消費者の購買意欲の改善…2013年3月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き下降

2013/04/09 15:45

内閣府は2013年4月8日、2013年3月における景気動向の調査、いわゆる「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、現状判断DIは先月から続いて増加して57.3となり、水準値50を上回った。先行き判断DIは先月から転じて減少したものの、水準値の50以上を維持している。結果として、現状上昇・先行き下降の傾向を示している。基調判断は先月から続き「景気は、持ち直している」としている(【発表ページ】)。

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先月に続き現状は全部門でプラス、先行きはプラマイまちまち


調査要件や文中のDI値の意味に関しては、今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で説明が行われている。そちらでチェックしてほしい。

2013年3月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス4.1ポイントの57.3。
 →5か月連続の増加。「やや良くなっている」が大幅に増加、「やや悪くなっている」が大幅に減少。「悪くなっている」「変わらない」も減っている。
 →家計では高額品や乗用車だけでなく春物衣料を中心に、消費者の購買意欲の改善が見られ、企業動向は円安に伴い、製造業を中心に受注・採算の改善が見られたことなどから上昇。雇用関連は建設業やサービス業などで求人の増加が継続しており、上昇。

・先行き判断DIは先月比でマイナス0.2ポイントの57.5。
 →株価や円安動向で景気回復の期待はあるが、原料価格や電気料金の上昇が懸念され、企業動向部門で低下。
今月は先月から現状は継続する形でプラスとなったが、先行きは輸入素材の価格の上昇への懸念、そして前体制の遺産ともいえる電力問題に絡んだ電気料金の上昇への心配が根強く、企業部門で低下。これが全体の足を引っ張り、先行きはマイナスとなった。冒頭の「景気の見方」のコメントは先月の「景気は、持ち直している」をそのまま踏襲、回復感は継続している。

「現状」上昇継続、「先行き」は天井の気配


それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI(-2012年3月)
↑ 景気の現状判断DI(-2012年3月)

今回発表分では先月に続き、すべての項目がプラス。先月は先々月と比べて上昇幅が縮まり、そろそろ上限に向けた調整に入る段階かとも思われたが、今月は再び大きく伸びを見せる項目が相次いだ。特に「飲食関連」の11.0ポイント上昇に目が留まる。またこの上昇を受け、すべての項目が基準値の50超えを果たすこととなった。同業界は厳しい状況が続いているが、それでも景気の回復感を覚える話が相次いでいるのだろう。

続いて景気の現状判断DIの動きを、長期チャートにしたもので確認していく。主要指数の動向のうち、もっとも下に落ち込みやすい雇用関連の指数の下がり度合いが分かりやすいよう、「前回の」不景気時、つまり2001年当時における下げの最下層時点の部分に、赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)(-2012年3月)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)(-2012年3月)

グラフの動きからは一目で分かる話だが、2007年夏以降の(サブプライムローン問題の露呈を皮切りにした)「金融危機」ですでに下落傾向を見せていたものの、2008年後半の「リーマン・ショック」をトリガーとし、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を大きく超えて下落する。そして2008年12月前後でようやくその動きも落ち着いた。その後2009年初頭以降に反動も合わせ大きく戻したものの、結局基準値50までには届かなかった。実経済の体感として、「可も無く不可も無く」とのレベルにまで好況感が得られなかったのだろう。そしてそれ以降は50を天井とし、小さな上下変動を繰り返していた(2010年頭から2011年2月まで)。

そして2011年3月において、東日本大地震・震災が発生。これを受けて全項目が、単月の動きとしてはリーマンショックを超える勢い(ほぼ垂直)で下落する。幸いにもその後の回復ぶりも記録的な上昇カーブ(これまた垂直に近い形)となり、同年7月分では震災直前の水準にまで戻している。合計値で50を大きく超えたのは2007年夏の金融危機以来はじめてのことだが、これは震災による垂直降下のリバウンドによるもので、景気が回復したとの実感では無く、むしろ「あの頃よりはマシ」という心理によるものと考えた方が無難。

そしてその「リバウンド」も長続きはしなかった。2011年8月以降は失速し、再び50を割り込んでいる。ところが2012年11月には「弱い上昇でしかなく、単なる反動か」の懸念を持ちながらも回復の兆しが見られ、その後のは上昇速度を強め、明らかに景気の回復が数字となっている。今回の判断文言「景気は、持ち直している」に実態感を覚える。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認済み。
・東日本大地震による震災で
イレギュラー的に急降下状態。
・震災前までの状況に
リバウンドも合わせ回復をしたが、
間もなく失速、低迷へ。
・政治環境の変化とそれに伴う
社会の動きで
上昇を継続する。
前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIそれぞれの下落にはタイミングの上でずれがあった。それに対し、直近の金融危機勃発から、リーマンショック時の大幅な下落期(2007年後半-2008年中)では一様に、ほぼ各線が重なる形で、しかも急速に落ち込んだ。日本だけでなく世界規模で一斉に景気が悪化したため、日本国内でも互いの数字の下落度合いがズレる余裕すらなかった結果によるもの。

