前年から新人がいくぶん減少…デビュー歌手動向(最新)

2023/05/06 02:48

このエントリーをはてなブックマークに追加
2023-0423昨今では状況が一部変化を見せ始めているものの、音楽市場を支えるコンテンツである音楽には、歌手は欠かせない存在。その歌手が新たにデビューした数の推移は、音楽業界のすう勢を推し量る材料の一つになるはず。そこで日本レコード協会が2023年3月27日付で発表した白書「日本のレコード産業2023」をはじめとする経年の「日本のレコード産業」で確認可能な値を基に、デビュー歌手数の推移を確認していくことにする(【発表リリース:「日本のレコード産業2023」を発行】)。

スポンサードリンク


「初音ミク」に代表される「ボーカロイド」(ヤマハが開発した音声合成による歌声生成システム)ならパソコンがあれば誰でも歌手になることが可能(無論第三者に受け入れられるかは別問題)。さらに最近ではバーチャルユーチューバーの仕組みを連動させることで、かつてはアニメなどの世界でしか存在し得なかったバーチャル歌手の登場すらあり得るのが実情。しかし現状では音楽業界・市場には、生身のプロの歌手は欠かせない存在ではある。

ところが(現状の)歌手とて生き物に違いはなく、さらには老化、時代の流れに追いつけなくなるなどの理由で、新曲を永続的に出し続けるのは不可能。毎年多くの歌手予備群にある人たちが困難に立ち向かいながらプロデビューを目指し、一方で引退を余儀無くされる人が去り、音楽マーケットは常に新陳代謝が起きている。多くは何とかデビューを果たしてもメジャーにはなれず引退したり、あるいは地方巡業などでさらなる修行と実力の積み重ねを行うことになる。

新陳代謝の活性化は、その業界のすう勢を推し量る一つのバロメーター(もちろん「粗製乱造」など相反する要素と背中合わせである。また、新陳代謝の流れに巻き込まれることなく、「ベテラン」の域に達する匠的な歌手が多数いるのも事実)。それでは音楽業界のデビュー歌手数は、一体どのような推移を見せているのか。今資料では「日本レコード協会の会員社関係限定」数だが、デビュー・再デビュー数が公開されている。それをグラフ化したのが次の図(過去の記事から抽出するなどして、対象領域を1998年以降にまで拡大している)。なおこのデータでは表記は人だが、2人でも48人でも、複数人数によるグループの場合は1人として勘定している。実際には歌手一人一人でカウントした場合、この値よりも多い数となる。

↑ デビュー歌手数(人)
↑ デビュー歌手数(人)

データ範囲内ではもっとも少ない値をつけた2001年を境に大きな変化が起き、「デビュー数総計の増加」「再デビュー数の絶対数・全体に占める割合の増加」との二つの傾向が確認できた。特に後者においては、全デビュー数の2割前後が再デビューとの状態が維持されており、これが一種のトレンドであるかのようにも見えた。

ところが2009年以降は「デビュー合計数の減少」「再デビュー数の絶対数・全体に占める割合の減少」といった、ここ数年来の動きとはまったく逆の流れを見せ、特に2010年においては両傾向が著しく現れた(もっとも、デビュースタイルの変化、具体的には「ユニットデビュー率の増加」も推定される)。

直近の2022年では新人は減少、再デビューは増加、結果としてデビュー合計数は減少している。新型コロナウイルスの流行によりコンサートなどの機会は大きく減ったが、在宅時間の増加によって音楽の需要は増え、テレビなどの露出先需要も活性化したため、減少度合いはさほど大きなものとはならずに済んだのだろう。なお2022年におけるデビュー合計数に占める再デビュー数の割合は20.5%となっている。



音楽CD関係絡みの記事で繰り返し伝えているが、今世紀に入ってから「iPodに代表されるデジタル音楽端末や携帯電話・スマートフォンのようなモバイル端末など音楽配信メディアの多角化、購入実行までのハードルの低下(いわゆる「手元ですぐにお気軽購入」が可能)」「情報取得手段の進歩と情報そのものの増加による趣向の多様分散化」により、選択購入される音楽が分散化し、ミリオンセラーが生まれ難い状況が生じている。一方で、歌手数が多ければそれだけ多くの曲が世に出回ることになる。

歌手「歌手が増えたから曲が増え、視聴者の「好みの曲」が(より趣味趣向にマッチすべくものを選ぶ形で)分散化した」のか「視聴者の趣味趣向が分散化したので、市場がそれに併せるべく歌手が増加している」のか。どちらが市場動向の主要因なのかは判断が難しい。むしろ双方が同時進行をしていると見た方が正解だろう。あえて言えば後者、媒体の進化による後押しの方が強いと考えた方が道理は通る。またこの細分化が「ミリオンセラー」が生まれにくい一因ともいえる。選択肢が少数しか存在しなければ、ある程度の趣味趣向、好き嫌いは許容する形となるが、細かい好みに合わせた作品が多数登場すれば、個々の種類の販売数(≒ファン数)は分散化する。

これらの変化が、今後業界構造にどのような影響を及ぼしていくことになるのか。視聴側の購入・視聴、さらには音楽そのものへの考え方の変化、視聴メディアの変容とともに、業界は大きく変化をとげていく。新人歌手数はその変化に伴い、どのような動きを見せるのか。毎年数百人単位でデビューを果たす歌手のうち、どれだけの数がヒット曲を世に放つのかも併せ、気になるところではある。


■関連記事:
【購入者やや増加へ、レンタルは減少続く…CDの購入・レンタル性向(2014年)(最新)】
【「実在しないけど大人気」「驚くべきペースでファンをとりこに」内閣府の海外向け広報誌で「初音ミク」紹介】
【ネット口コミが好きな人はその情報のリアルへの口コミも良く行う】
【「けいおん!」主題歌の2曲が10万枚突破でゴールド認定】

スポンサードリンク


関連記事


このエントリーをはてなブックマークに追加
▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2024 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー|Twitter|FacebookPage|Mail|RSS