乳製品の大幅上昇が継続中(2013年4月分世界食糧指数動向)

2013/05/14 08:45

国連食糧農業機関(FAO、Food and Agriculture Organization)は2013年5月9日、【世界食料価格指数(FFPI:FAO Food Price Index)】の更新データ(2013年4月分)を発表した。この値は1990年以降にFAOが世界の食料価格の変化を月単位で集計精査して発表しているものだが、各種食料品市場の動向、食糧事情が大いに影響を及ぼす政治情勢を判断する時に、重要な資料となる。今回は前月の記事に続く形で、この発表値を元にいくつかのグラフを生成すると共に、食料価格の現状を推し量ることにする。

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今記事のデータ取得元や用語の解説に関しては、一連の記事のまとめ【世界の食料価格の推移(FAO発表)】で行っている。そちらでチェックをお願いしたい。

まずは、公開全データを使った折れ線グラフを生成する。1990年以降の中長期的な食料価格の変移概要がつかめる、資料性の高いものだ。もちろん最新の値も反映したものとなる(ほんのわずかだが、確実に先月分のとは違う)。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2013年4月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2013年4月)

オレンジ色の線で形成される砂糖指数は、砂糖が元々相場変動性の高い食料品のため、上下の値動きが激しい。しかしそれ以外の項目は2005年前後まで、下限50・上限150の領域(水準値100、プラスマイナス5割内)でほぼ留まっていた、つまりボックス圏内での価格変動だった。ところが2007年夏に始まる世界金融不況以降は、各値は特に上昇方向への大きな動きを見せていく。「サブプライムローンショック」(2007年夏-)時の急上昇(砂糖はもう少し前に上昇している)とその後の大きな反動による下落、そしてその後に起きた「リーマンショック」(2008年9月)以降は、多少の減退はあるが、全体的に上昇する一方だった。

2011年後半期からは食品種類によって下げ率に違いはあるものの、少しずつ値を下げている。とはいえ大きな下落幅を見せるのは砂糖と油脂のみ。他の種類は高値で横ばいに留まっている。

続いて、グラフ生成開始期間を2007年とし、直近の金融危機以降の動向を明確化できるようにしてみる。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2013年4月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2013年4月)

砂糖指標において2010年初頭から、「U」の字を描くかのような急落ぶりが目立つ。400近くを示していたものが、数か月で200近くにまで下落し、ほぼ半減している。ポジションを維持し続けた人はいないだろうが、砂糖相場をいじっていた一部の人は、阿鼻叫喚だったかもしれない。これは元々過熱感のあった砂糖相場で、豊作の報をトリガーとした反動(反落)の結果。

だが価格上昇の原因「需要の拡大(新興国、特に中国)に伴う需給バランスの不安定感」は解決していないことから、すぐに再び価格は上昇をはじめている。そして1年ほど前までは高い領域(300を底値)での上げ下げを繰り返していた。直近の1年ばかりは下値抵抗線を破る形で値を下げ続けている。これは豊作による供給増加、そして不景気による甘味需要の減退が原因とされている。もっとも需給バランスの均衡化や、一部地域での景気回復に伴い、値下げ幅を縮小し、底値を探すような動きを示しているのも見逃せない。

昨今、そして直近の食料価格の上下動向を確認するため、各指標の前年同月比、そして前月比を併記し、数字の変移が分かりやすいようにしたのが次のグラフ。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2013年4月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2013年4月)

前年同月比で油脂や砂糖が大きく下げており、これは先月3月と変わりない。、特に砂糖はこの1年間で大変動を起こしていることが、上記の折れ線グラフでも把握できる。それだけ値動きが荒い証拠でもある。一方乳製品は前月・前年同月比共に大きく上昇しており、天候不順や生産縮小など、昨今問題視されているマイナス要因が積み重なった結果ともいえる。

