ギリシャ、公務員の大規模削減が一因か…EU失業率動向(2013年3月分)

2013/05/01 14:00

ヨーロッパ諸国における経済状態の動向を推し量る指針の一つとして注目されているのが「若年層の高失業率」。この値が高いほど、いわゆる「先進国病」の症状が重いと言われている。そこで当サイトでは【EU統計局(Eurostat)】で毎月定期的に発表している、失業率関連の統計データを元に毎月、最新情報の確認と情勢の分析を行っている。今回はその2013年4月30日発表・2013年3月分の値について各種グラフを更新し、状況の把握を試みることにした。ギリシャはいよいよ6割に手が届く領域となってしまった(該当リリース:【Unemployment statistics】)。

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文中・グラフ中にあるEA17やEU27については一覧ページ【ヨーロッパ諸国の失業率動向(EU統計局発表)】上の解説部分で確認を。

ILO基準における2013年3月時点の発表データによる失業率は次の通り。EU27か国では11.0%を記録している。なおこのグラフもあわせ今記事では、直近2か月分のデータが未掲載(調査途中)の場合、原則として掲載時で公開されている最新月分のデータを代用している。

↑ 2013年3月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)
↑ 2013年3月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)

今回月はトップのギリシャとそれに続くスペインの差が0.5%ポイントに開いてしまった。両国とも前回月から失業率そのものは悪化しているが、ギリシャの労働市場の悪化は加速化していることが想像できる。前回両国間の差について「0.1%ポイントは誤差の範ちゅう」と言及したが、これだけ差が開くとそのような表現も難しい。また全体的には債務問題でしばしば報道に登る国が上位に位置しており(例えばポルトガルやキプロスなど)、失業問題と経済・債務問題が完全な正比例・連動関係とまでは言わないものの、浅からぬ関係にあることが分かる。

今回も前回同様に、該当月の前月(2013年2月)の値との差異を計算し、グラフ化を行う。もちろん過去のデータも修正がなされていれば、逐次最新のものに差し替えを行っている。また直近分のリリース上に掲載が無いデータは、詳細のデータベースページ【Data Explorer】を参照した上で追加し、計算する(昨今では値の把握・取得のしやすさもあり、直接データベースから値を抽出している場合が多い)。

↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2013年2月→2013年3月)(またはデータ最新一か月前→最新)
↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2013年2月→2013年3月)(またはデータ最新一か月前→最新)

国内人口の少ない国では統計値がぶれやすく、また国によっては誤差が生じやすいこともあるため、プラスマイナス0.5%ポイント以内は誤差と見て、動きは無視しても問題ない(以前は0.3%ポイントだったが、今回から0.5%ポイントに修正した)。今回月ではギリシャの悪化が確認できる。ギリシャは財政状態の改善を目指して緊縮化を推し進めており、先日も【ギリシャ、財政再建へ公務員削減 14年末までに1万5千人(CNN)】などが伝えているように、大規模な公務員削減を決定した。当然のことながらこれに対し不満や反発の声が高まっている。


↑ ギリシャの公務員削減に抗議するデモを伝える報道映像。
↑ ギリシャの公務員削減に抗議するデモを伝える報道映像。【直接リンクはこちら】

悪化が止まらない若年層失業率


冒頭で触れている通り、昨今の失業問題の中でも特に問題視されているのが、若年層の失業率。直近の2013年3月時点では25歳未満の失業率はEA17か国で24.0%・EU27か国でも23.5%を記録しており、5人に1人以上が失業状態にある。中でもギリシャの59.1%(2013年1月)、スペインの55.9%を筆頭にポルトガルやイタリア、スロバキア、先日支援と銀行問題で注目が集まったキプロスなど、経済的に弱い国や労働市場での問題点を抱える国、急激に経済が冷え込んだ国の若年層失業率の高さが目立つ。

↑ 2013年3月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(3月データが無い国は直近分)
↑ 2013年3月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(3月データが無い国は直近分)

↑ 2013年3月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(3月データが無い国は直近分)
↑ 2013年3月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(3月データが無い国は直近分)

前述のようにプラスマイナス0.5%ポイント以内は誤差と判断すると、ギリシャ、イタリア、ハンガリーの悪化、オーストリアの改善が確認できる。ギリシャは前述の通り財政緊縮による労働市場の悪化、イタリアは選挙に伴う政局の不安定化が経済に不安定感をもたらし、それが雇用にもマイナスに影響したものと考えられる。もっともイタリアでは先日レッタ大連立内閣が正式に発足しており、これを市場も評価する動きを見せているため、ひとまずは安心できそうだ。


↑ イタリアの連立内閣成立を伝える報道映像(公式)。
↑ イタリアの連立内閣成立を伝える報道映像(公式)。【直接リンクはこちら】



失業今件記事のEU諸国に代表されるように、先進諸国において若年層の失業率が高いのは、産業構造の変化、そして若年層が手掛けることが多い「技術が未習得、あるいは経験不足な状態でも可能な、比較的容易な作業」が機械化され必要な人員数が減ったこと、そして為替レート上で相対的に賃金の安い新興国に、それらの作業が割り振られ、国内で労働需要が減少しているのが主要因。言い換えれば分業化が国境を越えて行われた故の弊害ともいえる。

そして債務問題で国の財政の悪化による破たんを防ぐため、各国で緊縮財政が取られていることも悪化を後押しする大きな要素となる。緊縮財政は国内産業を委縮させ、経済は低迷。労働市場も縮み上がる。その上、ヨーロッパ諸国は高齢化により就労年齢が上昇し、労働市場の上で「高齢者が就業場所に居座り、席が空か」ず、若年層が割を食う事態に陥っている。その上既存労働者の権益を保護する動きが強まっており、これが結果的に若年層の雇用窓口をさらに狭めている。

経済は多項目が連動するのが常であり、単に雇用状況のみを改善しようとしても破綻する。社会福祉と雇用市場と経済すう勢、そして金融政策はお互いが密接に連動する。各国は個々の項目のみを見据えるのではなく、戦略的な観点に立ち、相互作用を意識しながら個々の政策を打ち出していかねばならない。……要は経済が活性化されれば、大抵の問題は解決するものである。


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【定期更新記事:ヨーロッパ諸国の失業率動向(EU統計局発表)】(まとめ一覧)

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