映像ソフト市場の推移をグラフ化してみる(2016年)(最新)

2016/05/16 10:32

インターネットメディアの普及と回線の高速化、映像技術の進歩に配信サービスの加速的充実などから、昨今では物理メディアにおけるエンタメ部門のセールスが思わしくないとの話を多方面で見聞きする。音楽業界、CD・DVD部門がその最たるものだが、映像ソフト(ビデオソフト、DVDやBD(ブルーレイディスク、以下同)、さらには有料動画)でも状況に大きな変わりはない。今回は日本映像ソフト協会が2016年4月27日付で発表した、日本の映像ソフト協会そのものやソフト関連の実地調査結果を絡めた白書【映像ソフト市場規模及びユーザー動向調査】の最新版「概要」をもとに、日本の「映像ソフト市場」の推移を確認していくことにする。

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減退続くが新要素が2013年から追加され…映像ソフトの市場動向


まずは映像ビデオ市場の市場規模。「セル」は販売、「レンタル」は貸出を意味する。収録されている過去のデータ(2005年以降)を見る限り、2006年-2007年にやや変わった動き(セル市場の増大)が見られるものの、全般的にはセル・レンタル共に市場規模は縮小する傾向にある。

↑ 映像ソフト市場規模推移(億円)(-2015年)
↑ 映像ソフト市場規模推移(億円)(-2015年)

特に2008年以降の急落ぶりは、【音楽CDなどの売れ行きと有料音楽配信の売上をグラフ化してみる】で示した音楽CDの売れ行きとおおよそ似ており、非常に興味深い。メディア環境の変質は音楽メディアと映像メディア双方に、同時期に起きたことが分かる。見方を変えればメディアそのものの変質が状況変化の主要因であり、コンテンツの種類はあまり関係が無い。

↑ 音楽ソフト・有料音楽配信の売上推移(2005年-2015年)(再録)
↑ 音楽ソフト・有料音楽配信の売上推移(2005年-2015年)(再録)

エンタメ系メディアは直近においては、2007年から2008年が大きなターニングポイントと見て問題はなさそう。コンテンツの質や方向性では無く、鑑賞媒体・ツールなどの周辺環境変化が、市場に大きな影響を与えていることになる。

2013年分からは緑色の部分、有料動画配信サービスの市場推計値が追加されている。これは2012年までがゼロで推移していたのでは無く、単に今件調査結果で対象としていなかったまでの話。具体的には「定額見放題サービス」「都度課金サービス」「有料動画購入サービス」などが該当する。さらに2015年からはこれまで計上されていなかったWOWOWやスカパー!のような有料放送局による自社放送番組の再配信、ポータルサイトの有料付随サービス、動画配信サービスの有料プレミアムなども該当するものとして数字に含まれている。2015年の有料動画配信サービス市場における前年からの躍進ぶりは、一部にこの定義変更によるところがある。

これらの動画配信が「映像ビデオ」であるにしても「映像ビデオソフト」とカウントして良いのか否か、賛否両論が生じ得る。しかし音楽市場でも実質的に有料音楽配信の売上をカウントしていること、コンテンツの販売との視点ではメディアが異なるだけの話と考えれば、市場規模に含めても構わない感はある(もっとも音楽の有料配信はデータが購入者側に残る一方、映像の有料動画配信サービスは電子書籍同様に、多分に「期間限定で視聴できる権利」の購入であることを考えれば、どちらかに分類する必要性が生じた場合、「セル市場」ではなく「レンタル市場」のカテゴリに含めるべきと考えられる)。

また有料動画配信市場は2013年分からの計上だが、少なくとも過去3年はそれなりの規模で市場が存在している。あくまでも推定でしかないが、2012年以前の数年間は、セル市場+レンタル市場+有料動画配信市場の合計額、つまり広義の意味での映像ビデオ市場は、大きな変化が無かった可能性が高い。他方物理メディア(DVD&BD)市場規模に限れば、縮小の動きを示しているに違いは無い(2015年は4175億円、前年比マイナス4.9%)。

