乳製品は上昇中、油脂・砂糖は前年比で大幅下落に(2013年3月分世界食糧指数動向)

2013/04/14 10:00

今から2年ほど前の記事で、国連食糧農業機関(FAO、Food and Agriculture Organization)発表による【世界食料価格指数(FAO Food Price Index)】が高い水準を維持し続けていることをお伝えした。この指数は、1990年以降にFAOが世界の食料価格の月単位での変化を発表しているもので、昨今の各種商品市場の動向、さらには政治情勢を判断する際には、非常に有益な値となる。そこで今サイトでは元データの更新(ほぼ毎月)のたびに、グラフの再構築と該当月の分析・精査を行うことにしている。今回はその2013年3月分の反映版となる。

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今記事のデータ取得元や用語の解説については、一連の記事のまとめページ【世界の食料価格の推移(FAO発表)】で行っている。そちらで確認を願いたい。

まずは、収録されている全データを使った折れ線グラフを生成する。中長期的な食料価格の変移概要がつかめる、資料性の高いものだ。もちろん最新の値も反映したものとなる。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2013年3月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2013年3月)

砂糖(オレンジ色の線で形成)は元々相場変動性の高い食料品のため、変動が激しい。しかしそれ以外の項目は2005年前後まで、50-150の領域(水準値100のプラスマイナス5割内)でほとんど留まっていた、つまりボックス圏内での価格変動だったのが確認できる。ところが2007年夏に始まる世界金融不況を皮切りに各値は大きな変動(特に上昇方向)を見せていく。「サブプライムローンショック」(2007年夏-)時の急上昇とその後の大きな反動による下落の後に起きた「リーマンショック」(2008年9月)以降は、多少の反動的減退はあるが、全体的に上昇する一方だった。

2011年後半期からは食品種類によって下げ率に違いはあるものの、少しずつ下落の動きが確認できる。とはいえ大きく下げているのは砂糖と油脂のみで、他の種類は高値で横ばい安定化の流れにある。

続いて、グラフ生成開始期間を2007年とし、直近の金融危機以降の動向が分かりやすいものに生成し直してみる。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2013年3月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2013年3月)

砂糖の2010年初頭からの急落ぶりが目立つ。400近くを示していたものが、数か月で200近くにまで落ち、ほぼ半減しているのだから驚かざるを得ない。これは元々過熱感のあった砂糖相場において、豊作の報をきっかけにした反動(反落)の結果。しかし価格上昇の原因「需要の拡大(新興国、特に中国)に伴う需給バランスの不安定感」は解決しておらず、一息つく間もなく、再び価格は上昇をはじめている。そして少し前までは高い領域(300を底値)での上げ下げを繰り返していた。この半年ばかりは下値抵抗線を破る形で値を下げ続けているが、これは豊作による供給増加、そして不景気による甘味需要の減退が原因とされている。もっともそろそろ底値を打つような動きを示しているのも見逃せない。

昨今の食料価格の上昇ぶりを確認するため、各指標の前年同月比、そして前月比を併記し、数字の変移が分かりやすいようにしたのが次のグラフ。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2013年3月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2013年3月)

前年同月比で油脂や砂糖の下げ方、そして穀物の上げ方がまず目に留まる。これは先月から継続している傾向。特に砂糖はこの1年間で大変動を起こしていることが、上記の折れ線グラフでも把握できるが、それだけ他の食品と比べて値動きが激しいことの表れでもある。もっとも前月比は油脂・砂糖とも落ち着き、砂糖に至ってはむしろプラスを示していることから(後述するがこのプラス化はイレギュラー的な要因によるもの)、値下がりもそろそろ底を打った雰囲気である。

リリースでは今月の動きについて「穀物指数に先月比で大きな動きは無し。米の価格は変わらず。アメリカの供給引き締めでトウモロコシが上昇したが、小麦が生育の堅調さを受けて下落したため、全体的には補完し合う形となった。また寒さの影響で一部値上がりを見せる種類もあった」「油脂指数は大豆油の下落が大きな下落要因となった。また南米やアメリカの気象条件の改善による大豆収穫量の増加予想、中国やアメリカの需要の減少が価格を押し下げている」「乳製品指数は大幅上昇。オセアニアにおける天候不順と生産縮小が主要因。また一部商品のブランド化による価格上昇も原因の一つ。さらにヨーロッパでの天候不順で牧草の生育が遅れ、それが牛乳の生産を落としているとの話もある」「食肉指数は安定。変動はイレギュラーの範囲内。ただし生産側のコスト高懸念は継続中」「砂糖指数は前月比で上昇。各生産国の生産量が堅調に推移し、輸出量も多分に見込めるため、しばらくは下降を継続中。今月上昇したのは、最大の輸出国ブラジルにおける輸出港での遅れが報告されたことによるもの」などと説明されている。

食料価格の上昇は一般市民の日常社会生活に大きな負担となる。毎日必ず一定量は消費するからだ。また急激な価格変動は生産・販売側の経済事情をも大きく変動させる。食料品の生産は作物の栽培・収穫サイクルから、概して年単位で行われるため、数日、数か月で目まぐるしく価格が変化すると、対応が仕切れずに、作り手の疲弊を招く。需給双方の立場からも、食料品の大幅な価格変動、特に価格上昇は好ましい話ではない。この数か月は比較的安定した動きを見せているが、いくつかの項目で上昇機運が見られるため、注意が必要となる。



砂糖食料価格の上昇要素は「新興国における需要の累乗的な拡大」「穀物を中心にバイオエタノールの材料への転用」「天候不順」「地力減退による不作」「商品先物市場への資金流入に伴う相場の過熱感(概して商品市場は株式市場などと比べて規模が小さく、資金流入により大きく値が跳ねる)」など、多種多様な項目が揃っている。そして価格が安くなる要素は「景気後退による需要縮小」以外に見つけにくい。科学技術の進歩による品種改良で増産は不可能ではないが(いわゆる「緑の革命」が一例)、地力を下げるリスクが多分にある。需給関係のバランスを大きく動かす事態(例えば世界的な異常気象)が発生しない限り、中期的には相場動向による上下を経て、値は上がり続ける。かつて原油輸出国だった国の多くが、自国の発展と共に消費量が増え、輸入国に転じる動きと構造的には変わりがない。

昨今では毎回確認している穀物の動向だが【農林水産省の海外食料需給レポート】の2013年3月分によると、主要穀物品種のうち小麦・とうもろこし・大麦で生産量が減少(気象変動起因がほとんど。例えば小麦はロシアやオーストラリアにおける乾燥が原因)、米はやや増加(東南アジア、中国での増産)。一方消費量も価格高騰で需要が減退し、米以外は減少(米はインドと中国の需要増で逆行高)、期末在庫量見込みは4銘柄すべてで減少する見込み(前年度比でマイナス1.0-1.7%)とのこと。

人が生命の営みを繰り返す上では欠かせない食事のベースとなる穀物価格、そして贅沢品のかなめとなりやすい砂糖や油脂の価格は、社会情勢の動向に大きな影響を与える。つまり各種食料品の価格は、社会・経済状況を反映していると表現しても良い。それだけに食料価格を世界的な視点で眺める材料となる、今件世界食料価格指数を注視し、その動向の変化を見極めたいところである。

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