そして2011年3月に発生した東日本大地震・震災の影響もまた、傾向としてはリーマンショック時の下げ方に近い。一か月で前回の不景気(2001年-2002年)の最悪期と同じ水準にまで一挙に落ちた状況は、「墜落」という表現の方が適切である。

震災直前までは、雇用指数とその他の指数の差が大きくなりつつあった。これはかつての2003年後半以降の傾向と類似しており、前回の事例が踏襲されれば「その時点での」景気状況の継続化、つまりどん底ではないものの、やや不況状態の慢性化に至る可能性が高かった。

しかし東日本大地震・震災がその可能性をなきものにしてしまう。そしてほぼ同時期に生じた欧州債務危機の懸念再来、さらには震災に伴う社会情勢の混沌化を起因とした電力不足の長期化が景況感にはマイナス要因として作用。マイナスのまま低迷する状況が続く雰囲気が数字にも表れていた。

そして昨年秋口以降においては、国内情勢の変化に伴い、明らかに、実態に裏付けられる形での景気感の上昇が表れている。やや加速しすぎの形を見せている(リーマンショック後のリバウンド時の動きに近い)が、本格的なトレンド転換が来たと考えて問題はない。

景気の先行き判断DIは先月のブレーキ感が継続、企業動向関連でマイナスが相次ぎ、全体では低下を示している。

景気の先行き判断DI(-2013年3月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2013年3月)

プラスの最高値は雇用関連のプラス1.6。一方で最低の伸び率は飲食関連のマイナス3.4。企業動向関連では押し並べてマイナス値を示しているが、これは上記にある通り電力価格・需給問題、そして輸入原材料価格の上昇に伴う懸念から生じている。もっとも下落幅は限定的で、基準値の50超えは前回から続き全項目。過去の事例(2004年前後の好景気)を見るに、このあたりが上限だろう。むしろ家計動向関連がやや上振れしている感がある。

「現状」のみならず今「先行き」でも他の指数より上乗せされやすいのが「雇用関連」の値。2007年からの金融危機による不況期に限れば、最高値を示した昨月の59.3からさらに上乗せし、60.9を示している。上げ幅も再び拡大したが、そろそろこちらも天井のようだ。

次の折れ線グラフ上の過去の動きを見れば一目瞭然なのだが、「雇用関連」の指数の動きは他の指数に先行する場合が多い。中でも「合計値」を下回った場合、過去二回において大規模な全体値の下落、つまり大きな景気の落ち込みが起きている(2001年前半と2008年前半)

4か月前の2012年11月にその大きな景気後退の前兆ともいえる「合計値>>雇用関連」という状況が発生したが、今回のクロスでは早くもその次の月(=先月)に切り返しを見せ、再び「合計値<<雇用関連」という形となった。今月も前月同様にその状態は維持されている。特にアノマリー的な話(パターンとして同じような状況は繰り返される)を気にしていた人には良い話である。

2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)(-2013年3月)
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)(-2013年3月)

先行きの合計DIはすでに2008年後半の時点で、前回の不景気時期にあたる2001年後半時期の最下方と同等、あるいはさらに下値に達していた。これは先行きに対する不透明感が強力で、前例のない不安を多数の人が感じていた現れである。そしてその後、2008年10月の「リーマン・ショック」で大きく底値を突き抜けてしまう。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。

その後は幾分立ち直ったものの、不安な心理状況に伴う五里霧中的な経済状態を反映するかのように、合計DIは基準値50を天井して、その下層での動きを続けていた。この「景気低迷感」は「現状指数」よりも顕著なもの。そして2011年3月の震災による大幅な下落は「リーマン・ショック」時と同じ、「すべての項目が一斉に下げ」たものとなった。しかも落下角度は「リーマン・ショック」ですらも超え、絶壁がグラフ上に形成されている。

その後発生した震災による下落のリバウンドも十分なものでなく、値は基準値50付近を迷走。現状指数と比べて50を突き抜けられなかったのは、明るい「見通し」が見いだせない、材料がない状況によるものと考えれば道理は通る。

そして現状指数同様、2012年11月以降はこれまでの低迷感を払しょくし、大きな上昇を見せている。この点ではむしろ現状指数を先行する形で動いていたが、先月指摘したように、天井を迎えた形となっている。

景気上向き感と共に原材料費の上昇、そして電力問題への懸念


発表資料には現状・先行きそれぞれの景気判断について、その判断を下した理由が詳細に語られたデータも記載されている。世間一般では一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、次の通りとなる。

