「みなし節電」の影響も・前年同月比でマイナス5.0%(2013年3月分大口電力動向)

2013/04/21 10:00

電気事業連合会は2013年4月19日、2013年3月分の電力需要実績の速報を発表した。それによると同年3月の電力需要(使用量)は10社販売電力量合計で715億kWhとなり、前年同月比でマイナス6.7%を記録した。産業用の大口電力需要量は前年同月比でマイナス5.0%を記録し、10か月連続で前年同月の実績を下回ることになった。全主要業種で前年同月実績を下回ったのが原因である(【電力需要実績発表ページ】)。

スポンサードリンク


今調査の概要および用語解説は過去の同調査に関する記事の一覧ページ【大口電力使用量推移(電気事業連合会発表)】で説明を行っている。そのページで確認してほしい。

2013年3月では大口全体で前年同月比マイナス5.0%。「前年同月比」ではあるが、それだけ工場の施設の稼働による電力消費が(昨年の同じ月と比べて)減ったことになる。

大口電力使用量産業別前年同月比(2013年2月-2013年3月)
↑ 大口電力使用量産業別前年同月比(2013年2月-2013年3月)

ここ数か月続いている傾向だが、今月もまた全業種で前年同月比の値がマイナスを示している。1-2%程度の振れ幅なら「ぶれ」の可能性もあるが、それをはるかに超しているため、誤差の可能性も無いに等しい。比較対象となる1年前の2012年3月においては、震災による物理的破損の影響もほとんど無くなっているはずで、それと比べて5%前後、「非鉄金属」「機械」では10%近い下げ率は、やや強い注視が必要となるほどの減少ぶり。仮に節電効果の表れだとしても、1年間で1割もの削減が可能とは考えにくく、やはり多分に稼働率が落ちていると考えざるを得ない(ただし後述するように、一部業種では自家発電をフルに活用し、大口電力の購入を減らしている場合もある)。

1年前の記事を参照すると、1年前は「繊維」「紙・パルプ」が大きく下げ、「化学」「鉄鋼」「非鉄金属」「機械」はむしろプラスを示していた。この4項目では2013年3月分は「前年の上昇分の反動」による下げという見方も出来るが、2012年3月分は2011年3月、つまり震災直後との比較であることを忘れてはならない。つまり2012年3月は物理的破損、さらには電力需給のひっ迫で大きく電力消費量を減らした前年同月との比較なので、この上昇分は単なるイレギュラーとして発生した減少分が通常時に戻った結果と考えるべき。今回2013年3月は、その「通常に戻った分との比較」であり、「前年が大きく上昇していたから下げるのは仕方がない」とする解説は、適切とは言い難い。

そこで「前々年」同月比を算出したのが次のグラフ。震災直後で大きく電力消費を減らした状況から、どこまで復帰できたかを示す指標ともいえる。

大口電力使用量産業別「前々年」同月比(2013年3月)
↑ 大口電力使用量産業別「前々年」同月比(2013年3月)

「繊維」「紙・パルプ」のマイナスは1割を超えており、震災によるダメージから抜け出ていない感は強い(もっとも両項目は震災直後より、原材料不足による稼働率低下で、その数か月後の方が電力消費が落ち込んでいる記録もある)。省エネ・節電化のみでは説明できない下げ幅。電力使用量がそのままその業界の生産・景気動向を表すわけではなく、各業態とも節電に励んでいる成果が出ている部分もあるが、憂慮すべき結果といえる。

もっとも、例えば製紙業の場合、空調の調整やシフト勤務など節電対策を徹底すると共に、「みなし節電(自家発電分を節電したと換算する仕組み)」を実施し、電力会社からの供給を減らしている事例もある。この場合、大口電力の需要は減るため、必然的に今件の値も減少することとなる。繊維業界でも例えば【合繊メーカーの節電/電力量、大きな懸念なし(2012年5月、繊維ニュース)】との話があり、東レの前年比13%の節電事例が挙げられており、大口電力消費量を減らす効果の高い節電(と自家発電)が行われている可能性が高い。

先年同月比、さらには2年前同月比のグラフでも中長期の流れをつかむことは難しい。そこで記録保全の意味も含め、2007年1月以降の全産業別の前年同月比推移グラフを掲載しておく。

大口電力使用量産業別前年同月比推移(-2013年3月分)
↑ 大口電力使用量産業別前年同月比推移(-2013年3月分)

大口電力使用量の動向を見ると「リーマンショックで大きな下げ(稼動率低下が主要因)」「2010年4月が天井(多分にリーマンショックの下げの反動。状況の回復)」「安定成長」の流れで推移していたのが、2011年3月の東日本大地震・震災をきっかけに下げ基調に移行しているのが確認できる。その後2012年2月までは多くの項目でマイナス圏での推移が続いているが、これは工場の物理的な損害以外はもちろん、原材料の調達不足、タイムシフト・デイシフトをはじめとする各種節電対策による、稼働率・生産調整が影響している。無論上記で例を挙げたように、電力会社からの供給を減らし、自家発電で補う事例も増えている。

2012年3月以降は「2011年3月以降の震災による大きな減少」からの反動で、多数の項目で大きく跳ねている。しかしこのリバウンドも一時的なもので終息。4月以降は失速、6-7月には完全に低迷状態に陥り、以降はその状態が継続している。今回の2013年3月・全体値の「前々年」同月比はプラス1.5%になる(上記グラフより)、つまり震災直後の電力ひっ迫時と比較して、1.5%しか大口電力使用が増えていないことは、知っておいて損は無い。

今件大口電力は国内景気、そして内需、さらにはそれと連動する各種産業、とりわけ特に第二次産業・製造業の動向を推測する物差しとなる指標。被災工場の物理的復興は進んでいるものの、電力の安定供給や取扱商品・サービスの需要回復を待たずに生産施設を閉鎖した事例をはじめ、節電対策での消費電力減退、景気低迷に伴う生産調整など、生産力の数字的低迷は否めない。そして昨年2012年の夏期・2013年初頭に渡る冬期の節電「要請」に伴い、インフラに携わる者も含め、企業や市民が難儀を強いられ、大きな負担を背負う経験を持つ。さらに今夏も前体制の失策の後遺症として、2012年夏と似たような電力需給状況になる可能性が多分にある(【昨年よりのはマシ、ただし......今夏の電力需給見通し第一弾発表】でも触れているが、電力需給の観点では比較的マシになっている。ただしそれを果たすために浪費するコストは膨大で、廻り回って電力料金の値上げにつながるため、リスク観点では改善したとは言い難い)。

今後電力供給がどのように回復していくのか、単に電力の需給問題のみならず、産業との関わり合いの点でも気になる。安定した、節電要請の無い、それこそ湯水のように、コスト面も含めて特段意識することなく、空気を呼吸するかのように(無論、無駄遣いはせずに)使える電力供給こそ、製造業が安心して仕事を続けるための前提条件に他ならない。

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2016 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー