サブスクリプションがけん引…有料音楽配信販売数と売上動向(2017年)(最新)

2017/04/08 05:17

音楽を聴取するメディアとして伸長いちじるしいデジタル媒体だが、それがビジネスとして売上に直接結びついているか否かとはまた別の話。以前の記事【世代別の「音楽との付き合い方」をグラフ化してみる】でも解説の通り、日本レコード協会の調査でも、有料聴取層や無料聴取層が減っている状況の一因には、好みのデジタル音源を多数取得したことによる満腹感があるとしている。この状況を売り上げの面から確認する意味も合わせ、今回は日本レコード協会が2017年4月5日付で発表した白書「日本のレコード産業2017」をもとに、従来型携帯電話向けの「着うた」「着メロ」、そして主にスマートフォン向けのダウンロード楽曲から構成される、有料音楽配信の売上件数と売上額を細密に区分した状態で、グラフ化と状況の精査を行うことにする(【発表リリース:「日本のレコード産業2017」を発行】)。

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天井感強しに見えるが実は…パソコン・スマートフォン分野


有料音楽配信は主な配信先であるモバイル端末の情勢が大きく変化するに連れ、激変を遂げる最中にある。具体的には従来型携帯電話(フィーチャーフォン、いわゆるガラケー)向けの「モバイル部門」は利用端末数の減退や音楽視聴の様式変化から、販売実績を大きく減らし、スマートフォンやパソコン向けの「インターネット部門」はスマートフォンの普及率上昇と共に実績を伸ばしつつある。そして2013年においてはついに、「インターネット部門」は「モバイル部門」の売上高を超えてしまった。その傾向は直近となる2016年においても継続している。

それでは両部門における売上件数と総売上はどのように推移しているのか。まずは成長著しい「インターネット部門」改め「パソコン・スマートフォン部門」の結果を四半期単位の動きでグラフ化したのが次の図。数量が特定できないサブスクリプション(用意されている楽曲なら好きなだけ何度でも聴ける定額制の仕組み、及びその利用方法への権利料)は、それを含まない場合の総額、含めた総額の2種類を併記する。

↑ 有料音楽配信売上実績コンテンツ別推移(インターネット、数量は万回、金額は億円)(-2016年)
↑ 有料音楽配信売上実績コンテンツ別推移(インターネット、数量は万回、金額は億円)(-2016年)

↑ 有料音楽配信売上実績コンテンツ別推移(インターネット、数量は万回、金額は億円)(2016年)
↑ 有料音楽配信売上実績コンテンツ別推移(インターネット、数量は万回、金額は億円)(2016年)

「改め」としたのは、実は「日本のレコード産業」では2013年分からデータの区切りを一部変更し、表記も変わったことが原因。過去データも新しい仕切り分けに再計算されており(今記事でも反映済み)、分析の上では今はもう問題は無いのだが、時代・状況の変化を認識できる。

それはさておき。グラフを見ると、2005年第2四半期まではほぼ横ばいだった売上件数(数量)・額が同年第3四半期から突然動機付き、何度かの足踏みを経験しながらも大きく躍進を見せている。これは2005年8月にアップル社のインターネット音楽配信サービス「iTunes」がスタートし、多くの人が利用し始めたのが原因。巨大なコンテンツが供給される場が現れ、市場が一気に花開いた形だ。

それ以降数量は2014年まで一様に、幾ばくかの戻しを見せながらも、上昇傾向は続いていた。しかし2015年Q1(第1四半期)をピークに、明らかに販売回数は減り、金額も横ばいに移行している。これは上記の通り回数の計上ができないサブスクリプション方式による音楽聴取の仕組みが急速に広まったことが原因。料理店ならバイキング方式(サブスクリプション方式)の店が続々と開店して人気を集め、単品メニューの購入方式(アラカルト方式)の利用客が奪われる形である。2015年は国内のサブスクリプションサービスとしてAWA、Apple Music、Google Play Music、LINE MUSICが続々とサービスを開始し、有料音楽配信市場はダイナミックな変化を遂げる、その初年を迎えているが、それがアラカルト方式における有料音楽配信市場の数量における動向にも影響を与えたことになる。

他方、数量での加算は無いものの、金額では確実に上乗せが成されるサブスクリプション込みの金額合計は、2013年以降明らかに含まない金額合計との間にかい離を見せる。含まない金額合計が事実上2014年以降はほぼ横ばいなのに対し、込みの金額が大きく上昇している状況は、ひとえにサブスクリプションの金額が急成長した証拠に他ならない。回数の頭打ち状況を見て「有料音楽配信は天井」とする認識は、やや的を外したものとなる。

下落止まらぬモバイル部門


従来型携帯電話向け音源による「モバイル部門」は「パソコン・スマートフォン部門」以上に時代の流れを実感させる展開を見せている。

↑ 有料音楽配信売上実績コンテンツ別推移(モバイル、数量は万回、金額は億円)(-2016年)
↑ 有料音楽配信売上実績コンテンツ別推移(モバイル、数量は万回、金額は億円)(-2016年)

↑ 有料音楽配信売上実績コンテンツ別推移(モバイル、数量は万回、金額は億円)(2016年)
↑ 有料音楽配信売上実績コンテンツ別推移(モバイル、数量は万回、金額は億円)(2016年)

用語の説明を一通りしておくと、次の通りとなる。

・(Master)Ringtunes…着うた

・Ringback tunes…呼び出し音(メロディーコールなど)

・シングルトラック…着うたフル

これを元に、図から見える「モバイルの」傾向を箇条書きにする。

・売上高は2008年、件数は2007年をピークに横ばい。件数はわずかに漸減傾向を見せていた。しかし2010年以降は両者とも顕著に減少の一途をたどっている。

・2011年にやや加速した減少ぶりだが、2012年は少しだけ下げ方がゆるやかになった。ただし減少を続けていることに違いはない。そして2013年以降も減少傾向は続いている。特に「着うた」の縮小ぶりが著しい。

・「Ringback tunes(呼び出し音)」は「着うた」と比べれば落ち込み具合は緩やかだが、それでも前年同期比で2割前後の減少を示している。

ほんの数年前までは有料音楽配信の売上の大半を担い、音楽業界全体の底上げ役も果たしていた「モバイル部門」だが、その勢いも今は昔。現状ではこのように急速に売り上げを縮小している。この理由は直上でも触れている通り、モバイル端末の利用スタイルがこの数年で大きく変化を果たし、従来型携帯電話からスマートフォンに移行する動きが起きているからに他ならない。

さらにいえば、デジタル系の音楽視聴を好む層が多いのは若年層だが、その層は同時にスマートフォンの普及率上昇が他の年齢層よりも速い傾向にある。その動きもまた、急激な状況変化を後押ししている一因。

この両者の動きにおいて、「モバイル部門の減少分」<=「パソコン・スマートフォン部門」となれば、有料音楽配信全体の売上も増加していく。移行前後の利用スタイルがそのまま維持されれば、少なくとも両者はイコールで結ばれるはずだが、ここ数年は「モバイル部門の減少分」>>「パソコン・スマートフォン部門の増加分」であり、結果として【音楽CD・有料音楽配信の売上動向】で示したように、有料音楽配信部門は全体として、大幅に減少していた。その後「パソコン・スマートフォン部門」のサブスクリプションにおける急成長が貢献する形で、2014年以降は全体で前年比プラスを計上している。

なおモバイル部門ではサブスクリプションの売上は微少でしかないため、除いた・加えた金額にもほとんど差異が生じていない。金額を示す折れ線グラフは1本のように見えるが、ほぼ同じ額の2本がほぼ重なっているのが実態ではある。



かつて躍進を続けていた「モバイル部門」の有料音楽配信サービスも、新世代のモバイル端末たるスマートフォンの普及加速化を受け、金額の漸減傾向に歯止めがかからない。他方「パソコン・スマートフォン部門」においても成長の天井感が確認されており、これまでとは違う雰囲気が市場に感じられる事態が生じている。

LINE MUSIC音楽市場は(「市場」との言葉を使ってよいか否か迷うところではあるが)今件の「有料」音楽市場以外に、無料で提供される楽曲から成る「無料」音楽市場もあり、この市場(の利用者)も確実に増加している。音楽利用者の消費性向の変化を、業界関係各社・各員は十二分に吟味し、対応をしていかねばなるまい。

また昨今有料音楽配信の売上における大きなけん引役「サブスクリプション」にも注目すべき。これは定額制サービスによる期間限定の使用権などを意味する。今後さらに増加の一途をたどるのは容易に想像できるが、他方で通常方式の売上にどのような影響を与えるのか、気になるところだ。現状では通常方式は横ばいにあるので「成長分をサブスクリプションに食われている」と解釈することができるが、今後は通常方式の減退とサブスクリプションの増加が同時に生じるようになるかもしれない。


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