自転車交通事故の相手の推移(最新)

2023/03/16 02:50

このエントリーをはてなブックマークに追加
2023-0305エコブームやガソリン代の家計への負担増、健康志向の高まりや災害発生時のリスク回避など、多様な理由で自転車への注目が高まる中、その自転車を起因とした事故についても論議の対象となることが多くなった。以前解説記事として掲載した【年齢階層別・自転車乗車中の交通事故死者数推移(最新)】は死亡事故のみを対象としたものだが、今回はそれ以外も含めた事故全体の動向(当然、届け出があったものに限る)を検証していくことにする(【警察庁リリース発表ページ:令和4年における交通事故の発生状況などについて】)。

スポンサードリンク


自転車事故は漸減続くが


次以降に示すのは当局に報告された自転車乗用者による交通事故の発生件数を多方面から眺めたもの。グラフに記載されている「第1当事者」「第2当事者」とは、先の「年齢階層別・自転車乗車中の交通事故死者数推移(最新)」でも解説している通り、「第1当事者…事故車両で過失の重い側、同じ程度ならけがの程度が軽い側」「第2当事者…第1当事者以外」(双方とも「最初に」事故に関与した車両)を意味する。

例えば自転車の整備不良によるトラブルで横転したり、不注意で穴にはまって転倒した場合、自転車の運転手がそのまま第1当事者となり、第2当事者は存在しない。また正しい場所を走行していた自転車に自動車が不注意で接触し、事故が発生した場合、自動車側が第1当事者となり、自転車は第2当事者となる。自転車同士が双方とも前方不注意・一時停止をせずに出合い頭に衝突し、片方がかすり傷で済んだが、片方が打ちどころを悪くして骨折した場合、けがの程度の軽い「かすり傷」側が第1当事者になる。イメージ的には事故における加害側ポジション。

まずは経年の事故件数推移。対自動車件数が多く他の項目の値があまりにも小さくてサイズ的につぶれがちとなるため、全体のグラフだけではなく、対自動車項目をのぞいたグラフを併記する。なお今件のグラフ作成にあたり、直近の2021年以前のものでも、修正されているのが確認された部分は逐次最新の値に差し替えている。

↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数(相手の当事者別、件)
↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数(相手の当事者別、件)

↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数(除く自動車、相手の当事者別、件)
↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数(除く自動車、相手の当事者別、件)

↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数(相手の当事者別、件)(2022年)
↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数(相手の当事者別、件)(2022年)

自転車事故では対自動車の事故が最多であることに違いはないが、その数は2004年をピークに減少傾向にある。また、二輪車(バイク)や自転車相互、自転車単独の事故も減少中。一方で対歩行者事故数(緑色部分)の減り方が鈍い、むしろ増加の動きすらあるのが目にとまる。

ピーク時の年間総発生件数は18万8338件。直近の2022年はそこから11万8353件少ない6万9985件にとまっている。割合として半減以下。20年ほどの間に随分と減少したことになる。各方面の努力のたまものに他ならない。特に2020年での大幅な減少は新型コロナウイルスの流行で外出行動が減り、自転車の利用機会そのものが減ったのが影響していると思われる。2021年以降、毎年前年比増なのは、その反動以上のものではない。

他方ここ数年では対自動車を除いたグラフを見れば分かる通り、対自動車以外の合計では減少傾向が止まり、横ばい、さらには微増への動きが見受けられる。対歩行者、自転車相互、自転車単独などが増加しているのが原因。自転車を運転する人の責による事故が増えていることが想像できる。

全事故に対する各事故相手のシェア推移


これを各年の総自転車乗用車による事故発生件数に占める、各項目の件数比率を算出した上でグラフにしたのが次の図。やはり対自動車件数が最多となり、他の項目を圧迫してしまうため、対自動車件数比率をのぞいたグラフも併記している(後者のグラフは当然、合計が100%にはならない)

↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数(相手の当事者別、全体比)
↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数(相手の当事者別、全体比)

↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数(除く自動車、相手の当事者別、全体比)
↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数(除く自動車、相手の当事者別、全体比)

事故全体に占める比率でも、一部で問題視されている対バイク(二輪車)事故は減少している。一方で対自動車が2007-2008年を底に再び増加。そして対歩行者、自転車相互の比率が継続的に増加していたのが気になるところ。もっともここ数年では対自動車の比率が大きく落ちる形となったが。

対歩行者は事故発生件数こそ減少していたものの、全体の減少度合いと比べて緩やかだったために、比率は増加している。ところが件数においても2016年を底に増加に転じており、注意を要する動きとなっている。

↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数(対歩行者、件)
↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数(対歩行者、件)

健康志向などにより自転車の利用者数が増加する中で、歩道走行中のマナーについて問題提起が行われているのは、以前【警察庁、自転車の歩道通行への対応見直しを通知】などでお伝えした通り。昨今では自転車専用・優先レーンの増設も多々見受けられるが、それでも環境整備の進捗は社会全体の状況変化に追い付いていない感は強い。自転車も歩行者もともに、くれぐれも注意してほしいものだ。


■関連記事:
【自転車と車道走行と法令厳守化と】
【自転車に乗る際にはヘルメットをつけましょう】
【「並木橋通りアオバ自転車店」の宮尾岳先生が漢な件について】
【歩きは1キロ、自転車は3キロ……普段の生活で行ける距離】
【怖い体験をした自転車の危険行為、「歩道猛スピード」「並進」「携帯電話利用」】

スポンサードリンク


関連記事


このエントリーをはてなブックマークに追加
▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2024 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー|Twitter|FacebookPage|Mail|RSS