エンゲル係数の推移をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編))(最新)

2018/03/19 05:09

2018-0316世帯単位における裕福さ、生活レベルの度合いを示す指標の一つとして「エンゲル係数」なるものがある。社会構造の変化とともに、一般世帯における生活内容実態との連動性は薄れつつあるが、今なおよく使われている値の一つ。今回は金銭面や商品・サービス購入頻度の面から人々の生活状況を推し量れる、総務省統計局が2018年2月16日に公開値の更新(2017年・年次分反映)を行った【家計調査(家計収支編)調査結果】を元に、この「エンゲル係数の推移」を確認していくことにする。

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エンゲル係数の定義と今世紀の推移


エンゲル係数」とは「消費支出」に占める「食料品」の割合を意味する。具体的にこれらの支出の関係を示すと

・(実)収入……世帯主の収入(月収+ボーナス臨時収入)+配偶者収入など

・支出……消費支出(世帯を維持していくために必要な支出)
     +非消費支出(税金・社会保険料など)
     +黒字分(投資や貯金など)
       (※可処分所得=消費支出+黒字分)

・エンゲル係数……食料費÷消費支出

となる。

「エンゲル係数」そのものはドイツの社会統計学者エルンスト・エンゲル(Ernst Engel)が提唱した指数で、「家計の消費支出に占める飲食費割合が高いほど生活水準は低い」との説に基づいている。よほどの富裕層(そしてそれらはごく少数)で無い限り、食費の額に大きな違いは出ず(ただし今家計調査でも明らかな通り、差額が生じるのもまた事実)、一方で食費そのものはどの家庭でも必ず発生する。そして食は一般の人においては趣向とは関係の無いものとの認識があった。従って、全体の支出に占める比率は、消費支出そのものが大きくなるほど低くなる・食費以外の項目に割り当てられる額が大きくなるとの考え方。

現在では商品価格の水準や生活様式、食生活の内情や周辺環境が同じもの同士で無いと比較にならない、農村部の住民は自前で主食や野菜を自給できる(割合が高い)ので必然的にエンゲル係数が低くなる、さらには住居費も合算して考えるべきだとの意見もあり(住居費まで合わせると、賃貸か自前の住宅かによる違いの考察、住宅ローンはどのような判断をすべきかなど、問題は山積される)、以前ほど重要視されてはいない。

その上、同一期間における各種属性別の比較ならまだしも、経年推移に関しては、食生活の様相そのものが変化してしまうことから、検証の際にぶれが生じる可能性が多分にある。

エンゲル係数が提唱された当時は、食事が単なる生活に必要不可欠な行動以上のものでは無かったかもしれないが、現在では嗜好性が多分に反映されるものとなっており、前提そのものが覆されている。食に対する生活の立ち位置も昔からは大きく変わっており、さらに中食の浸透がそれを加速化させている。後述する通りこの数年はインフラの整備などを受け、中食文化が急速に進み、それが指数を押し上げる形となっている。

そのエンゲル係数だが、二人以上世帯に限定した推移が次のグラフ。定義に従えば生活が苦しくなるほど上昇する傾向を見せるが、この10年あまりでは2005年を底値に少しずつ値を積み増している。なお今記事では家計調査の公開値において用途分類で算出している。

↑ エンゲル係数の推移(二人以上の世帯)(用途分類で算出)
↑ エンゲル係数の推移(二人以上の世帯)(用途分類で算出)

今世紀に入ってからの動きを見る限りでは、動きそのものは小さいものの、上昇している実情が認識できる(直近年では前年比でマイナスとなったが)。

2013年以降の上昇の加速化に関しては先行記事の【中食系食品などの購入動向推移をグラフ化してみる】で算出値と併せて解説している通り、食生活の急速な変化、具体的には中食化の進行と、エンゲル係数が高値をつけやすい高齢者世帯の比率増加の相乗効果によるもの。また2014年に限れば消費税率の引上げ、そして2014年以降は原材料価格の上昇に伴う食費の積み増しが小さからぬ要因となっている。詳細は別途記事【収入と税金の変化をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編)】で解説するが、光熱費などは2014年半ばをピークとして上昇は止まり、むしろ下落する傾向にある一方、食料品価格は上昇を続けており、これがエンゲル係数の増加にもつながっている。

↑ 消費者物価指数(CPI)動向(2015年年平均=100)(月次)(光熱費追加)
↑ 消費者物価指数(CPI)動向(2015年年平均=100)(月次)(光熱費追加)

