災害廃棄物の処理は58.4%にまで達する…震災がれき処理動向(2013年3月31日時点)

2013/05/09 15:45

復興庁は2013年5月7日、「沿岸市町村の災害廃棄物処理の進捗状況」として、被災三県(岩手県・宮城県・福島県)における「震災がれき」(災害廃棄物等。災害廃棄物と津波堆積物)の2013年3月31日時点における進捗状況を発表した。それによると同時点で災害廃棄物の処理は58.4%、津波堆積物は31.6%まで進んでいることが分かった。今回は前月の記事を更新する形で、いくつかの切り口から処理の現状を確認していくことにする。

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文中・グラフ中にある「産業廃棄物」「津波堆積物」など用語の定義は一覧ページ【震災がれき処理の現状をグラフ化してみる(復興庁発表)】上ので解説済み。そちらを参照してほしい。

最初に算出するのは、対象物の仮置き場への搬入状況。災害廃棄物等は災害現場から最初に仮置き場に移され、そして各種処分が行われる。これは混乱を防ぎ、処理を円滑に行うため。まずは仮置き場への移動が必要なのだが、全体では災害廃棄物が91.2%・津波堆積物は77.3%に留まっている。

↑ 災害廃棄物等の仮置場への搬入状況(2013年3月31日時点)
↑ 災害廃棄物などの仮置場への搬入状況(2013年3月31日時点)

作業の進行と共に仮置き場に運ばれる量は増える一方だが、がれき推定量の再計測、または新たな廃棄物の発生で、結果として数字が上「下」することはある。しかしそれら誤差レベルのものを考慮しても、現時点で数%の災害廃棄物・約2割強の津波堆積物が現場に残されている計算になる。発表資料ではこの件について「浸水している農地において重機作業が困難」「損壊家屋等の解体量が多く、大規模な建物が含まれ解体に時間を要する」など、進捗状況の遅れの理由を説明している。2年が経過した現在でもこの文言を使わねばならないほど、処理すべき要件は大規模で困難を極めている。

続いて処分された災害廃棄物などの動向を記したグラフ。「処分」には対象の状況によって多種多様な手法がある。単純な埋め立て処分の他には再生燃料として用いたり、素材として売却処分・再利用が行われている(例えば【海水利用のコンクリート、大林組が開発・被災地のがれき処理にも有益】が好例)。「未処理」には「仮置場」に搬入されたのみで、まだ処分されていないものも含む。

↑ 沿岸市町村の災害廃棄物処理の進捗状況(被災三県・県ベース・2013年3月31日時点)(万トン)
↑ 沿岸市町村の災害廃棄物処理の進捗状況(被災三県・県ベース・2013年3月31日時点)(万トン)

↑ 沿岸市町村の津波堆積物処理の進捗状況(被災三県・県ベース・2013年3月31日時点)(万トン)
↑ 沿岸市町村の津波堆積物処理の進捗状況(被災三県・県ベース・2013年3月31日時点)(万トン)

災害廃棄物は91.2%・津波堆積物は77.3%という仮置き場への集約率と比べ、処理・処分済み具合が随分と低い(グラフ上でベタ塗されていない部分の面積が広い)。これは処理に時間がかかること、それぞれの被災県内のみでの処理では短時間の処理は能力的に不可能であること、それゆえに迅速な処理には県外での処理が欠かせないのだが、それには今なお「さまざまな、そして時として悪しき思惑を内包する」障害・妨害があり、期待がよせられない結果といえる。がれきの処理無くしては物理的、そして心理的な復興への足掛かりを得ることは難しい。そのためにも一刻も早い処理が望まれているのは言うまでもない。

全体的な処理の推移


復興庁では2011年12月時点から災害廃棄物等の搬送動向が記録公開されているが、処理・処分動向が掲載されたのは2012年2月14日分・津波堆積物は2012年7月31日分からとなっている。そこで記録が残っているものについて、処理状況を折れ線グラフ化したのが次の図。一番右、2013年3月31日時点は、震災から2年が経過し、3年目に突入していることを前提に確認してほしい。

↑ 沿岸市町村の災害廃棄物等処理の進捗状況(-2013年3月31日)
↑ 沿岸市町村の災害廃棄物等処理の進捗状況(-2013年3月31日)

直近の2013年3月31日時点で災害廃棄物の処理はようやく6割近く、一方で津波堆積物は3割強でしかない。

この値を基に単純計算をすると(震災直後の混乱期における処理不可能状況を半年とし、現在まで約19か月の処理期間が得られたと仮定する)、このペースでは災害廃棄物の処理が終了するのはあと約1年強、津波堆積物はあと約3年半かかることになる。国が直接処理を行う対策地域の設定なども一因だが、この数か月で処理スピードの多少の上昇もあり(折れ線グラフのカーブがやや急になっているのが分かるはずだ)、見積もり期限が少しずつだが短くなっているのは評価に値する。しかし一方で、災害廃棄物は6割足らず、津波堆積物は3割強しか処理されていない現実も再認識させられる(一部誤解をしている向きもあるのだが、「仮置き場」への搬入で「処理」が済んだわけではない)。

この数字はあくまでも単純計算・概算によるもの。時間の経過と共にノウハウの蓄積、処理に慣れが生じて処理速度の加速化が期待できる。また新たな技術の開発により、加速化されることもあるだろう。しかし回収・処理対象の作業難易度が上がり、さらに各種処理施設の寿命問題も生じるため(ゲームでは無いのでフリーメンテナンスなどあり得ない)、この試算もあながち的外れではないものと考えられる。

進行現状をまとめてみる


最後に現時点での処理状況を一目で把握できるよう、各県ごとの災害廃棄物・津波堆積物の処理済み・未処理トン数と、双方を合わせた総重量に対する処理進捗状況を計算したグラフを作成する。

↑ 沿岸市町村の災害廃棄物等処理の進捗状況(被災三県・県ベース・2013年3月31日時点)(万トン)
↑ 沿岸市町村の災害廃棄物等処理の進捗状況(被災三県・県ベース・2013年3月31日時点)(万トン)

↑ 沿岸市町村の災害廃棄物等処理の進捗状況(被災三県・県ベース・2013年3月31日時点)(対全体進捗比率)
↑ 沿岸市町村の災害廃棄物等処理の進捗状況(被災三県・県ベース・2013年3月31日時点)(対全体進捗比率)

「震災がれき」の処理進捗・現状がよく把握できるグラフに仕上がっている。現場や後方各面で作業をする関係者の労苦がしのばれると共に、2年が経過した現在でもなお、薄色(未処理)の部分が多い実態に悲しみを覚えると共にため息も出てきてしまう。そして多種多様な、一部は善意の、そして多分には悪しき障害・妨害によりこのような遅延が生じている現状を見て、表現しがたい想いがこみあげてくる人はどれ程いるか、決して少ない数ではあるまい。


■関連記事:
【震災がれき広域処理、賛成派88.3%・反対派8.9%】
【阪神・淡路大震災では「がれき」などの処理は県内だけで行われたのか】
【定期更新記事:震災がれき処理の現状をグラフ化してみる(復興庁発表)】

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