年齢層別の交通事故死者数をグラフ化してみる(2016年)(最新)

2016/04/07 05:06

警察庁は2016年3月3日付で、2015年中の交通事故の状況を精査した報告書となる「平成27年中の交通死亡事故の特徴及び道路交通法違反取締り状況について」を公開した(【警察庁リリース発表ページ】。ただし該当リリースはe-stat上のみ)。今回はこの公開値を基に、世代別の交通事故による死者数を複数の切り口でグラフ化した上で、状況の確認と精査をしていくことにする。高齢化の進行と共に増加を示すと言われている、高齢者の交通事故による犠牲者の動向に、特に注意を払いたい。

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全体では漸減する事故死亡者、増えるシニア層


まずは積み上げ式と個々の世代の動きを折れ線グラフにした、年齢階層別事故死亡者の推移。これは「事故発生から24時間以内の死亡者」に限定している。また、直近年に関しては実数値のグラフも生成した。

なお今グラフも含め、今記事で生成したグラフについては、過去の値も後日発表された修正値を確認した上で反映している。また、積み上げグラフでは原典の仕切り分けのままで作成しているが、折れ線グラフでは煩雑すぎる形となるため、いくつかの年齢階層を集約した形で生成している。

↑ 年齢層別交通事故死者数の推移(各年12月末、人)(-2015年)(積み上げグラフ)
↑ 年齢層別交通事故死者数の推移(各年12月末、人)(-2015年)(積み上げグラフ)

↑ 年齢層別・交通事故死者数(2015年、人)
↑ 年齢層別・交通事故死者数(2015年、人)

↑ 年齢層別交通事故死者数の推移(-2015年)(各年12月末、人)(各年齢階層別折れ線グラフ)
↑ 年齢層別交通事故死者数の推移(-2015年)(各年12月末、人)(各年齢階層別折れ線グラフ)

全体数が減少の傾向を見せているのはすでに【戦後の交通事故・負傷者・死亡者をグラフ化してみる】などでお伝えした通り。一方、紫系統の階層に当たる高齢者(65歳以上)の部分が他の世代と比べると縮み方が緩やか(=人数があまり減っていない)ように見える。実際、直近となる2015年では70歳以上の詳細階層(公開資料上の5歳区切り)において、すべてで前年比を上回る値を示している。

詳しくは後述、そして別記事で解説していくが、高齢者人口そのものが増加しているのに加え、高齢者の対人口比交通事故死者数が高い値を示しているのが、この高齢者の減少率が緩やか、さらには増加している原因。

そこで今度はこれらの動向について、各年毎の交通事故死者数全体に占める割合でグラフにしたのが次の図。一つが棒グラフで、各年ごとに占める割合が分かりやすいように、もう一つは折れ線グラフで、各年齢層毎の割合の変化を見易くしたもの。後者のグラフでは全階層を掲載すると見難くなるため、高齢層と壮齢層に限定して表記している。

↑ 年齢層別交通事故死者数の推移(各年12月末)(各年合計に占める各年齢層の割合)(-2015年)
↑ 年齢層別交通事故死者数の推移(各年12月末)(各年合計に占める各年齢層の割合)(-2015年)

↑ 年齢層別交通事故死者数の推移(各年12月末)(各年合計に占める各年齢層の割合、各属性毎の折れ線グラフ)(-2015年)(一部)
↑ 年齢層別交通事故死者数の推移(各年12月末)(各年合計に占める各年齢層の割合、各属性毎の折れ線グラフ)(-2015年)(一部)

ここ数年の傾向として、死者「数」は(最初のグラフにある通り)各年齢層で減少しているが、高齢層では減り方がおだやか、さらには増加の傾向にあるため、全体に対する比率では逆に増えてしまっている。壮齢層では横ばい、60代も増加から減少に転じる動きを示しているが、70代以降、特に75歳以上では増加の一途をたどっている。

2015年における全死者のうち65歳以上の比率は54.6%。これまでの公開データの中では最大値を更新(2014年は53.3%)してしまっている。

↑ 年齢層別交通事故死者数の推移(各年12月末)(各年合計に占める65歳以上の割合)
↑ 年齢層別交通事故死者数の推移(各年12月末)(各年合計に占める65歳以上の割合)

65歳以上の死亡事故状況を精査する


それでは65歳以上の死亡事故者の状況は、どのような傾向を見せているのか。それが分かれば、これからさらに深刻な問題となるであろう高齢者の事故死亡率を、減少傾向に至らせるヒントがつかめるかもしれない。そこで該当者の交通事故死亡状態別人数推移を調べた結果が次の折れ線グラフ。例えば「自転車運転中」なら、当事者(高齢者)が自転車を運転している際に事故に遭遇し、亡くなった事例である。