リリースでは今月の動きについて「穀物指数は前月比では安めだが、前年同月比で見るとまだ高め。主にトウモロコシの収穫量の予想が堅調だったことから相場が下がったのが原因。米価格はジャポニカ米などが上昇したが、インディカ米が大きく下がったことで下落。小麦は上下双方の要因が発生し、差し引きでほとんど変わらず」「油脂指数は大豆、ヤシの豊作による低下が先導する形で下落。さらにエネルギー市場の低迷や、景気後退による油の消費量の低迷も値を押し下げる要因」「乳製品指数は大幅上昇。オセアニアにおける年初めから長期に渡る異常気象(乾燥)と生産調整が主な要因。ただしヨーロッパでは4月の温暖化を受け、平年並みの生産が可能となったため、今後の上昇は限定的との推測もある」「食肉指数は安定。豚肉と鶏肉が少々上昇、羊肉と牛肉がわずかに落ちた程度中」「砂糖指数は前月比でやや下落、前年比では大きく下落し、この1年での大規模な下落減少が起きており、今は底値に近付いているのが分かる。これは世界最大の輸出国ブラジルでの豊作予想、各国輸入量の減少が原因」などと説明されている。

食料価格は一般市民の日常生活に直結する。そのため価格の上昇は市民価格への負担増となる。また上昇に限らず急激な価格変動は、生産・販売側の経済事情をも大きく変動させる。食料品は概して年単位での生産となるため(二毛作位はあっても三毛作、四毛作はほとんど無い。もっと短いサイクルは卵や牛乳の酪農ぐらいだろうか。食肉も年単位での育成が求められる)、特に砂糖指数でみられる商品市場の大変動のように、数か月で大きな価格変動価格が起きると対応が仕切れずに、作り手の疲弊を招く。需給双方の立場から、食料品価格は安定していた方がありがたい。この数か月は昨年と比べて安価で、比較的安定した動きを見せているが、乳製品指数がやや大きく上振れしており、注意が必要となる。



乳牛食料価格の上昇要素は「新興国の成長に伴う需要の累乗的な拡大」「穀物を中心とした燃料(バイオエタノール)の材料への転用」「天候不順」「地力減退による不作」「商品先物市場への資金流入に伴う相場の過熱感」など、多種多様な項目が揃っている。そして価格下落要素は「景気後退による需要縮小」「豊作」以外に見つけにくい。「緑の革命」に代表される、科学技術の進歩による品種改良で増産は不可能ではないが、地力を下げるリスクが多分にある。例えば大規模な異常気象のように需給関係のバランスを大きく動かす事態が発生しない限り、中期的には相場動向による上下を経て、値は上がり続けることになる。かつて原油輸出国だった国の多くが、自国の発展と共に消費量が増え、輸入国に転じる動きと同じである。

昨今では毎月確認している【農林水産省の海外食料需給レポート】の2013年4月分によると、主要穀物品種のうち小麦・とうもろこし・大麦で生産量が前年同月比で減少(気象変動が主な理由。例えば小麦はロシアやオーストラリアにおける乾燥が原因)、米はやや増加(インドネシア、ベトナム、中国での増産)。一方消費量も価格高騰、とうもろこしはそれに加えてアメリカでのエタノール用向けなどの減少で需要が減退し、米以外は減少(米はインドと中国の需要増で逆行高)、期末在庫量見込みは生産量が消費量を下回ることから、4銘柄すべてで減少する見込み(前年度比でマイナス.8-1.5%)とのこと。

どこの国でも、どのような人種の人でも、いかなる生活様式でも、日々の生活の中では欠かせない食事のベースとなる穀物価格、嗜好品・贅沢品のかなめとなりやすい砂糖や油脂の価格は、社会情勢の動向に影響を与え、また大きな影響を受ける。各種食料品の価格は社会・経済状況を反映し、その動きは社会や経済の状況を推し量る一要素となる。それだけに食料価格を世界的な視点で眺める材料として役立つ、今件世界食料価格指数を注視し、その動向の変化を少しでも把握したいものだ。

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