原油は92.5%が中東から、LNGは66.0%がオーストラリアから…日本の化石エネルギー資源輸入先の推移(エネルギー白書)(最新)

2023/10/09 02:46

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2023-0922資源エネルギー庁は2023年6月6日付で「エネルギー白書2023」の詳細版データを公開した(【エネルギー白書一覧ページ】)。今回はこの白書の各種資料を基に、日本の化石エネルギー資源の輸入先(元)の推移を確認していくことにする。【日本は原発込みでも89%、抜きなら91%を依存…主要国のエネルギー輸入依存度(最新)】【石油漸減中、原発は最大で13.6%だったが今は3.2%のみ…日本の一次エネルギー供給推移(最新)】などと併せ読むと、さらに理解が深まるに違いない。

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中東依存度は9割強…石油


記事タイトルにも用いた「化石エネルギー」との用語だが、これは「化石燃料」とほぼ同意で、具体的には石油や石炭、天然ガスなどを意味する。昔の動植物が経年と圧力で化石に変化したことにより作られたものであり、全般的に、利用できる形へのエネルギー変換が容易なのが特徴。その分「埋蔵地域の偏在」「利用時の環境汚染問題」「容易に再生できないことによる枯渇問題」などの弱点も存在する。

また「非化石エネルギー」は「化石エネルギー」以外のエネルギー全般を意味し、具体的には原子力、水力、地熱、新エネルギーなどを指す。さらに容易に再生が可能か否かとの観点から、それぞれを「非再生可能エネルギー」「再生可能エネルギー」と呼ぶこともある。

さて、化石エネルギーの「原油」「石炭」「天然ガス」のうち、まずは「原油」について輸入先の推移をグラフ化したのが次の図。

↑ 日本の原油輸入量(万バレル/日)
↑ 日本の原油輸入量(万バレル/日)

↑ 日本の原油輸入量(万バレル/日)(直近5年分)
↑ 日本の原油輸入量(万バレル/日)(直近5年分)

↑ 日本の原油輸入・中東依存度
↑ 日本の原油輸入・中東依存度

意外なのは「総量が1970年代前半に一度ピークを迎え、その後大きく減少」そして「再び増加した後に、1990年代半ばを第二のピークとして少しずつ減少している」こと。これは化石エネルギー総量における原油への過度傾注によるリスク回避のため、使用種類の分散化(原油傾注度の減少)、使用先での効率化などが原因。そしてさらにいえば、1970年代以降の動きに関しては、直接的には第一次・第二次石油危機(オイルショック)に伴う産業構造の変化、リスク分散化の影響が大きい。

本来なら原油輸入先の分散化も望ましいのだが、最近では再び中東への傾注度が上昇している。同地域との友好関係強化の視点ではプラスだが、エネルギー戦略上のリスクを考えた上では「ひとつのカゴに卵をすべて盛る」形になり、望ましいとはいえない。かつての「石油ショック」のような事態に対応しにくくなるからである。

ぐんぐん増える輸入量…天然ガス


原油の輸入先分散がかなわない一方、石炭と天然ガスは分散化が積極的に推し進められている。まずは天然ガス(液化天然ガス、LNG(Liquefied Natural Gas))。

↑ 日本におけるLNGの供給国別輸入量(100万トン)
↑ 日本におけるLNGの供給国別輸入量(100万トン)

↑ 日本におけるLNGの供給国別輸入量(100万トン)(2021年度)
↑ 日本におけるLNGの供給国別輸入量(100万トン)(2021年度)

化石エネルギーで一番きれいな輸入先分散化、つまりリスク分散が進んでいるのが、この天然ガス。時代経過とともに増量していたのは後述する石炭と同じだが、ほとんどアジア(インドネシア、ブルネイがメイン)からの輸入に頼っていた時代から、中東・アジア・オセアニア・アフリカへと多地域化を果たしている。ある意味、一番進んだ活用法が展開されているのが天然ガスともいえる。

また2014年度だがこれまでの上昇傾向とは異なり、突出する形で増加を見せた2011年度以降の継続する流れとして、ややイレギュラー的な上昇を示している。これは言うまでもなく、東日本大震災に伴う原発停止で、火力発電所の稼働率上昇があり、その燃料としてLNGが使われたため。特にオーストラリアやカタール、オマーン、ナイジェリアからの輸入量が増加している。地域バランスはともかく、輸入量の状況としては好ましいものとは言い難い。他方、ここ数年で多少減少しているのは、原子力発電所の再稼動や再生可能エネルギーの普及などで需要が減少していることが原因。

2014年度からはパプアニューギニアからのLNGの輸入が始まり、2017年1月にはシェールガスを原料にしたLNGが初めてアメリカ合衆国から輸入されている。アラスカ以外の同国産LNGの輸入ははじめてであり、これもまた輸入先の分散に貢献している。なおここ数年輸入量が減少傾向にあるのは、主に電力発電用の消費が減ったことによるものと白書では説明している。

漸増から横ばい、オーストラリアとインドネシアに傾注…石炭


最後に石炭。これは先行記事【日本の石炭輸入・消費事情(エネルギー白書)(最新)】の内容を一部拝借している。

↑ 日本国内の石炭・輸入石炭供給量(万トン)(再録)
↑ 日本国内の石炭・輸入石炭供給量(万トン)(再録)

↑ 日本の石炭輸入先(主要供給国別)(2010年度以降)
↑ 日本の石炭輸入先(主要供給国別)(2010年度以降)

今世紀初頭以降の横ばい傾向に至るまで、総量は増加の傾向にあり、先の原油とは状況が異なることが確認できる。また輸入先は元々インドネシアとオーストラリアでほとんどを占めていたが、昨今ではインドネシアからの輸入が減り(直近年では大きく増えたが)、ロシアやアメリカ合衆国などと分散化が進んでいる。なお2020年度で大きく総量が減ったのは、新型コロナウイルスの流行による経済の低迷が原因である。



化石エネルギーの短所(枯渇可能性、「石油危機」に代表されるカントリーリスク、地球環境負荷など)を考えると、「非化石エネルギー」が多用できれば、それに越したことは無い。しかし水力は量産が難しく、地熱は日本の地の利を活かせるものの開発はこれから(そして技術面、安定性や環境問題も大きい)、その他の新エネルギーなどもそれぞれ問題が山積し(例えば安定性やコストパフォーマンスの問題)、現行の化石エネルギーと代替できるものでは無い。そもそも容易に代替できる性質のものであれば、とうの昔に大規模な普及がなされていなければならない。

しばらくの間は「天然ガス」の事例に見られるような輸入先の分散を推し進めつつ、化石エネルギーに頼らざるを得ないのが現状。そのためには巧みな外交戦略と海運の安全性を維持拡大することも、連動する形で求められよう。


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