年金生活をしているお年寄り世帯のお金のやりくりをグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編))(2016年)(最新)

2016/03/18 05:30

定年退職を果たし、これまでの蓄財と年金で生活をしている高齢者層の家計事情は、案外知る機会が少ない。節約の対象や趣味趣向への消費、仕送り額など個々の項目の動向は分かっても、家計全体としてどのようなやりとりが行われているのか、多くの人にとっては秘密のベールの向こう側の話でしかない。就業による収益が収入のメインとなる一般労働者世帯とは大きな違いがあることが予想されるだけに、興味は尽きるところを知らない。そこで今回は、総務省統計局が2016年2月16日にデータ更新(2015年・年次分反映)を行った【家計調査(家計収支編)調査結果】を頼りに、高齢者世帯でありがちな構成世帯「単身無職」「夫婦のみの無職」の2パターンにスポットライトをあてて、家計の収支に関する実情を探っていくことにした。

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年金+貯蓄の切り崩し


生涯現役の人(自営業や企業役員、農業従事者など)、あるいは一度定年を迎えて再就職を果たす人もいるが、多くの人は60歳から65歳で定年を迎え、その後はそれまでの貯蓄を切り崩したり、年金(今件各項目では「社会保障給付」に相当)で日々の生活をやりくりをすることになる。「家計調査」では実例として、2015年における平均的な「60歳以上の単身無職世帯(元々独身、あるいは相方に先立たれたか離別して一人暮らしをしている60歳以上の無職の人)」「高齢夫婦無職世帯(夫は65歳以上、妻は60歳以上でその世帯には2人きり・無職。子供などは同居をしていない)」それぞれのパターンにおける家計収支が描かれている。そのうち収入面を抽出したのが次のグラフ。

↑ 高齢者世帯の家計収支(収入面、2015年)
↑ 高齢者世帯の家計収支(収入面、2015年)

例えば単身世帯の場合は年金が約10万4800円。それに加えて毎月約1万円の「その他収入」(「無職」が前提なので、利息なり証券の配当などと考えられる。あるいは不動産収入も平均化された上で加算されているはず。ただし【「年金」「給料」「私的年金」…60代前半シニア層の三大主要収入】の通り、「仕送り」や「資産収入」を収入としている人は少数)。あわせて約11万円が実質的な収入。しかし非消費支出(税金・社会保険料など)と消費支出 (世帯を維持していくために必要な支出)は合わせて15万6374円のため、足りない4万1195円をねん出する必要がある。基本的にはグラフの説明の通り、これまで貯めてきた貯蓄からの切り崩しで充当される。年間で約50万円。

同様に高齢夫婦無職世帯の場合は、年金が約19万円強、その他の収入が約1万8500円。貯蓄の切り崩しが6万円強で合わせて27万5705円が、月あたりの入金合計額となる。

単身高齢者の支出状況


収入面で注意すべき点は、どちらのパターンの世帯でも、収入全体に対して毎月数割の貯蓄切り崩しをしていること。支出面のグラフ化は、例えば60歳以上単身無職世帯の場合は次のようになる。非消費支出(税金や社会保険料)がこれとは別に発生していることに注意されたい。

↑ 60歳以上の単身無職世帯における消費支出の内訳(2009-2015年)
↑ 60歳以上の単身無職世帯における消費支出の内訳(2009-2015年)

これを見ても分かるように、新たに貯蓄はしていないので(使うお金が足りないから貯金をおろしている状態で、同じ月に同じ口座へ貯金をするのは非論理的)、一方的に貯蓄額が減ることになる。

比率動向を見ると、数年では大きな変化はないが、「教育娯楽」「交際費」などゼロでは困るがある程度削減対象となりうる項目の比率が漸減している。他方、ここ数年高騰が続いたものの2014年に入って低下し始めた電気料金を反映してか、「光熱・水道」の比率が増加から減少に転じるものの、「食料」はここ1、2年の価格上昇や食生活の変化に伴い増加を示している。全般的に生活の厳しさが増している、自由度が狭まっている感はある。

「貯蓄率」は大きな問題ではないので、その項目に関する詳細の精査は省略する。一応計算しておくと、単身世帯はマイナス40.1%、夫婦世帯はマイナス34.3%となっている。

↑ 高齢者世帯の家計貯蓄率(2015年)
↑ 高齢者世帯の家計貯蓄率(2015年)

黒字は発生せず貯蓄を切り崩しているのだから当然マイナスが生じるのだが、可処分所得の3割から4割が貯蓄切り崩しからまかなわれている実態を改めて知ることができよう。



やや余談ではあるが、高齢者の単身無職世帯と夫婦世帯の支出の違いを確認しておく。

↑ 60歳以上の無職世帯における消費支出の内訳(2015年、単身と夫婦)
↑ 60歳以上の無職世帯における消費支出の内訳(2015年、単身と夫婦)

絶対金額では無く、消費支出内の比率の比較であり、そのまま並べるのはやや無理があるかもしれない。しかしながら生活様式の差異を推し量るには十分な精度である。

各項目を眺めると、「二人分が必要な項目(食料、保健医療)は単身世帯より夫婦世帯の方が比率が上」「二人である程度共用できる項目(住居、光熱・水道など)は単身世帯より夫婦世帯の方が比率が下」との結果が出ている。そのまま約2倍(一人か、二人かの違い)の比率では無いのは、総額が違うからに他ならない。

これらの違いから、少なくとも金銭面では、夫婦世帯の方が余裕のある生活ができているように見える。特に住居費の違いは大きい。高齢者関係の論説を読み説く際、そしてライフプランの構築の時に、この事実を覚えておいて損はあるまい。


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