震災以降の電気使用量・電気代の動向(家計調査報告(家計収支編))(最新)

2019/03/01 05:15

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2019-0219総務省統計局が2019年2月8日にデータ更新(2018年・年次分反映)を行った【家計調査(家計収支編)調査結果】では、消費金額や購入頻度などの観点から、一般消費者の生活動向を推し量ることができる。今回は2011年3月の震災以降何かと気になる電気の使用量や電気代にスポットライトを当て、それを通して「一般の人々の生活と電気とのかかわり合いの変化」を確認していくことにする。


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2011年3月に発生した東日本大震災は、インフラの物理的損壊による電力供給量の絶対的な不足を呼び起こした。そしてその後「当時の」政権による政策の失敗などを要因とする発電力の漸減による、慢性的な電力不足・不安が「今に至るまで」続いている。特に2011年夏は法的拘束力を伴う数字目標付きの電力使用制限令も発せられ、人々の節電意識は大きな高まりを見せた。直近の冬においても数字目標付き・法的拘束力のある節電要請こそ無かったものの、節電への啓蒙のための情報発信は続けられている。

また自宅や勤務地の電気料金を確認・勘定している人は十分実感しているはずだが、電力発電・供給様式のバランスが以前と比べて大きく偏った状態が続いているのが主要因となり、電気料金は震災前と比べ、家計においてより大きな負担となっている。もっとも昨今では原発がごく一部ではあるが再稼働を始めたことにより、電気料金も一時期と比べれば落ち着きを見せ、震災以前の原油価格の動向に左右されやすい状況に戻りつつある。

このような状況下における、二人以上世帯における電気使用量と電気代の前年同月比推移をグラフ化したのが次の図。2011年4月以降マイナス値が続いており、震災後の電力供給量の大幅な制限に伴い、電力使用量が大きく削られ、結果として電気代も節約されている状況が分かる。なお今件グラフは調査世帯が電気料金を実際に支払った日(の月)の電気使用量と電気代の変移であり、実際の電力使用とは一か月ずれが生じている(例えば2011年9月の電気使用量・電気代は前年同月比マイナス16.4%だが、これは2011年9月ではなく8月の電力使用に対する電気代である)。

↑ 世帯あたりの電気使用量および電気代(二人以上世帯、月あたり、前年同月比)(2011年1月以降)
↑ 世帯あたりの電気使用量および電気代(二人以上世帯、月あたり、前年同月比)(2011年1月以降)

2011年夏の減少幅の大きさは、震災による電力需給問題で一般世帯でも半ば節電を強要されたことに加え、2010年夏が【8月利用分電気代は2割増…2010年の酷暑が分かる光熱費推移】などで解説しているように大変な暑さによる消費電力の多さに伴い、その反動が表れたもの。

2011年夏に発令された電力使用制限令では、一年前の最大電力より15%減少が目標だった。今グラフは電気使用量・電気代で、しかも一般の世帯であり電力使用制限令の対象となった大口需要家では無いが、電気使用量の点で前年同月比15%減は果たせていることが確認できる。

2012年になると、厳寒、猛暑・残暑が相次ぎ、さらには2011年の節電の反動もあり、前年同月比でプラスが散在することになる。とはいえ2012年夏の電力使用量の前年比はプラスマイナス2%内外に収めており、一般世帯レベルでも節電意識・行動が浸透しているのが分かる。他方2012年になると電気使用量のプラス分に比べ、電気代のプラス分が大きくなっている。これは電気料金の値上げによるところが大きい。

2013年に入ると「電気使用量のマイナス域増加」「電気代のプラス域増加」「電気使用量と電気代とのかい離の拡大」が傾向として確認できる。「電気使用量のマイナス域増加」は節電意識の高まりと実行率の増加によるもの。「電気代のプラス域増加」は電気料金の値上げによるもの。そして「電気使用量と電気代とのかい離」は電気代平均単価が押し上げられることで、電気使用量が減少しているにもかかわらず、世帯で支払う電気料金が多分に増え続けていることを意味する。

この動きは2015年半ばまで続いている。特に夏期はともかく、それ以外の期間においては、「電気使用量が前年同月よりも少なくなった(マイナス域)にもかかわらず、電気代が増えている(プラス域)」現象が生じている。これは前年同月よりも電気料金(=電気代平均単価)の値上げがなお続いていることを意味している。例えるなら値上げしたアイスを食べる量を半分にしても、単価が3倍に上がっていたのならば、支出金額は1.5倍に増加するようなものである。

ところが2015年後半以降は電気使用量と電気代の前年同月比の値の関係が逆転し、むしろ電力使用量の減少率以上に電気代が下落する動きを示している。これは前年同月の反動もあるが、同時に電気代平均単価が下落した影響が大きい。電気代・電気使用量の前年同月比のかい離と、電気代単価の動向を見るに、ほぼ同じタイミングで下落が生じているのが分かる。また1年が経過し反動が生じなくなった2016年半ば以降も、前年同月比で電気使用量の値が電気代を上回っていることから、電気代(電気代平均単価)の下落が続いていることが把握できる。

↑ 電気代と電気使用量の前年同月比のかい離(ppt)
↑ 電気代と電気使用量の前年同月比のかい離(ppt)

↑ 電気代平均単価(二人以上世帯、月あたり・1kWhあたり、円)
↑ 電気代平均単価(二人以上世帯、月あたり・1kWhあたり、円)

もっとも2017年に入ってから、特に2017年夏以降は再び前年同月比において電気代が電気使用量を上回る事態が生じている(緑色の部分)。これは原油価格の上昇に伴い、電気代平均単価が上昇したのが原因ではある。



残念ながら震災後における「失策」の傷跡はまだ深く、その影響を多方面に及ぼしている。2019年の夏も数字目標は無いだろうが、意識的な節電を求められる状況に変わりは無い。さらに巨額な発電コストの無駄な積み上げ、定期メンテナンスの延期や老朽化して一時廃棄状態だった発電所の再利用など、無理につじつまを合わせている部分も多い。2011年の電力需給の厳しさが震災によるものだとすれば、2012年以降の厳しさは人災、政災によるところが大きい。一刻も早くこのような、異様な事態・呪縛から抜け出すべく、可能な限りの手を打つ必要が求められている。

なお電気料金に関しては機会を改めて、もう少し詳しく、別の視点から精査をしていく予定である。


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