↑ 高齢者(65歳以上)の年齢層別状態別交通事故死者数の推移(各年12月末、人)(-2015年)
↑ 高齢者(65歳以上)の年齢層別状態別交通事故死者数の推移(各年12月末、人)(-2015年)

世間一般におけるイメージとしては「交通事故」なら、当事者が自動車、あるいは自転車運転中の状態が最上位のように思える。しかし実際には「歩行中」による事故を起因とするものがもっとも多い。次いで「自動車乗車中」、そして「自転車乗車中」が上位についている。

2015年の動きを見ると、自動二輪や原付は減少しているものの、自動車、自転車、歩行中はいずれも増加している。詳細を見ると特に75-79歳の歩行中、80-84歳は全般、85歳以上の自動車と自転車で大きく増加しており、65歳以上の高齢者の中でも、より高齢な層における事故の増加が起きている実情がつかみ取れる。

グラフ作成は略するものの、高齢者に限って死亡事故数が多い、そして全体における交通事故死者数の比率増加の要因の一つとされる「歩行中の死亡事故」「自転車乗車中の死亡事故」に関して高齢者(65歳以上)の法令違反別区分(該当年齢階層人口10万人あたり)を見ると、

●自転車乗車中死者
 安全不確認……0.23人
 ハンドル操作(安全運転義務)……0.16人
 一時不停止……0.09人
 (他に違反なし……0.20人)

●歩行中死者
 走行車両の直前後(横断違反)……0.61人
 横断歩道以外(横断違反)……0.36人
 信号無視……0.25人
 (他に違反なし……1.28人)

が上位3位を占めている。高齢者以外の割合とも傾向は大きく異なり(例えば高齢者以外の歩行中による法令違反別区分の最上位は酩酊(酔っ払い状態)などによるものである)、「自分自身の身体能力への過信、思い違い」が死亡事故の引き金の主要因であることが分かる。

道を一人歩く老人自動車などを運転している人なら、横断歩道が無い場所なのにもかかわらず、堂々と道を横断するお年寄りに遭遇し、冷や汗をかいた経験が、一度や二度ならずあるはず。彼ら・彼女らは、「かつて交通量が少なかった時代と同じように(「渡り切るまで車など来ない」)」「以前の若い頃の自分のように素早く」渡れると判断している、または「自動車が来ても人間が歩いているのだから、止まってくれるに違いない」などと判断を下し、横断している場合が多いと考えざるを得ない。あるいはそこまでの思慮すら無く、単に「面倒だから近道をしてしまえ」との思いだけで突っ切ろうとしている可能性もある。

しかし「飛び出すな 車は急に止まれない」の標語の通り、横断中の人間を視界にとらえたドライバーが瞬時にブレーキを踏み込んでも、自動車はすぐに停止できない。例えば時速60キロで走る自動車がブレーキを踏んだとしても、止まるまでには20メートルもの距離を有する(さらにそこに、対象物を視界におさめてからブレーキを踏むまでの判断時間による走行距離(空走距離)が加わる)。結果として上記グラフに「カウント」されるような事態におちいった場合、本人はもちろん家族も、そして半ば巻き添えとなった自動車運転手にも大きな不幸、負担が襲い掛かることになる。

高齢化により高齢者の人口が増加するにつれ、事故対象者の絶対数、そして全体に占める割合でも高齢者が増えてしまうのは、統計学上仕方ない(例:同じ1%でも100人ならば1人でしかないが、1万人の場合は100人となる)。高齢者の死者「数」の減少が緩やかな、そして一部階層では増加する動きが生じている理由は、高齢者人口の増加と高齢者の交通事故死者率の高さにある。

次に示すのは「それぞれの」年齢階層における交通事故死者率。たとえば80-84歳は11.07と出ているので(全人口では無く)80-84歳以上の10万人のうち、2015年では11.07人が交通事故で亡くなったことを意味する。

↑ 年齢階層別・人口10万人当たりの交通事故死者数(2015年、人)
↑ 年齢階層別・人口10万人当たりの交通事故死者数(2015年、人)

しかし一方で「絶対数」の増加を「統計学上、仕方ないで良い」で諦めてよいのか、との考え方もある。

高齢者の場合、「カウントされるような事故」の発生起因は上記のようにある程度特定されている。今後はこれらの対策への「これまで以上の」注力も必要となる。まずは徹底した啓蒙活動と、その成果が望める工夫、そして周囲の注意が求められよう。


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