スマホ用は頭打ちに見えるがその実態は…有料音楽配信販売数と売上動向(2016年)(最新)

2016/04/13 05:41

音楽を聴取するメディアとして伸長いちじるしいデジタル媒体だが、それがビジネスとして売上に直接結びついているか否かとはまた別の話。以前の記事【世代別の「音楽との付き合い方」をグラフ化してみる】でも解説の通り、日本レコード協会の調査でも、有料聴取層や無料聴取層が減っている状況の一因には、好みのデジタル音源を多数取得したことによる満腹感があるとしている。この状況を売り上げの面から確認する意味も合わせ、今回は日本レコード協会が2016年4月8日付で発表した白書「日本のレコード産業2016」をもとに、従来型携帯電話向けの「着うた」「着メロ」、そして主にスマートフォン向けのダウンロード楽曲から構成される、有料音楽配信の売上件数と売上額を細密に区分した状態で、グラフ化と状況の精査を行うことにする(【発表リリース:「日本のレコード産業2016」を発行】)。

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天井感強し…パソコン・スマートフォン分野


有料音楽配信は主な配信先であるモバイル端末の情勢が大きく変化するに連れ、激変を遂げる最中にある。具体的には従来型携帯電話(フィーチャーフォン、いわゆるガラケー)向けの「モバイル部門」は利用端末数の減退や音楽視聴の様式変化から、販売実績を大きく減らし、スマートフォンやパソコン向けの「インターネット部門」はスマートフォンの普及率上昇と共に実績を伸ばしつつある。そして2013年においてはついに、「インターネット部門」は「モバイル部門」の売上高を超えてしまった。その傾向は直近となる2015年においても継続している。

それでは両部門における売上件数と総売上はどのように推移しているのか。まずは成長著しい「インターネット部門」改め「パソコン・スマートフォン部門」の結果を四半期単位の動きでグラフ化したのが次の図。後述するが数量が特定できないサブスクリプション(用意されている楽曲なら好きなだけ何度でも聴ける定額制の仕組み、及びその利用方法への権利料)は数量が計上できないことから数量・金額共に除外してある。

↑ 有料音楽配信売上実績コンテンツ別推移(インターネット、数量は万回、金額は億円)(-2015年)
↑ 有料音楽配信売上実績コンテンツ別推移(インターネット、数量は万回、金額は億円)(-2015年)

↑ 有料音楽配信売上実績コンテンツ別推移(インターネット、数量は万回、金額は億円)(2015年)
↑ 有料音楽配信売上実績コンテンツ別推移(インターネット、数量は万回、金額は億円)(2015年)

「改め」としたのは、実は「日本のレコード産業」では2013年分からデータの区切りを一部変更し、表記も変わったことが原因。構成要素に変化は無く(無いように当方で計算をし直している)、グラフ構築上でも問題はないのだが、時代・状況の変化を認識できる。

それはさておき。グラフを見ると、2005年第2四半期まではほぼ横ばいだった売上件数・額が同年第3四半期から突然動機付き、何度かの足踏みを経験しながらも大きく躍進を見せている。これは2005年8月にアップル社のインターネット音楽配信サービス「iTunes」がスタートし、多くの人が利用し始めたのが原因。巨大なコンテンツが供給される場が現れ、市場が一気に花開いた形だ。

それ以降2014年まで一様に、幾ばくかの戻しを見せながらも、上昇傾向は続いていた。しかし2015年Q1(第1四半期)をピークに、明らかに販売回数は減り、金額も横ばいに移行している。昨年の時点では「踊り場的」との表現を用い、満腹感や無料聴取機会の拡大の影響を受けての市場の飽和状態的な解釈をしたが、明らかに天井感の傾向にある。

詳細は後述するが、これは上記の通り回数の計上ができないサブスクリプション方式による音楽聴取の仕組みが急速に広まったことが原因。料理店ならバイキング方式(サブスクリプション方式)の店が続々と開店して人気を集め、単品メニューの購入方式(アラカルト方式)の利用客が奪われる形である。2015年は国内のサブスクリプションサービスとしてAWA、Apple Music、Google Play Music、LINE MUSICが続々とサービスを開始し、有料音楽配信市場はダイナミックな変化を遂げる、その初年を迎えているが、それがアラカルト方式における有料音楽配信市場の動向にも影響を与えたことになる。

下落止まらぬモバイル部門


従来型携帯電話向け音源による「モバイル部門」は「パソコン・スマートフォン部門」以上に興味深い展開を見せている。

↑ 有料音楽配信売上実績コンテンツ別推移(モバイル、数量は万回、金額は億円)(-2015年)
↑ 有料音楽配信売上実績コンテンツ別推移(モバイル、数量は万回、金額は億円)(-2015年)

↑ 有料音楽配信売上実績コンテンツ別推移(モバイル、数量は万回、金額は億円)(2015年)
↑ 有料音楽配信売上実績コンテンツ別推移(モバイル、数量は万回、金額は億円)(2015年)

