収入と税金の変化をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編))(最新)

2019/03/01 05:20

2019-0219総務省統計局が2019年2月8日にデータ更新(2018年・年次分反映)を行った【家計調査(家計収支編)調査結果】では、お金の出し入れを中心に世間一般の世帯動向を多様な方面から推し量ることができるデータを見い出すことができる。今回はこの公開値を用い、勤労者世帯(勤め人がいる世帯)における収入と税金の関係を、最新の2018年分だけで無く経年推移も併せて確認していくことにする。

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お勤めの大黒柱がいる世帯のお金の出入りを探る


今件データは総世帯(単身世帯と二人以上世帯の合算。要は全部の世帯)のうち勤労者世帯の平均値を算出したもの。平均世帯人員は2.65人・世帯主平均年齢は47.9歳(2018年時点、以下同)。また、実収入は1年に得た各種収入(世帯主と配偶者収入)の合計を12で割った、つまり世帯単位での一か月の平均値。ボーナスなどは月単位で分散加算されている。宝くじや保険金、退職金などの特殊事情による収入は除外してある。さらに実収入は非消費支出(税金や社会保険料)と可処分所得(自由に使えるお金)に分けられる。具体的な支出・収入の関係は次の通り。

・(実)収入……世帯主の収入(月収+ボーナス臨時収入)+配偶者収入など

・支出……消費支出(世帯を維持していくために必要な支出)
     +非消費支出(税金・社会保険料など)
     +黒字分(投資や貯金など)
       (※可処分所得=消費支出+黒字分)

また勤労者世帯の厳密な定義だが、【家計調査 用語の説明】にある通り、世帯主が会社、官公庁、学校、工場、商店などに勤めている世帯を指す。役員や個人経営者、農林漁業従事者、自由業者、そして無職(年金生活者など)などは該当しない。

↑ 世帯構成の定義
↑ 世帯構成の定義

まずは実収入と、非消費支出、可処分所得の推移を見ていくことにする。

↑ 実収入と非消費支出・可処分所得(総世帯のうち勤労者世帯、円)
↑ 実収入と非消費支出・可処分所得(総世帯のうち勤労者世帯、円)

2000年以降減り続けた実収入だが、2004年-2005年を底値に上昇の兆しが見えていた。しかしリーマンショックの翌年に当たる2009年で大きく下落。以降は小刻みな上下を繰り返しながら、低迷を続けている。もっとも2011年を底値とし、おおよそ少しずつながらも回復の動きを示している(2016年には大きな下落があったが)。

各世帯が自由に使えるお金こと可処分所得は、2000年と比べて3万円近く減ったまま2007年までほぼ横ばいを続けたあと、やはり2008-2009年で大きく下落。その後は横ばい、あるいは微減の状態が続いている。原因としては実収入が増加しないだけでなく、非消費支出が継続的に増加しており、この圧迫感が強い。

もっともここ1、2年は増加の兆しが見えている。2018年の可処分所得は40万0964円で、前年比はプラス1万8530円、前世紀末の2000年の値と比べると2万8374円の減少となる。

税金と社会保険料と


これらの動向、実状がより分かりやすくなるのが次のグラフ。実収入に占める非消費支出、つまり税金や社会保険料の割合の変化を示したものだが、実収入が減少を続けた2004年-2005年までが横ばいだったのに対し、2006年から急激に割合を増やしているのが確認できる。2013年以降はほぼ横ばいの推移に移行したようだ。

↑ 実収入に占める非消費支出比率(総世帯のうち勤労者世帯)
↑ 実収入に占める非消費支出比率(総世帯のうち勤労者世帯)

↑ 実収入に占める税金・社会保険料比率(総世帯のうち勤労者世帯)
↑ 実収入に占める税金・社会保険料比率(総世帯のうち勤労者世帯)

累進課税・上限値の設定などがあるため完全な比例関係には無いが、一般的に収入が増えればその分税金や社会保険料も増加する。額が増えても収入に占める割合そのものはそれなりに定率になるはずなのだが(極端な値を示す世帯は少数に過ぎない)、この数年においては「平均的なモデルの世帯では」公租公課の負担比率が増えている。2000年-2005年までの安定期と比べると数%ポイントの増加。この上昇分が、「実収入が増えても使えるお金が増えない、生活が楽にならない」、さらには「実収入が減った以上に生活が厳しいように思える」のような事態を招く主要因となっている。特に2008年以降は実収入の減少もあり、直接税が占める比率は横ばいな一方で、それ以上に社会保険(額・)比率が増加の一途をたどり、結果として非消費支出が増えているのが分かる。

金額面からも明らかだが、非消費支出の増加は実質的に社会保険料の増加によるところが分かる。世帯あたりの社会保険料の額、比率が中長期的に増加しているのは、他の多数の記事で言及している通り、ひとえに社会構造の高齢化に伴う医療をはじめとした社会保障負担の増加が主要因。医療技術の発達に伴うコストの増加もあるが、高齢化の影響に比べれば微々たるものである。

消費者物価指数(CPI)の動向は?


