。また先行き・企業動向部門で円安によるデメリットもあるが、政策面での対応でむしろメリットの方が多いとの判断が下されていることにも注目したい。

「現状」「先行き」共に天井で高値安定か


それでは次に、それぞれの指数動向を簡単にチェックしてみよう。まずは現状判断DI。
景気の現状判断DI(-2012年4月)
↑ 景気の現状判断DI(-2012年4月)

今回発表分では先月から打って変わり、マイナス値を示す項目の方が多くなっている。家計動向関連ではマイナス項目が多いが、先月大幅上昇について言及した飲食関連が、さらに伸びているのにも目が留まる。同業界は牛丼やハンバーガー系列に代表されるように厳しい状況が続いているが、それでもなおファミレス系などをはじめ、景気の回復感を覚える話が相次いでいるのだろう。

続いて景気の現状判断DIの動きを、長期チャートにしたもので確認する。主要指数の動向のうち、もっとも落ち込みやすい雇用関連の指数の下がり度合いが把握しやすいよう、「前回の」不景気時、具体的には2001年当時における下げの最下層時点の部分に赤線を追加し、今回の不景気との比較をしやすいようにしている。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)(-2012年4月)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)(-2012年4月)

グラフの動きからは一目で分かる通り、2007年夏以降の(サブプライムローン問題の露呈にはじまる)直近の「金融危機」ですでに各値は下落傾向を見せていたが、2008年後半の「リーマン・ショック」をきっかけに、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えてさらに下落した。そして2008年12月前後でその動きも落ち着ちつき、上昇(回復)に転じる。しかし反動の力をもってしても、結局基準値50までには届かなかった。実経済の体感として、「可も無く不可も無く」の心境までには好況感が得られなかったのだろう。そしてそれ以降は50を天井とし、小さな上下変動を繰り返していた(2011年2月まで)。

そして2011年3月に発生した東日本大地震・震災で全項目が、単月の動きとしてはリーマンショックを超える勢い、言葉通りほぼ垂直で下落する。幸いにもその後の回復ぶりも記録的な上昇カーブ(再び垂直に近い形)となり、同年7月分では震災直前の水準にまで戻している。合計値で50を大きく超えたのは2007年夏の金融危機以来はじめてとなるが、これは震災による垂直降下のリバウンドの勢いが継続したもので、景気が回復したとの実感よりはむしろ「あの頃の不安感よりはマシ」という心理によるものと考えられる。

そしてその「リバウンド」も、実態を伴わない以上、当然長続きはしない。2011年8月以降は失速し、再び50を割り込んでいた。ところが2012年11月には「弱い上昇でしかなく、単なる反動か」の懸念を持ちながらも回復の兆しが見られ、その後は月を重ねるに連れて上昇速度を強め、明らかに景気の回復が数字に現れている。今はすでに水準値50をはるかに超え、判断文言「景気は、持ち直している」にもリアルさを体感できる。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」。
・東日本大地震による震災で
急降下状態。
・その後震災前までの状況に
リバウンドも合わせ回復をしたが、
間もなく失速、低迷へ。
・政治環境の変化とそれに伴う
社会の動きで
上昇、高値を維持。
前回の景気後退(2001年-2002年)による急落時には、家計や企業、雇用動向DIそれぞれの下落にはタイミングにずれがあった。グラフもほとんど重なるところが無い(下げ基調には違いないが)。それに対し、直近の金融危機勃発から、リーマンショック時の大幅な下落期(2007年後半-2008年中)では一様に、ほぼ各線が重なりながら、しかも急速に落ち込んでいる。日本はもちろん他の多くの国で一斉に景気が悪化したため、日本国内でも互いの数字の下落度合いがズレる余裕すら与えられなかった結果によるもの。

そして2011年3月に発生した東日本大地震・震災の影響もまた、傾向としてはリーマンショック時の下げ方に近い。一か月で前回の不景気(2001年-2002年)の最悪期と同じ水準にまで一挙に落ちたのは、減少・低下というよりは「墜落」との表現の方が適切である。

震災直前までは、雇用指数(上側の線)とその他の指数の差が大きくなりつつあった。これはかつての2003年後半以降の傾向と似ており、前回の事例が踏襲されれば「その時点での」景気状況の継続化、どん底ではないものの、やや不況な状態の慢性化に至る可能性が高かった。

