減少続く利用率…小中高校生のパソコン利用状況(最新)

2018/04/13 05:17

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2018-0411ビジネス用、あるいは技術研究用の汎用コンピューターでは無く、個人向けのものとして各企業から発売されているパーソナルコンピューター(パソコン)。インターネットの普及に伴い、インターネットへのアクセスツールとして欠かせない存在となり、また高性能化と廉価化を経てデスクトップパソコンからノートパソコンへ、その主流は移りつつある。それではそれらパソコンを、どれだけの子供達が利用しているのだろうか。内閣府が2018年3月30日付で詳細データ付きの確定報を発表した【平成29年度青少年のインターネット利用環境実態調査結果】の報告書から、「子供のパソコンの利用状況」を確認していくことにする。


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急速に減ったパソコン利用率…なのか?


技術的、価格的ハードルの高さから、携帯電話(従来型携帯電話、スマートフォン双方)と比べて保有・利用ハードルが高いものの、パソコン(デスクトップ、ノート双方を含む)もまた、デジタル社会においては、特にインターネットの窓口として欠かせないデジタル機器の一つ。そのパソコンをデスクトップ・ノートを問わず、そしてインターネットへの接続をしているか否かに関わらず、利用しているか否かを尋ねた結果が次のグラフ。単純に利用しているか否かを尋ねているため、そのパソコンの所有権を回答者自身が有しているかは問われていない。

↑ あなたはパソコンを利用しているか(場所を問わず、デスクトップ・ノートを問わず、インターネットへの接続を問わず)
↑ あなたはパソコンを利用しているか(場所を問わず、デスクトップ・ノートを問わず、インターネットへの接続を問わず)

昨今ではインターネットに初めてアクセスする端末が、パソコンからスマートフォンやタブレット型端末へと急速にシフトし、その便利さからその環境に慣れ親しみ、パソコンを敬遠する動きが若年層の間に広まり、いわゆる「パソコン離れ」「キーボード離れ」が起きているとの話もある。元々2010年から2013年にかけてその動きがあったものの、2014年では急激に加速化した感がある……

……ように見えるのだが。「青少年のインターネット利用環境実態調査」は経年調査ではあるが、昨今のインターネット界隈の急激な変化に対応すべく、2014年調査分からは調査内容を大幅に差し換えている。今件該当部分も、2013年までは具体的に「自分専用のパソコンを使っている」「家族と一緒に使っているパソコンを使っている」など使用例を挙げた上で使っているか否かを尋ねており、その中には漫画喫茶や学校での利用も明記されている。ところが2014年以降は単に「下記の機器を利用していますか」とだけ尋ねており、その中にパソコンが含まれているのみとなっている。

具体例が挙げられなかったことから、「使っている」との言葉の解釈を回答者が、2013年までは多分に「その場所で使ったことがある」と経験則的な意味でしていたのに対し、2014年以降では「日常茶飯事的に利用している」と読み解く事例が増え、結果として回答率が減った可能性がある。そのため、単純比較をして「1年間で半減、それ以下になった」とし、急激な減少傾向が生じたと断じるのは早計に過ぎる。

他方、先行記事の【小中高校生のネット機器利用状況】などでも触れているが、インターネットの窓口として小中高校生の間にスマートフォンなどが急速に浸透しているのも事実。減少傾向が生じていることに違いはあるまい。

直近分の2017年では前年2016年からさらに確実に減少。小中高ともにすでに3割を下回り、小学生では2割を割り込む状況となっている。回答者の「利用している」との認識の範ちゅうにおいて、高校生ですら1/4程度しかパソコンは利用されていない。つまり高校生の7割強はパソコンとはほぼ無縁の状態にある…現実には授業などで使うことがある程度…実情は認識しておく必要がある。

「パソコンを使っているがネットは使っていない」パターンはどれ位?


上記調査項目は「インターネットへの接続を問わず」との条件に基づいた、パソコンの利用状況。現在はパソコンの利用はインターネットの利用とほぼイコールであり、インターネットを利用しないパソコンの利用は、意図的にネットアクセスを禁じた上でのごく限られたソフトウェアの利用ぐらいしか想定できない。例えばお絵かき用のソフトや、特定のゲームソフト、教育用ソフトなどの専用機として使う事例である。

そこで単純にパソコンを利用しているか否かの利用率と、パソコンでインターネットを何らかの形で利用している利用率それぞれについて、学校種類・回答者の性別に区分した上で確認したのが次のグラフ。

↑ あなたはパソコンを利用しているか(場所を問わず、デスクトップ・ノートを問わず)(単純利用率とパソコンでインターネット利用率)(2017年)
↑ あなたはパソコンを利用しているか(場所を問わず、デスクトップ・ノートを問わず)(単純利用率とパソコンでインターネット利用率)(2017年)

例えば家庭用ゲーム機の場合、単純利用率とインターネットを利用した利用率とでは大きな差異が生じる。しかしパソコンの場合は大よそイコールネット利用となるため、大きな差は生じていない。今なお「パソコンを利用する」は「インターネットを利用する」と見てよさそうだ。

一方、その利用率そのものを確認すると、小学生では男子の方が上、中学生や高校生でほぼ同率となる。パソコンへの興味の持ち方や保護者の姿勢が反映しているのだろうか。

なお前年比を計算すると次の通りとなる。

↑ あなたはパソコンを利用しているか(場所を問わず、デスクトップ・ノートを問わず)(単純利用率とパソコンでインターネット利用率)(前年比、ppt)(2017年)
↑ あなたはパソコンを利用しているか(場所を問わず、デスクトップ・ノートを問わず)(単純利用率とパソコンでインターネット利用率)(前年比、ppt)(2017年)

単純に機種利用ベースでも、インターネット利用端末としても、小中高校生のパソコン離れが進んでいることが分かる。特に小学生と高校生の男子において著しい。スマートフォンの機能向上やアプリの充実が多分に影響していると考えられるが、将来の選択肢が確実に狭まることを考えると、憂慮すべき状況には違いない。



昨今では大学生、あるいは新社会人において、パソコンが使えない、キーボードの利用経験がほとんど無い生徒が少なからず見受けられるとの報告を耳にするようになった。インターネットへのアクセスツールとしては、携帯電話、特にスマートフォンは性能面でパソコンにそん色無い機能を実装し、しかも利用ハードルも低い(操作、コストの両面で)。スマートフォンの普及、幼少時からの利用は同時に、少なくとも子供時代におけるパソコンの必要性を減らしている。その結果としてパソコンやキーボードへの経験が浅い大学生や社会人が登場するパターンが増えつつあるのかもしれない。

あるいはこれらの人たちを「タッチパネル世代」とでも呼ぶようになるのだろうか。


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