■現状
・株価の上昇に伴い、販売数量の増加もさることながら、美術品や宝飾品などの高額商品が好調に売れている(百貨店)。
・天候、気温差も一因であるが、婦人服・紳士服ともに春物定価品の動きが良くなってきている。また株価の高騰も追い風となり、富裕層を中心に美術・宝飾といった高額品の動きも堅調な推移である(百貨店)。
・客の動きが変わってきた。新規来客数が半数を超え、成約の7割が新規顧客となっている。原因は新型車効果に間違いないが、株価上昇など景気浮揚が動機となった購入もみられた(乗用車販売店)。
・消費税率引上げが現実的にみえてきており、本格的な駆け込み需要が始まった感がある。実際いずれの客からも消費税率引上げ前にとの言葉が出てきている(住宅販売会社)。
・特売品や安い商品はよく動いているが、定番価格品や、肉、魚などの生鮮商品で単価の高い商品の動きが特に悪い(スーパー)。

■先行き
・大手企業のベア満額回答のニュースによる波及効果か、3月の年度末臨時手当を支給する地元企業が数社ある。今後の消費マインドの上昇に期待している(その他サービス[自動車整備業])。
・新政権の景気対策が少しずつ効果が現れてきており、明るいムードになってきているため、これからに期待している(衣料品専門店)。
・4月から電気料金や小麦粉など、消費者の生活に関わる商品の値上がりがあり、消費者の財布が厳しくなるのではないかと思う(一般小売店[和菓子])。
・電気・ガスなど生活関連の値上げがあるため、今後の生活には不安定な要素が多く、景気は簡単には回復しない(通信会社)。
世間一般に浸透する景況感のポジティブさに伴う消費性向の回復、高額商品の動きの活性化など、景気を底上げする話が相次ぐ一方、上記では取り上げていないが電気料金を中心としたインフラ系の安定感や価格上昇、原材料の値上がりに伴うコスト増に対する懸念も強い。

全体的には先月から継続する形で、昨年冬以降の国内環境の変化により、政策の正常化で景気がプラスに動くことへの直接的期待による先行挙動、さらに実際の政策による実働の影響が見て取れる。他方、特に先行き感においては状況の変化に伴うマイナス面への懸念が強く表れており、今後の対応に期待がかかる。



金融危機以降の
実経済の悪化で景況感も
マイナスのまま。
「底打ち感」もあるが
回復は難しく、さらに
リーマン・ショックが
追い打ちをかける。
その後も失策、対外要因で
低迷感は続く。
東日本大地震では大きな
変動が起き、その後は
景況心理は下げたまま。
昨年冬以降は国内の
政治環境の変化により
政策転換の期待と
実経済の変化が
景気を動かす流れに。
2007年夏に始まった直近の不景気は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンの踏襲が予想された。実際、それに近い動きを見せていたものの、2011年3月の東日本大地震・震災の影響は物理的な面だけでなく、消費者の心理にも大きな衝撃をもたらすこととなった。

震災は直接的、物理的な被害はもちろんだが、数々の不安要素が人々の心と行動を委縮させてしまう。表現を変えれば「マインドの保守化・防衛本能の発起」が、一般社会の経済行動では中心的な存在の中堅女性層に著しく表れる形となる。当然、小売セクターに大きな影響を与えている。

さらに震災後の混乱状況を「好機」ととらえ、煽動などで利益を成す者も多数登場している。山師やペテン師、さらには流れに乗る政治家や「自称」専門家も多数見受けられる。これら、従来ならば信用に足る人たちのゆさぶりが、社会全体の不安を一層募らせ、経済活動を委縮させる要因となり、元からの経済状況の悪化に伴う心理的な低迷感は継続し、深刻化していく。

背伸びそして直近数か月では上記の通り、日本国内の政治状況の変化により、不透明感が払しょくされ、期待に伴う動きが経済面でも表れている。すでに実体化している為替・株価動向や、次々に打ち出される具体的方策が、それらの期待を裏付け、後押ししている。他方、円安、というより適正レートへの為替変動に伴う原材料のコストアップや、電力をはじめとする「これまでの」政策に伴う負の遺産が気になる問題として、持ち上がり始めている。

今後は過去において打ち込まれたくさびを一つ一つ抜き取り、社会的不安定な状況下で闊歩した「魑魅魍魎」的な話(を語る人達)を適切に処理しながら、前進していく必要があろう。明日に希望が見出せるような道のりが示されれば、一人ひとりの不安も少しずつ和らぎ、景況感も改善する。そして回答者一人ひとりのマインドの集積による結果である「景気ウォッチャー」もまた、良い値を示し続けるに違いない。


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