オンラインはプラス6.9%と再成長の鼓動が聞こえ、紙媒体はさらなる失速の悲鳴がこだまする…米新聞社広告費動向(2012年4Q)

2013/04/09 08:45

日本同様、むしろ日本に先行する形でアメリカの新聞業界が厳しい状況に置かれているのは、多くの人が知るところ。その現状を推し量るため、部数や広告売上の推移をアメリカの新聞協会「Newspaper Association of America(NAA)」が公開しているデータを基に、今サイトでは定期的に確認している。広告費動向は最新データを基に年次分と四半期別のものをそれぞれ別々に以前記事にした。先日、同協会のサイトが一部リニューアルされ、それと共に各種データの更新が確認できた。そこで今回は広告費動向の四半期単位の記事について2012年4Qまでのデータを反映させ、状況チェックを行うことにする。

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データの取得場所や広告の種類に関する説明はまとめ記事【定期更新記事:米新聞社広告費動向(Q単位)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

年ベースでの動向を端的にまとめると次の通りとなる。21世紀への突入以降、2009年までは米新聞の広告収入は右肩下がりだった。代替ツールとなるインターネット、モバイル端末の普及により、ニュース情報配信という立ち位置が揺らいだのが主要因。2008年に起きたリーマンショックで2009年に大きく減少した反動もあり、2010年には前年比でようやく下げ止まり・上昇の動きを見せた。しかしその翌年2011年には早くも失速、再下降を迎えている(年ベースでの2012年分については機会を改め、解説する)。

↑ 米新聞の広告収入推移(前年比増減率、2011年分まで)(再録)
↑ 米新聞の広告収入推移(前年比増減率、2011年分まで)(再録)

「リバウンド」とはいえ、2010年において前年比でプラスを示したのはオンライン(インターネット、以下同)だけ。紙媒体は総じて「マイナス度合いが改善された」「下げ止まりの加速感が止まり、緩やかなものとなった」に過ぎず、額面ではマイナス(前年と比べて減っている)に違いない。

そして今回取得した直近四半期こと2012年第4四半期のデータがこちら。なお「1Q」「2Q」の「Q」とは「Quarter」、つまり「四半期」を意味する。例えば「4Q」ならば第4四半期、つまり10月から12月を表す。なおこれらの値は「直前四半期」との比較では無く、「前年同期比」であることに注意してほしい。。つまり「第4四半期は年末なのでブラックフライデー関係の広告が入り、他の時期よりも売り上げが伸びる」といった、季節特性などによる影響は受けない。

↑ 米新聞の広告収入推移(四半期区分)(前年同期比増減率、2012年3Q-4Q)
↑ 米新聞の広告収入推移(四半期区分)(前年同期比増減率、2012年3Q-4Q)

唯一プラスが「オンライン広告」である状況は変わらず。そろそろ他のパターンを見たいものだが、新聞の現状がそれを許さない。他は全部前年同期比1割前後の減少。総合計「紙媒体+オンライン合計」がマイナス8.46%と前四半期より悪化しているのは、オンライン以外の全分野でマイナス幅が拡大しているからに他ならない。

今回の四半期は上記で例示したように、年末商戦「ブラックフライデー」中の期間であり、広告出稿も派手に行われる。2012年の商戦動向は悪いという話は無かったものの、オンライン経由での買い物が増加する傾向にあった。紙媒体向けの広告費が前年と比べて落ち込み、オンラインが上昇するのも当然の成り行きかもしれない。

前年同四半期との比較ではなく、金額ベースの最新四半期分グラフは次の通り。伸び率ではオンラインが唯一プラスで奮闘しているが、売上金額では新聞全体を支えるには程遠い。この図式は日本とさほど変わらない。

↑ 米新聞の広告収入(四半期区分)(億ドル、2012年4Q)
↑ 米新聞の広告収入(四半期区分)(億ドル、2012年4Q)

米新聞広告関連の記事で繰り返している「オンラインは堅調」「紙は低迷・縮小継続」は今期2012年第4四半期の広告費にも現れている。アメリカではメディアの周辺環境に合わせた最適化、構造変化(「進化」とでも呼ぶべきか)は確実に歩みを進めている。そしてオンライン化した媒体ですら、適切な展開を心掛けないと、市場競争に敗れることになるのは【米The Daily、iPad版を廃刊...読者不足で赤字のため】などの実例にある通り。そしてオンライン広告も昨今では、かつては「急成長」の代名詞とする評価は過去のものとなり、絶え間ない努力と確実な成果が求められる状況下にある。

それがより確実に把握できるのが、次のグラフ。「四半期単位の前年同期比推移」を直近の金融危機が起きた2007年からグラフ化したもの。今回もリーマンショック(2008年秋)による広告需給の大幅悪化から立ち直りを見せた、2009年からのものも併記し、直近5年間における動きを確認する。

紙媒体の低迷とオンラインの堅調ぶりという動きは金融危機以前からのものであったこと。不景気の波にもまれて両者とも低迷したこと。そして上限を抑えられるような形だが、2009年後期からは戻しを見せたこと。その後、紙媒体の戻りは限界を迎えて失速し、再び低迷を続けている状態なのが分かる。

↑ 米新聞の広告収入推移(四半期区分)(前年同期比増減率、2007年-2012年4Q)
↑ 米新聞の広告収入推移(四半期区分)(前年同期比増減率、2007年-2012年4Q)

↑ 米新聞の広告収入推移(四半期区分)(前年同期比増減率、2009年-2012年4Q)
↑ 米新聞の広告収入推移(四半期区分)(前年同期比増減率、2009年-2012年4Q)

2011年に入ってからオンラインですらも成長スピードが落ちている(プラス圏にあるので成長そのものは継続中)実態がイレギュラーなものではなく、継続的な流れだったのが確認できる。インターネット内での囲い込み(具体的にはFacebookなどのソーシャルメディア)競争で、新聞がじりじりと有望分野ですら競り負けつつある状況が続いていた。しかしその失速ぶりも2012年1Qを底とし、再び成長率が上乗せされる、好ましい状態に移行しつつある。

ただしその分、紙媒体の下げ幅は加速的な拡大をとげている。2012年3Qまでに見せた、マイナス幅の縮小への動きから、大きな下落へとかじ取りをしている。とりわけナショナル広告の下げ幅(マイナス16.17%)は大きく、これが紙媒体方面の、さらには新聞全体の広告費の動向において足を引っ張る形となっている。



広告と関連する環境(今回は年末商戦における商品の売買ルート)がインターネットにシフトしつつある以上、広告もまたオンライン部門が伸び、紙媒体が落ち込んでいくのは必然となる。もっとも額面上はいまだに紙媒体部門の方が言葉通り桁違いに大きく、同率で紙媒体が下落し、オンラインが上昇したのでは、新聞広告全体の売上が激減するのは目に見えている。

今後アメリカの新聞業界がどのような形で「進化」を見せるか、それとも状況に流されるまま、収入、さらには規模そのものの縮小を続けるのか(現状では後者の比率が高い)。日本の新聞業界の行く先を占う意味でも、さらなる動向確認を続けたい。

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