エンゲル係数の推移をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編))(2016年)(最新)

2016/03/18 04:49

世帯単位における裕福さ、生活レベルの度合いを示す指標の一つとして「エンゲル係数」なるものがある。社会構造の変化と共に、一般世帯における生活内容実態との連動性は薄れつつあるが、今なお良く使われている値の一つには違いない。今回は金銭面や商品・サービス購入頻度の面から人々の生活状況を推し量れる、総務省統計局が2016年2月16日に公開値の更新(2015年・年次分反映)を行った【家計調査(家計収支編)調査結果】を元に、この「エンゲル係数の推移」を確認していくことにする。

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エンゲル係数の定義と今世紀の推移


エンゲル係数」とは「消費支出」に占める「食料品」の割合を意味する。具体的にこれらの支出の関係を示すと

・(実)収入……世帯主の収入(月収+ボーナス臨時収入)+配偶者収入など

・支出……消費支出(世帯を維持していくために必要な支出)
     +非消費支出(税金・社会保険料など)
     +黒字分(投資や貯金など)
       (※可処分所得=消費支出+黒字分)

・エンゲル係数……食料費÷消費支出

となる。

「エンゲル係数」そのものはドイツの社会統計学者エルンスト・エンゲル(Ernst Engel)が提唱した指数で、「家計の消費支出に占める飲食費割合が高いほど生活水準は低い」との説に基づいている。よほどの富裕層(そしてそれらはごく少数)でない限り、食費の額に大きな違いは出ず(ただし今家計調査でも明らかな通り、差額が生じるのもまた事実)、一方で食費そのものはどの家庭でも必ず発生する。従って、全体の支出に占める比率は、消費支出そのものが大きくなるほど低くなる・食費以外の項目に割り当てられる額が大きくなるとの考え方。

現在では商品価格の水準や生活様式が同じもの同士でないと比較にならない、農村部の住民は自前で主食や野菜を自給出来る(割合が高い)ので必然的にエンゲル係数が低くなる、さらには住居費も合わせて考えるべきだとの意見もあり(住居費まで合わせると、賃貸か自前の住宅かによる違いの考察、住宅ローンはどのような判断をすべきかなど、問題は山積される)、以前ほど重要視されてはいない。

その上、同一期間における各種属性別の比較ならまだしも、経年変化における推移に関しては、食生活の様相そのものが変化してしまうことから、検証の際にぶれが生じる可能性が多分にある。しかしそれでも一定の参考値として、今なお参照される値であることもまた事実。

そのエンゲル係数だが、二人以上世帯に限定した推移が次のグラフ。定義に従えば生活が苦しくなるほど上昇する傾向を見せるが、この10年あまりでは2005年を底値に少しずつ値を積み増している。

↑ エンゲル係数の推移(二人以上の世帯)(-2015年)
↑ エンゲル係数の推移(二人以上の世帯)(-2015年)

縦軸の区切りが0.5ポイントと小さめなことから、2-3年程度の動きでは誤差の範囲とも判断できる。しかしこの10年強の動きを見る限りでは、動きそのものは小さいものの、確実に上昇していることが認識できる。これは詳しくは後述するが、エンゲル係数本来の定義に従う通り「生活の苦境化」が生じていることも一因だが、むしろそれ以上に、エンゲル係数が元々高くならざるを得ない高齢層(さらにいえばその中でも非勤労者世帯)の比率が増加しているのが大きな要因の一つではある。

2014年から2015年にかけての増加に関しては、高齢層の比率増加に加え、消費税率の引上げや原材料価格の上昇に伴う食費の増加が小さからぬ要因となっている。詳細は別途記事【収入と税金の変化をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編)】で解説するが、光熱費などは2014年半ばをピークとして上昇は止まり、むしろ下落する傾向にある一方で食料品価格は上昇を続けており、これがエンゲル係数の増加にもつながっている。

↑ 消費者物価指数(CPI)動向(2010年=100)(2010年-2015年)(月次)
↑ 消費者物価指数(CPI)動向(2010年=100)(2010年-2015年)(月次)

世帯主の世代別に見ていこう


これを世帯主の年齢階層別に仕切り直したのが次のグラフ。

↑ 世帯主の年齢階級別エンゲル係数の推移(二人以上の世帯)(世帯主年齢階層別)(-2015年)
↑ 世帯主の年齢階級別エンゲル係数の推移(二人以上の世帯)(世帯主年齢階層別)(-2015年)

元々エンゲル係数は高年齢ほど高い傾向にある。中堅世代の子持ち世帯は子供への出費が(学費や子供の遊興費、その他住居関連費の増大など、食費以上にそれ以外の負担が大きい)増え、消費支出も大きい。一方高年齢世代は年金生活者が多数を占めることから、消費支出が小さく、当然食費が占める割合も大きくなるため。青系統色(=シニア層)の折れ線グラフの高位置がそれを表している。

各世代動向を見ると、全体値に近い動きではあるが、2010年から2011年の大きな上昇を別にすると、30代以上はほぼ横ばい、むしろ減少する局面もあったことが分かる。一方30歳未満に限れば2008年以降2011年まで一貫して上昇しており、この10年間でほぼ2ポイントほどの上乗せが確認できた。

中期的な流れで見ると、高齢層(60代以上)は漸増、30歳未満はややぶれが大きいものの50代以下は概して横ばいで推移しているのが分かる。他方、直近2年間、2014年以降に限ると、30歳未満は過去の動向と合わせて考えればボックス圏内ではあるが、30代以降は明らかに上昇、している。

2013年までのエンゲル係数の漸増は、2つの要因「高齢層のエンゲル係数漸増」「高齢層数の全体比の増加」によるところが大きかった。他の世代が横ばいでも高齢層のエンゲル係数が増加すれば、全体値は底上げされる。さらに高齢層世帯が世帯全体に占める割合が増加すれば、与える影響も大きくなる。全体的にエンゲル係数が増加しているのなら、すべての世代で漸増しなければならないはずだが、実際には高齢層のみが増加している実態をみれば、その理屈は容易に理解できるはずだ。

他方、2014年以降の増加傾向に関しては、実質的に30代以上のすべての年齢階層で生じており、これまでの2要因に加え、上記の通り食料品価格の上昇、さらには別途「収入と税金の変化をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編)」などで記すことになるが、実収入の増加に対し非消費支出、特に社会保険料の圧迫が大きく、可処分所得が減退していることが大きな要因といえる。また、こちらも後日検証するが、そして先行記事となるいくつかの食に関する家計調査に係わる記事で明らかにしている通り、食料品に関して支出だけでなく購入頻度が、特に中食系で増加していることから、食生活の様相の変化が影響している可能性もある。

ともあれ、今後高齢層全体のエンゲル係数が増加するか否かは未知数だが、少なくとも高齢世帯そのものの増加、全世帯に占める割合は増加するのは確実なことから、全体値としてのエンゲル係数も漸増していくものと考えられる。社会全体を眺める上では、その構成比を底上げする高齢世帯の増加に伴う係数増加には留意すべきであろう。

上記に有る通り昨今では、社会指標におけるエンゲル係数の確からしさは、特に経年変化においてはあまり精度の高いものでは無い。それでも有益なものとして現在でも用いられている。その動向には大いに注意を払わねばなるまい。


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