しかし東日本大地震・震災がその可能性を御破算にしてしまう。そしてタイミングを同じくして欧州債務危機の懸念再来、さらには震災に伴う社会情勢の混沌化、電力不足の長期化が市民心理に更なる追い打ちをかけ、各景況感とも水準値より低いままで低迷した。

そして昨年秋口以降になると、国内情勢の変化に伴い、明らかに、実態に裏付けられる形での景気感の上昇が描かれている。この二、三か月でようやく勢いも収まったが、本格的なトレンド転換の中にあると考えて問題はない。

景気の先行き判断DIは先月のブレーキ感が継続、企業動向関連はプラス、家計関連はマイナスが多く、全体としてはプラスだが、実質的には先月と同じくほぼ横ばいとなっている。

景気の先行き判断DI(-2013年4月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2013年4月)

プラスの最高値は製造業のプラス2.2。一方で最低の伸び率は飲食関連のマイナス1.9。企業動向関連では押し並べてプラス値を示しているが、これは上記にある通り電力価格・需給問題、そして輸入原材料価格の上昇に伴う懸念もあるものの、円安や株価の上昇、夏のボーナス増加を含めた政策効果への期待によるもの。もっとも上昇幅は限定的で、基準値の50超えは前回から続き全項目。過去の事例(2004年前後の好景気)を見るに、このあたりが上限であり、今は高値もみ合いの状態といえる。

「現状」のみならず今「先行き」でも他の指数より上乗せされやすいのが雇用関連の値。2007年からの金融危機による不況期に限れば、最高値を示した昨月の60.9からさらに上乗せし、61.8を示している。上げ幅も縮小しており、間もなく、あるいは今月分が天井のようだ。

次の折れ線グラフ上の過去の動きを見れば一目瞭然だが、雇用関連値の動きは他の指数に先行する場合が多い。中でも「合計値」を下回った場合、過去二回において大規模な全体値の下落、大きな景気の落ち込みが起きている(2001年前半と2008年前半)

5か月前の2012年11月に大きな景気後退の前兆ともいえる「合計値>>雇用関連」が発生したが、今回のクロスでは早くもその次の月(=先月)に切り返しを見せ、再び「合計値<<雇用関連」との形となった。今月も前月同様にその状態は維持。特にアノマリー的な話(パターンとして同じような状況は繰り返される)を気にしていた人にはグッドニュースである。

2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)(-2013年4月)
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)(-2013年4月)

先行きの合計DIはすでに2008年後半の時点で、前回の不景気時期にあたる2001年後半時期の最下方と同等、あるいはさらに下値に達していた。これは先行きに対する不透明感が強力で、前例のない不安を多数の人が感じていた結果。そして2008年10月の「リーマン・ショック」で大きく底値を突き抜けてしまう。

その後は幾分立ち直ったものの、不安な心理状況・経済状態を反映するかのように、合計DIは基準値50を天井として、その下層での動きを続けていた。この「景気低迷感」は「現状指数」よりも顕著なもの。そして2011年3月の震災による大幅な下落は「リーマン・ショック」時と同じ、「すべての項目が一斉に下げ」たものとなった。しかも落下角度は「リーマン・ショック」ですらも超え、クレパスのようなくぼみがグラフ上に形成されている。

その後発生した震災による下落のリバウンドも強いものでは無く、値は基準値50付近を迷走。現状指数と比べて低迷気味なのは、明るい「見通し」が見いだせない、材料がない状況によるものと考えれば道理は通る。

そして現状指数同様、2012年11月以降はこれまでの低迷感を忘却したかのように、大きな上昇を見せている。この点ではむしろ現状指数を先行する形で動いていたが、現在ではほぼ天井を迎えた形となっている。

円安の影響はポジティブだが気候の悪化が大きく響く


発表資料には現状・先行きそれぞれの景気判断に関して、その判断をコメントした理由が詳細に語られたデータも記載されている。世間一般では一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)の事例を挙げてみると、次の通りとなる。