「可処分所得が増えなくても物価が安定していれば、同じ水準で生活できるはず。物価が下がれば生活はむしろ楽になるのでは?」との意見もある。【過去70年近くにわたる消費者物価の推移をグラフ化してみる】で解説しているが、1990年代以降は消費者物価指数はほぼ横ばい、あるいは減少の傾向を見せている。

もっともこの数年は、政府の経済政策の大規模な転換を受け、デフレからの脱却感を覚えさせる雰囲気を示している。次に示すのは2010年以降の消費者物価指数(CPI)を示したものだが(【2015年基準 消費者物価指数 全国 平成30年(2018年)平均 (2019年1月18日公表)】、2013年あたりから少しずつ上昇を示し始め、2014年4月の消費税率引き上げで大きく跳ね上がり、その後は原材料費、特に食材価格の上昇を受けて、増加傾向にある。

↑ 消費者物価指数(CPI)(2015年年平均=100、総合と食料、月次)
↑ 消費者物価指数(CPI)(2015年年平均=100、総合と食料、月次)

↑ 消費者物価指数(CPI)(2015年年平均=100、総合と食料と光熱・水道、月次)
↑ 消費者物価指数(CPI)(2015年年平均=100、総合と食料と光熱・水道、月次)

2つ目のグラフの通り、震災当時の政権による失策を受け、現状もなお続いている電力インフラ関連の不安定さを起因とする断続的な電気料金の引き上げにより、CPI中の光熱・水道の指数は大きく上昇のさなかにあった。もっとも、【原油先物(WTI)価格の推移をグラフ化してみる】にもある通り、2014年夏以降は原油や天然ガス価格の下落に伴い、直接・間接的にエネルギー関連費用も低減し、2015年末以降は消費税率引上げ直前の水準すら下回る値の動きを示した。ただし2017年初頭以降は原油価格の大幅な上昇に伴い、再び上昇の気配を示している。

他方、食料の指標は消費税率の引上げ前から原材料価格の高騰を受け、また為替の円安化も影響し、漸増を続けている。全体としての消費者物価指数は消費税率引き上げ後は光熱・水道指標の漸減と食料指標の漸増の双方の影響を受け、奇妙にもバランスが取れる形で横ばいの中にあった。先行記事【エンゲル係数の推移をグラフ化してみる】で記した通り、エンゲル係数がこの数年の間に増加したのは、食料品の価格底上げや社会保険料の増加に伴う可処分所得の減退なども要因であることが分かる。

なお2017年夏以降、突出する形で食糧の指標が上昇している。これは東日本・北日本の2017年夏の冷害や台風の相次ぐ上陸をはじめとした、各種気象悪化に伴う農作物の不作によるところが大きい。同年10月に2週にわたりそれぞれ別の週末にかけて日本を縦断した大型台風(21号と22号)による大きな影響を思い起こせば、すぐに理解はできるはずだ。同時期に生じているCPI全体としての上昇も、これによる影響が大きい(原油価格上昇に伴う光熱・水道指標の上昇も一因だが)。



2005年以降の公租公課の増加原因には上記の解説通り、高齢化に伴い年金・社会保険料の漸増が続いていることに加え、定率減税の撤廃が大きな要因ではある(2006年分以降から縮小、2007年分以降は廃止)。定率減税の撤廃やリーマンショックのような大きな経済的イベントは、確実に各世帯のお金事情に影響を与えていることが改めて認識できる。また、2005年以降社会保険料が(実収入が減っても)増加する場合がほとんどで、結果として可処分所得が目に見える形で減少している点にも注目したい。

さらにいえば、今件は総世帯、つまり単身世帯と二人以上世帯のうち、勤労者世帯に限定した値の算出であることにも留意が必要。単身世帯の増加は継続しており、当然「世帯単位による」平均の実収入は減少する。さらに勤労者世帯でも再就職などを果たした高齢層の再就職世帯(当然中年層までの勤労者よりは実入りが少ない。年金生活をはじめても勤労者世帯となる場合もあり、その時には切り崩す額が少なくなるだけで貯蓄を切り崩しての生活は変わらないため、実収入は小さなものとなる)も増加しているため、それらも総世帯としての平均値を下げる要素となる。その点には注意をされたい。


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