衣料品は15.1%、住関品18.1%、食料品は66.2%…スーパーやデパートの主要商品構成比の移り変わり(最新)

2023/07/09 02:42

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2023-0701先行記事の【百貨店やスーパーの分野別売上高推移】で百貨店やスーパーの商品分野別売上高の推移を、前年比・前年同月比推移の視点から精査し、これまでの動向と現状の把握を行った。今回は主要項目別に区分した商品分野別の、売上全体に占める売上シェアの推移、そして額面そのものの動きを算出し、スーパーなどにおける商品の取り扱い・売れ筋の、時代による変化を、経済産業省が逐次公開している統括データを基に見ていくことにする。

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大きく変わる商品の販売シェア


データの取得元は先行記事と同じく【経済産業省の商業動態統計調査】【統計表一覧】。百貨店とスーパーを合計したもの、そしてそれぞれ別個の調査結果の値が記載されている。また「百貨店」と「デパート」の違いも同記事で解説した通り。要は所属協会の違いでしか無く、中身はほぼ同じ。現在年次ベースでは2021年分までのものが収録されている。

デパート一方主要品目の区分だが、当サイトが公表値の定点観測を行っている(【定期更新記事:チェーンストア】)日本チェーンストア協会のものと、今回精査の対象となる商業動態統計調査とでは微妙な食い違いが確認できる。区分構成は【利用上の注意】にあるが、例えばチェーンストア協会における「サービス」「その他」に当たる区分が、商業動態統計調査では見当たらない。また、具体的商品で見ると「かばん」は協会側では「住関品」扱いだが、商業動態統計調査では「身の回り品」として「衣料品」扱いされている。

よって今件記事は主要テーマ「スーパー・デパートにおける、食料品と衣料品の売上ウェイトを見るためのもの」とし、毎月分析記事を掲載している日本チェーンストア協会発表による記事区分とは似て非なるもので同一視はせずに、傾向を推し量るものと見なしてほしい。なお今記事では既存店ベースではなく全店舗ベースで販売額を抽出し、その値を用いて独自算出の上、各種値を導いている。各店舗のすう勢、店舗単位での傾向ではなく、業界全体としての動向を認識する次第である。

肝心の主要品目別売上構成比だが、最新データを反映した結果、次のようなグラフになった。かつては衣料品の方がウェイトは大きかったが、「デパ地下」といった言葉が露出しはじめた20世紀末から21世紀初頭にかけて、食料品が伸び、衣料品・食料品間でシェアにおける逆転現象が起きている。

↑ 百貨店・スーパーにおける主要品目別売上額構成比
↑ 百貨店・スーパーにおける主要品目別売上額構成比

衣料品と食品とでは「商品単価」が大いに異なる。大根一本とスーツ一着が同じなどありえない。そして商品の回転率も別物。売り場によって明確な区分がされているとはいえ、百貨店やスーパーのビジネススタイルや集客状況が少しずつ変化するに連れ、商品の売上高構成比も様変わりしている実情が分かる。あるいは逆で、売上(≒消費者の需要)の伸び縮みの影響を受け、デパートそのものが変化をしている部分もあるだろう。

デパートは少しずつ「衣料品のデパート」から「衣料品も売る、食品のデパート」のスタイルに移り変わりつつあると見た方が間違いがない。2009年以降は食料品だけで売上の過半数に達していることから、「デパ地下」だけでデパート全体の半分以上の売上をまかなっていることになる(食品売り場が地下に無いデパートもあるが)。

ちなみに直近の2022年では、衣料品15.1%(前年比プラス1.1%ポイント)、食料品66.2%(前年比マイナス1.5%ポイント)、住関品など18.1%(前年比マイナス0.3%ポイント)。新型コロナウイルスの流行により衣料品や住関品を購入する目的での来店機会そのものが減じたことに加え、内食特需による食料品への需要急増が生じた2020-2021年の反動があったようだ。とはいえ、「食品デパート化」の色合いが強い状態なことに変わりはない。

食料品のシェア、および後述する金額は大いに伸長中。消費者の利用性向、そしてライフスタイルに大きな変化(主に中食文化の普及浸透)が生じていることをうかがわせる動きが確認できる。新型コロナウイルスの流行による社会様式の変化は、それを加速させたまでの話でしかない。

具体的な売上額面を確認


よい機会でもあるので、全売上高に対する比率だけでなく、単純に売上高の積み上げグラフを作成する。これを見ると「衣料品と食料品の売上高構成比順位が入れ替わる」タイミングで、総売上高が天井を打ち、その後は漸減している状況が分かる。なお直近の10年間分を抽出したグラフも別途作成した。

↑ 百貨店・スーパーにおける主要品目別売上額(兆円)
↑ 百貨店・スーパーにおける主要品目別売上額(兆円)

↑ 百貨店・スーパーにおける主要品目別売上額(兆円)(直近10年)
↑ 百貨店・スーパーにおける主要品目別売上額(兆円)(直近10年)

やはり売上高の面から見ても、1990年後半がデパートなどのターニングポイントと考えるのが妥当。今世紀に入ってから、特にこの数年の不景気の中でデパートなどの経営悪化が取り沙汰されているが、問題そのものは10年前ほど前から、あるいはさらにさかのぼり、衣料品の構成比が減少を見始めた1990年前後(20年以上前)からのものであったことが分かる。

またシェア動向を示すグラフでも明らかだが、すでにデパートは食料品が商品のメイン。衣料品と住関品などを合わせても、まだ食料品には届かない実態が、最新値となる2022年の売上状況で改めて確認できる。その直近の2022年を含む10年間の推移でも、衣料品の売上は引き続き減少し、食料品は有意に増加している。住関品はまだふらつき気味な動きのように見えたが、2015年に大きく落ち、そこからわずかずつ回復の動きを見せる程度。さらに2020年以降においては新型コロナウイルスの流行が各品目に大きな影響を与えたことがよく分かる形となっている。特に衣料品の落ち込み、食料品の伸長が著しい。衣料品と住関品などは2021年以降少しずつ回復しているが、それでも事実上2020年の落ち込みを穴埋めできてはいない。

昨今の売上不調が「デパート」としての店舗スタイル上の問題なのか、それとも単に周辺環境の変化に応じた改善の模索と実行が足りないのか。このデータだけでは判断は難しい。無論、何もせずに手をこまねいているだけでは、状況の改善を期待できないことは間違いない。


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