セルとレンタルの規模動向


今資料ではレンタル・セルから成る提供方式、そしてDVD・BDで構成されるフォーマット方式別にデータが収録されている。過去のデータをも抽出し、都合7年間に関して金額、そしてそれぞれのDVD・BD比率を示したのが次のグラフ。前年発表された2014年分では非公開だった該当部分の数字も、今回公開された概要書で把握できたので、2009年以降の動向が断絶なく精査できる。

↑ セル・レンタルのフォーマット別市場規模(億円、2009-2015年)
↑ セル・レンタルのフォーマット別市場規模(億円、2009-2015年)

↑ セル・レンタルのフォーマット別市場規模(比率、2009-2015年)
↑ セル・レンタルのフォーマット別市場規模(比率、2009-2015年)

物理メディアにおける市場規模が減退しているのは一つ目のグラフで確認できるが、2009年-2013年では2010年のレンタル市場激減が大きなインパクトとなったのが分かる。また、メディアフォーマットの上ではBD化が逐次進んでいるものの、2012年ではレンタル方面でBDが大きく落ち込み、これがレンタル市場そのものの下落を拡大させてしまっている。

この傾向について2012年分の報告書では単に「伸び悩んでいる様子がみてとれる」としかなく、具体的な理由は説明されていない。BD機器そのものは普及率を高めており、やや奇妙な話ではあり、その原因は今なお判明していない。単にソフトの不作だったのかもしれない。エンタメ部門は映像ソフト市場に限らず、展開された作品の人気、品質で大きな市場変化が生じ得る。映画「アナと雪の女王」が大ヒットし、2014年の日本の映画界が賑わいを見せたのは記憶に新しい。

映像ソフトでは「ビデオ市場は大量購入をする少数の『ヘビーユーザー』によって支えられている部分が大きい」との実態がある。これは各種調査、そして2013年分の報告書でも明らかにされている。ヘビーユーザーだからこそ、画質にはこだわりを持つためにBDを積極購入する。それゆえに、セル市場ではBDの比率が急上昇している。2015年では5割を超えている、つまりBDがDVD以上に売れている計算になる。一方レンタルはさほどこだわりを持たないため、画質を気にしない視聴者が多く、BDの浸透率は今一つ、と考えればある程度は納得がいく。「レンタルで済ませてしまおうか」ぐらいの熱中度のみの人は、画質にもさほどこだわりを見せない次第である。

有料動画配信市場には概念的にレンタル市場と見なすこともできる。この仮説に基づけば、直近2015年ではセル市場は2234億円なのに対し、レンタル市場は1941+961=2902億円となり、セル市場をはるかに凌駕する。



右肩下がりセル市場はヘビーユーザーへの偏り、レンタル市場は他のメディアやエンタメとの競争力の(相対的)低下。映像ソフト市場のうち物理メディアによるビデオソフト市場はセルとレンタルでそれぞれ別の問題を抱えながら、総計で縮小の一途をたどっている。そしてそのうちの少なからずは、動画配信に利用者がシフトしたものと考えられるが、その際に市場に支払われる対価が減退し、市場全体も縮小している感がある。2015年が大きく躍進したのは上記説明の通り、有料動画配信市場の定義を大きく変えたのが主要因。

音楽業界では物理媒体の「金額的な」市場縮小分をデジタル媒体の市場拡大分で補いきれず、全体としては縮小する傾向にあるが(2015年は復調を見せたが)、それと似たような雰囲気を覚えさせられる。

有料動画配信「市場」は直近の2015年時点では961億円。そのうちのどれほどが「元々レンタルもセルも目に留めていなかった人が利用した、新規の掘り起こし的な需要」なのか、「セル市場やレンタル市場からのシフト組」なのかは判断する材料が無いが、後者の場合は対応する人数が同じでも、市場に投下される金額は随分と縮小する。

次年以降最新の基準に基づき、金額面での市場規模がいかなる変化を見せていくのか。大いに注目したいところではある。


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