さらに後述するが、計算式の上で食費以外に影響を与える、消費支出が減退しているのもまた、エンゲル係数を底上げする要因であることは否定できない。

世帯主の世代別に見ていこう


これを世帯主の年齢階層別に仕切り直したのが次のグラフ。

↑ 世帯主の年齢階層別エンゲル係数の推移(二人以上の世帯)(用途分類で算出)
↑ 世帯主の年齢階層別エンゲル係数の推移(二人以上の世帯)(用途分類で算出)

↑ 世帯主の年齢階級別エンゲル係数(二人以上の世帯)(用途分類で算出)(2017年)
↑ 世帯主の年齢階級別エンゲル係数(二人以上の世帯)(用途分類で算出)(2017年)

元々エンゲル係数は高年齢ほど高い傾向にある。中堅層の子持ち世帯は子供への出費が(学費や子供の遊興費、その他住居関連費の増大など、食費以上にそれ以外の負担が大きい)増え、消費支出も大きい。一方高年齢層は年金生活者が多数を占めることから、消費支出が小さく、当然食費が占める割合も大きくなるため。青系統色(=シニア層)の折れ線グラフの高位置がそれを表している。

各年齢階層の動向を見ると、全体値に近い動きではあるが、2010年から2011年の大きな上昇を別にすると、30代以上はほぼ横ばい、むしろ減少する局面もあったことが分かる。一方30歳未満に限れば2008年以降2011年まで一貫して上昇しており、この10年間でほぼ2ポイントほどの上乗せが確認できた。

2013年または2014年以降の急激な伸びの動きの要因は上記で解説の通り、「中食文化の急速な普及浸透に伴う食へのライフスタイル、金額面への注力増加」、さらには「食料方面の物価の上昇」、そして別途「収入と税金の変化をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編)」などで解説するが、実収入の増加に対し非消費支出、特に社会保険料の圧迫が大きく、可処分所得が減少していることが大きな要因といえる。

直近2017年に限ると前年で大きな上昇を示した30歳未満が1.6%ポイントもの減少を示したのをはじめ、多くの層で前年比マイナスを計上している。全体値でも前年比マイナス0.1%ポイントだったことから、一時期大いに騒がれていたエンゲル係数の上昇にまつわる話が一気に沈静化したのも納得がいく(騒がれた内容そのものは概して非論理的なものだったが)。

他方、トレンドとしてエンゲル係数が上昇傾向から転じたとは判断し難い。周辺環境の変化を見るに、上昇する要素は多々あれど、減る要素は見つけ難いからだ。

元々高めの値を示している高齢層のエンゲル係数が、今後さらに増加するか否かは未知数だが、少なくとも高齢世帯そのものの増加、全世帯に占める割合は増加するのは確実なことから、全体値としてのエンゲル係数も漸増していくものと考えられる。さらに中食の普及浸透は便宜性の向上や関連食品の技術の進歩、そしてコンビニをはじめとした流通形態のさらなる整備もまた、指標の押し上げには確実に貢献することとなる。食が「必要不可欠なもの」に加え、「生活の上での楽しみ」の色合いが濃くなっている以上(各種甘味の利用性向の高まりが一因であることは容易に想像できるはず)、単純に比較のための指標として用いることは難しいのが実情だ。

上記に有る通り昨今では、社会指標におけるエンゲル係数の確からしさは、特に経年推移においてはあまり精度の高いものでは無い。それでも有益なものとして現在でも用いられている。その動向には大いに注意を払わねばなるまい。

なお今回のエンゲル係数は家計調査における区分として「用途分類」で算出している。これは各支出対象を使い道で仕切り分けしたもの。食品を購入したとしてもそれを自世帯の食用としてでは無く、贈呈用など別の用途として用いた場合、食料費としては計上しない(イコールエンゲル係数には関与しない)。

一方で食用だろうと贈呈用だろうと食品を購入したのだからエンゲル係数には計上すべきだとする考えもあり、それは「品目分類」(使い道に限らず詳細な項目の支出金額などの消費動向を見るための分類)で計算をする必要がある。その方法による計算結果は【中食系食品などの購入動向推移をグラフ化してみる(家計調査報告】で解説しているので、そちらを参照してほしい。とはいえ、数字そのものはともかく、それが指し示す内容はほとんど同じではあるのだが。


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