用語の説明を一通りしておくと、次の通りとなる。

・(Master)Ringtunes…着うた

・Ringback tunes…呼び出し音(メロディーコールなど)

・シングルトラック…着うたフル

これを元に、図から見える「モバイルの」傾向を箇条書きにする。

・売上高は2008年、件数は2007年をピークに横ばい。件数はわずかに漸減傾向を見せていた。しかし2010年以降は両者とも顕著に減少の一途をたどっている。

・2011年にやや加速した減少ぶりだが、2012年は少しだけ下げ方がゆるやかになった。ただし減少を続けていることに違いはない。そして2013年以降も減少傾向は続いている。特に「着うた」の縮小ぶりが著しい。

・「Ringback tunes(呼び出し音)」は「着うた」と比べれば落ち込み具合は緩やかだが、それでも前年同期比で2割前後の減少を示している。

ほんの数年前までは有料音楽配信の売上の大半を担い、音楽業界全体の底上げ役も果たしていた「モバイル部門」だが、その勢いも今は昔。現状ではこのように急速に売り上げを縮小している。この理由は直上でも触れている通り、モバイル端末の利用スタイルがこの数年で大きく変化を果たし、従来型携帯電話からスマートフォンに移行する動きが起きているからに他ならない。

さらにいえば、デジタル系の音楽視聴を好む層が多いのは若年層だが、その層は同時にスマートフォンの普及率上昇が他の年齢層よりも速い傾向にある。その動きもまた、急激な状況変化を後押ししている一因である。

この両者の動きにおいて、「モバイル部門の減少分」<=「パソコン・スマートフォン部門」となれば、有料音楽配信全体の売上も増加していく。移行前後の利用スタイルがそのまま維持されれば、少なくとも両者はイコールで結ばれるはずだが、ここ数年は「モバイル部門の減少分」>>「パソコン・スマートフォン部門の増加分」であり、結果として【音楽CD・有料音楽配信の売上動向】で示したように、有料音楽配信部門は全体として、大幅に減少していた。ただし幸いにも直近の2015年は前年からサブスクリプションも合わせ「パソコン・スマートフォン部門」が大きく増加したことが貢献し、2014年に続き2015年も、全体でも前年比でプラスを計上している。

また2015年においては2014年に続き通期、そしてすべての四半期で、パソコン・スマートフォン部門の売上高がモバイル部門のそれを上回る結果が出ている。スマートフォンの普及ぶりを見れば当然ではあるが、モバイル端末における有料音楽配信市場でも、世代交代が確認された次第ではある。



かつて躍進を続けていた「モバイル部門」の有料音楽配信サービスも、新世代のモバイル端末たるスマートフォンの普及加速化を受け、金額の漸減傾向に歯止めがかからない。他方「パソコン・スマートフォン部門」においても成長の天井感が確認されており、これまでとは違う雰囲気が市場に感じられる事態が生じている。

LINE MUSIC音楽市場は(「市場」との言葉を使ってよいか否か迷うところではあるが)今件の「有料」音楽市場以外に、無料で提供される楽曲から成る「無料」音楽市場もあり、この市場(の利用者)も確実に増加している。音楽利用者の消費性向の変化を、業界関係各社・各員は十二分に吟味し、対応をしていかねばなるまい。

また上記各データには回数計上ができないために反映していないが、音楽配信売上の分野には「サブスクリプション」や「その他」の項目が存在する。前者は定額制サービスによる期間限定の使用権などによる売り上げ、後者はその他のデジタル音楽コンテンツの売上を意味する。特に「サブスクリプション」は大きく売り上げを伸ばしており、2015年第4四半期では「パソコン・スマートフォン部門」で41.12億円にも達している(前年同期比プラス84%の成長)。

「サブスクリプション」は他の様式と配信・販売方法が異なることなど、他の項目と一体化するのにはやや難を生じるため、上記の各グラフには反映させていない(今記事のグラフにおける有料音楽配信全体の金額を算出する際にも合算していない。ただし他記事で媒体を全部合わせた、業界全体としての有料音楽配信実績算出の際には計上している)。その動向をサブスクリプション単独で確認すると次の通りとなる。

↑ 有料音楽配信売上実績コンテンツ別推移(サブスクリプション、四半期単位、億円)(-2015年)
↑ 有料音楽配信売上実績コンテンツ別推移(サブスクリプション、四半期単位、億円)(-2015年)

2013年に入ってから従来型携帯電話における売上が減退し、パソコンやスマートフォンで大きく売り上げが伸びているのが分かる。シングルやアルバム、音楽ビデオ部門における売上の成長が止まったのも同じタイミングであり、2015年は売上に加速感が出ていることから、業界全体の成長の伸びしろ、そして2014年から2015年以降はアラカルト方式による有料音楽配信ですら、パソコンやスマートフォンのサブスクリプションに食われたと見るのが妥当なところだろう。


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