ようかん、まんじゅう、カステラ、ゼリー、せんべいなどはシニアの方が好んで食べる…年齢階層別・単身世帯のお菓子支出比率(家計調査報告(家計収支編))(最新)

2023/05/23 02:46

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2023-0515主にコンビニの独自ブランドにおけるデザートの開発と普及に伴い、この数年でお菓子は洋風・和風、さらには和洋折衷のものまで含め、これまで以上に多様なものが展開され、商品棚に彩りを添えることとなった。また商品の購買性向、店舗の来場客層の変化に対応させる形で、主に和菓子や和菓子風の味わいによる商品の進出が著しい。従来洋菓子のジャンルで著名なシリーズにも、続々と抹茶や餡子など和菓子風の味が登場している。それらお菓子周辺の環境変化により、消費者の購買実情はどのような動きを示しているのだろうか。総務省統計局が2023年2月7日にデータ更新(2022年・年次分反映)を行った【家計調査(家計収支編)調査結果】の中から、個人の消費性向がよくわかる単身世帯にスポットライトを当てて、その状況を確認していくことにする。

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年齢階層で大きく異なる「好んで買う菓子」の種類


今回スポットライトを当てるお菓子の品目は、「他の菓子」以外の、ある程度区分わけが成されているものについて。そのうち具体的に商品内容が把握しにくいものの内情に関して、【家計調査 収支項目分類・収支項目分類およびその内容例示(令和2年1月改定)】(現時点で最新版)から説明を抽出すると次の通りとなる。

・他の和生菓子……大福餅、くずもち、ゆべし、どら焼き、おはぎ、串団子、今川焼き、たい焼き、最中(もなか)など。半生菓子も含む。スイートポテトやおやきは含まれない。

・他の洋生菓子……エクレア、シュークリーム、ワッフル、マドレーヌ、クレープ、バームクーヘン、アップルパイ、ロールケーキ、パウンドケーキ、ババロア、ムース、スイートポテトなど。

・スナック菓子……じゃが芋やとうもろこし、小麦粉などを主原料とし、焼き上げたもの。ポテトチップス、ポップコーン、クラッカー、野菜や果物のチップス。

・キャンデー……水あめ、ドロップ、キャラメル(ソフトも含む)。

また、家計調査では単身世帯の年齢階層に関して、34歳以下(若年層)・35-59歳(中年層)・60歳以上(高齢層)に区分している(65歳以上の特化区分もあるが省略)。そこでこの年齢区分に従い、各種計算をしていく。

まずは直近5年間における、月あたりに換算をした菓子類項目への支出金額。単身世帯であることから当然として、世帯主本人のための購入になる。

↑ 菓子類の支出金額(単身世帯、月あたり、年齢階層別、円)
↑ 菓子類の支出金額(単身世帯、月あたり、年齢階層別、円)

単身世帯の菓子出費は大体月3000円台。おおよそ年齢が上になるに連れて支出金額が大きくなる。直近年では60歳以上層が一番支出金額が大きいが、35-59歳層とほとんど変わらない。新型コロナウイルスの流行で中年層の在宅勤務が増え、お菓子の需要が増加したのだろうか。

そして菓子類の具体的項目別における月あたりの支出金額を算出したのが次のグラフ。年齢階層別で菓子の好みが大きく異なることが分かる。

↑ 菓子類の支出金額(単身世帯、月あたり、具体的項目別・年齢階層別、円)(2022年)
↑ 菓子類の支出金額(単身世帯、月あたり、具体的項目別・年齢階層別、円)(2022年)

すぐに目につくのは他の和生菓子の年齢階層による格差の大きさ。元々若年層でもそれなりに(220円/月)支出があるが、高齢層になると月618円も支出している計算になる。高齢層において全菓子代の1割台後半は大福やどら焼き、串団子などに費やされている計算。

その他「若年層ほど高額」は赤矢印、「高齢層ほど高額」は青矢印を使い、動きを追っている。見た限りではほぼ世間一般のイメージ通りの購入性向が確認できる。よく好まれる種類として、

・若年層…ケーキ、プリン、他の洋生菓子、ビスケット

・高齢層…ようかん、まんじゅう、他の和生菓子、カステラ、ゼリー、せんべい

が挙げられる。

金額別に見ると、高齢者の他の和生菓子がずば抜けて高いのは別として、高齢者でもゼリーはそれなりに若年層以上の人気ぶりを見せていること、似たような性質を持っているがスナック菓子は若年層から中年層、せんべいは高齢者に高い人気があることが分かる。またチョコレートは中年層からの支持がもっとも厚いようだ。

各年齢階層の人気商品をピックアップ


これらのうち各年齢階層毎に金額で上位3位以内の項目を抽出し、重複するものを除いた計4項目を決定。その上で、各年齢階層の菓子類の支出金額に占める比率を算出したのが次のグラフ。上で少し触れたが、例えば高齢者ではお菓子代総額の1割台後半、15.5%を他の和生菓子に支出していることになる。

↑ 菓子類の支出金額(単身世帯、月あたり、具体的項目の菓子類全体額に対する比率、年齢階層別に金額上位3項目ずつ抽出、年齢階層別)(2022年)
↑ 菓子類の支出金額(単身世帯、月あたり、具体的項目の菓子類全体額に対する比率、年齢階層別に金額上位3項目ずつ抽出、年齢階層別)(2022年)

それぞれ該当上位年齢階層で大いに好まれ、その他の年齢階層ではそれほど勢いよくは好かれていないパターンがあるのが分かる。とりわけ他の和生菓子や他の洋生菓子では大きな差が出ている。他の和生菓子においては大福もちならいちご大福、たい焼きでもチョコレートやチーズ、クリーム、そして昨今では一時期大ブームとなった白いたい焼きのように、若年層向けの商品も色々と登場しているが、まだまだ商品開発上の努力が必要なようだ。

むしろ最近では冒頭で例示した通り、若者向けと思われる菓子群が高齢層にすり寄る姿勢を示している。例えば抹茶のように若年層にも好まれる味のものならよいが、一連の傾向が逆に若年層の菓子離れを引き起こすのでは無いかとの懸念もゼロではない。



【コンビニレジ横の「和菓子」の謎】などでも触れているように、コンビニのレジ前のワゴンやレジ横に和菓子が並べられることが多いのは、高齢者に向けたアピールの意味合いが強い。それほど回転率の高い商品でもなく、目新しいものでもないが、なぜ「特等席」にあるのか不思議に思うかもしれない。しかし実は高齢者の常連化、あるいは客単価の向上を狙った配置であり、巧みな戦略の結果に他ならない。【「麦粉」「和三盆」を用いた古くて新しいお菓子たち、無印良品から登場】のように和菓子をわざわざ強調した上での新商品展開も、似たような「高齢者へのアピール」が多分にあると考えれば道理は通る。

今件のデータを見る限り、今後ますます増えるであろう単身の高齢者は、大福やどら焼き、串団子などの和生菓子、そしてせんべいに強い関心を抱いている。レジ横・レジ前ワゴンの菓子コーナーに並べられた品々を見れば、そしてコンビニ各社が続々と「和」の要素を取り入れた新スイーツを展開する状況を思い返せば、今件の結果も納得できるに違いない。


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