■現状
・一時期季節外れの降雪があったものの、全体的に気候も落ち着いてきており、売れるべきものが売れる時期にしっかりと売れてきている。顕著な動きとしては、宝飾品やブランド品といった高額品の売上が前年を大きく上回っている(百貨店)。
・ディナーで高いコースが出るようになった(高級レストラン)。
・来客数が前年より増加している。外国人観光客、特に中国人が増えている。県産の商品を目当てに買っている(コンビニ)。
・気温の動向が不安定で、花見が早まったり、春夏物の衣料品が売れないなど、本来売れるべき時に売れないケースがみられる。このため、売上の伸び悩み感がある(スーパー)。
・天候不順により、春物の売上が伸びない(衣料品専門店)。
・気温が上がらず春物の動きが鈍く、全体的に苦戦傾向が継続している(百貨店)。
・決算が終わり極端に客の来店が少なくなった(乗用車販売店)。

■先行き
・円安、株高による企業業績の上方修正が多くなってきたほか、一部メーカーの生産が国内回帰するとの情報もあり、賃金に反映されれば良くなる(百貨店)。
・製造業が多い地域なので、このまま円安が続けばボーナスの増加が見込め、消費意欲の向上が期待できる(百貨店)。
・外貨為替の変動により海外旅行から国内旅行へシフトが起こり、売上が増加することが期待される(一般小売店[菓子])。
・円安、株高の恩恵は小売の段階では感じられない。逆に輸入食材、燃料等の値上がりが影響してくる。天候要因による増減はあるが、しばらくは景気上昇による売上や来客数の増加にはつながらない(コンビニ)。
・電気料金の値上げも来月から始まり、今後、燃料や資材、石油製品の高騰により商品の値上がりも考えられるので、今後、景気の状況は良くならない(スーパー)
高級品の動向の堅調さ、ここには掲載しなかったが企業動向でのさまざまなポジティブな話、さらには海外転向企業の国内回帰の話も含め、景気の良い話が少なくない。一方で電気料金の値上げをはじめとした、生活の負担増に対する懸念の言葉も複数見受けられる。

また、天候の悪化や新年度による状況の変化など、季節変動に伴う動きやイレギュラーな要素も大きく作用しているため、単純に先月とは比べにくい感もある。天候で景気動向は左右するが、天候をコントロールすることは叶わない。こればかりは運を天に任せるしかない。
る。



金融危機以降の
実経済の悪化で景況感も
マイナス継続。
「底打ち感」もあったが
回復には至らず、さらに
リーマン・ショックが
追い打ち。
その後も失策、対外要因で
低迷感が浸透。
東日本大地震では大きな
変動が起き、その後は
景況心理は下げ続行。
2012年冬以降は国内の
政治環境の変化で
政策転換の期待と
実経済の変化が
景気を動かしていく。
2007年夏に始まった直近の不景気は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するのではないかと思われた。実際、それに近い動きを見せていたのだが、2011年3月の東日本大地震・震災によりその推測は吹き飛んでしまう。

震災は直接的、物理的な被害はもちろんだが、数々の不安要素が人々の心と行動を委縮させた。表現を変えれば「心理の保守化・防衛本能の発起」が、一般社会、特に経済行動で中心的な存在の中堅女性層に著しく表れる。当然、小売セクターに大きな影響を与えている。

そして直近数か月では2012年秋口以降の日本国内における政治状況の変化により、不透明感が払しょくされ、期待に伴う動きが経済面でも表面化、実体化。為替・株価動向や、次々に打ち出される具体的方策が期待を実体化し、その動きがさらに期待を呼ぶ状態にある。他方で、適正レートへの為替変動に伴う円安で、原材料のコストアップや、電力をはじめとする「これまでの」政策に伴う負の遺産が、気になる問題として持ち上がり始めている。

今後は過去に打ち込まれたくさびを一つ一つ抜き取り、社会的不安定な状況下で闊歩した「魑魅魍魎」的な話(を語る人達)を「適切に」処理しながら、前進していく必要がある。明日に希望が見出せるような道のりが示されれば、人々の不安も少しずつ和らぎ、景況感も改善する。そして回答者のマインドの集積による結果である「景気ウォッチャー」もまた、良い値を示し続けるに違いない。


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