販売ビデオを支えるコア層・ビデオソフトの販売実態をグラフ化してみる(最新)

2018/05/30 05:07

2018-0528エンタメ系市場は特に特定対象へのロイヤリティ(忠誠心)が高い一部のコアな顧客によって勢いづけられ、支えられている事例が多い。コア層が作品を盛り上げ、口コミをすることで中年層やライトユーザーにまで火がつき、大いに市場が拡大する事例も少なくない。今回はそのような市場を支える購入性向の高いコア層とビデオソフトの販売実態について、日本映像ソフト協会が2018年5月17日付で公開した白書【映像ソフト市場規模及びユーザー動向調査】の最新版などから、確認していくことにする。

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今調査に関する先行記事で解説している通り、映像ソフトの市場規模は2006年-2007年にやや変わった動きが見られるものの、全般的にはセル(販売)・レンタル(貸出)ともに縮小傾向にある。2013年の公開値から有料動画配信市場を追加したため合計値は底上げされているが、ビデオソフトに限っても合計値は前年から減少している。

↑ 映像ソフト市場規模(億円)(再録)
↑ 映像ソフト市場規模(億円)(再録)

レンタル市場と比べて減少率が大人しく見えるセル市場。しかしその市場でも小さからぬ動きが起きている。それが今回スポットライトを当てる「ヘビーユーザー」問題。

今報告書では年間3万円以上のビデオソフトを購入する人を「ヘビーユーザー」と定義している。業界視点で見れば「お得意様」だが、ビデオソフト購入者全体に占める「ヘビーユーザー」の比率は減少傾向にあった。この数年では再びその割合は増加しつつあるが、ようやく2011年の水準に戻した程度。

↑ ヘビーユーザー(年間3万円以上購入者)の全購入者比率
↑ ヘビーユーザー(年間3万円以上購入者)の全購入者比率

2007-2008年は協会側が比較対象可能な設問で調査を行わず、データが空白のため、グラフ化も不可能。その部分の動向精査はかなわないが、2006年に増加しているものの、それ以外は一様にヘビーユーザーは減少する傾向にあった。2012年に底打ち、それ以降は反転の気配があるが、0.1-0.2%ポイント/年程度の増加でしかない。直近年では0.3%ポイントの増加となったが、これでもまだ2011年の水準に戻した程度。

そのヘビーユーザーが購入するビデオソフトの金額(概算)は次の通り。例えば2005年は77.7%とあるので、ビデオソフト販売総額の8割近くは、ヘビーユーザーの購入で賄われていた計算になる。この値は人数比率と同じように減るのでは無く、一時的な盛り返しを見せつつ減少していた。2010年にやや跳ねた値を見せたが、2009年以降は大よそ5割台での安定した動きを示している。

↑ ヘビーユーザー購入総額の「全ユーザーの購入総額」に占める割合
↑ ヘビーユーザー購入総額の「全ユーザーの購入総額」に占める割合

直近の2017年なら、ビデオソフト購入者の3.2%の人数で、5割強を占める額を購入している状況になる。2017年における購入経験者のほとんどは1枚、多くても2枚程度の購入で、ほんの一部の人が5枚、10枚と買っている計算になる。もっとも古い記録のある2005年と比べると、ヘビーユーザーひとりひとりの購入ぶりがますますハードになっているのが理解できよう。概算すると2005年は6.0%の人数で3/4強を占める額の購入になる…が、これでは比較がしにくい。

そこで、その「ヘビー化」をもう少し分かりやすくしたのが次のグラフ。一つ目は上記2グラフを一つにまとめたもの、もう一つは「ヘビーユーザーの、購入者全体の人数比1%分で、購入額全体比の何%を購入しているか」を算出したもの。

↑ ヘビーユーザー比率
↑ ヘビーユーザー比率

↑ ヘビーユーザーの全体比人数1%分で全体比購入額何%を購入しているか
↑ ヘビーユーザーの全体比人数1%分で全体比購入額何%を購入しているか

購入者全体に占めるヘビーユーザー「数」の比率は昔と比べれば減っているが、ヘビーユーザー全体の購入額の、全体購入額に対する比率の減少度合いはユーザー数ほどでは無い。結果としてヘビーユーザーはより一層ヘビーな購入傾向を示すようになりつつあった。まさに先鋭化という感はある。ただし2013年をピークに、ヘビーユーザー率は再び増加をしていることもあり、ヘビーユーザーにおける購入額の全体比も少しずつ減少の動きに転じている。とはいえ、直近の2017年ではヘビーユーザー比率同様2011年の水準となっている。

ともあれこの8年ぐらいの間は、人数比率では全購入者の2-3%でしかないヘビーユーザーが、全購入額の2割前後を購入している計算になる。



レンタルショップ熱烈なコア層によって市場が支えられる状況は、一概に悪い話では無い。そのコアな人たちが口コミの核となり、人気が一気に世間へと広まるかもしれない。情報発信力が高い人たちならなおさら。インターネットが普及し、コア層による広範囲な口コミが期待できる現代ならば、その可能性はさらに高くなる。

しかしコアユーザーが多数を占める市場は得てして、縮小再生産を繰り返してしまう傾向がある。そしてそのような状況下では、コアユーザー自身も減少してしまいがち。現実問題として2009年以降、コアユーザーの息切れ、コア的な購入から距離を置く動き(具体的には購入者全体に占めるコアユーザー層比率の減少)が起きていた。それゆえに、2012-2013年を底とした復調ぶりは幸いな動きではある。

ビデオソフト市場、特にセル市場においては、今後いかにコア層、ヘビーユーザーの気持ちをとらえ、同時にライトユーザー(世間一般の、ごく普通のユーザー)の数を増やし、裾を広げていくかが必要になる。ライトユーザーの数を増やすことができれば、その中から新たなコア層も生まれ得る。どちらか一方だけに注力しても、明るい未来は望めない。

またメディア環境が大きく変化する中で、その変化に対応したビジネススタイルも求められよう。ソーシャルメディアによる作品の世界観の浸透やファンとのつながり、デジタルコンテンツの提供、試聴可能な動画の配信でより多くのファンへの誘引、他ジャンルとのコラボレーションなど、可能なことはいくらでもあるはずだ。


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