わずかに復調、3000億円を回復…音楽CD・有料音楽配信の売上動向(2016年)(最新)

2016/04/12 11:36

人々における音楽への興味関心の抱き具合に大きな変化はないものの、周辺環境の移り変わりに伴い、音楽として定義づけられた娯楽に対価を支払う動きは次第に縮小する方向にある。例えば日本レコード協会が先日発表した調査結果(【世代別の「音楽との付き合い方」をグラフ化してみる】)によれば、有料聴取層や無料聴取層が減り、無関心層が増えていることは一目瞭然。今回は日本レコード協会が2016年4月8日付で発表した白書「日本のレコード産業2016」を基に、いくつかのグラフを生成し、その「有料音楽離れ」の動きを再確認していく(【発表リリース:「日本のレコード産業2016」を発行】)。

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2007年がピーク…音楽ソフトと有料音楽配信の売上推移


まずは一番気になるであろう「有料音楽配信」(モバイル、そしてインターネットダウンロード(パソコン配信とスマートフォン双方))の2015年分における結果。金額としては470億7300万円、前年比でプラス7.7%の増加を示した。データの公開を始めた2005年から今回の2015年で11年目となるが、前年比でプラスの変化率を示したのは2009年分以降5年ぶりとなった2014年に続き2年連続の動き。従来型携帯電話(フィーチャーフォン)による着うたなどの売上を意味する「モバイル」は急速に減少を続けているが、代わりにインターネットダウンロード(iTuneなどのスマートフォン系含む)がアルバムで増加し、サブスクリプション(定額制方式に対する使用権の販売など)も大幅上昇を遂げ、今回年も「有料音楽配信」の全体額を押し上げる形となった。

↑ 音楽ソフト・有料音楽配信の売上推移(2005年-2015年)
↑ 音楽ソフト・有料音楽配信の売上推移(2005年-2015年)

2007年までは「音楽ソフトの売上減を有料音楽配信がカバーし、全体の売上は上昇していた」、つまり「音楽業界は売上では成長を続けており、CDなどの音楽ソフトの売上減は有料音楽配信にそのシェアを食われている」と解説できた。ところが2008年に至り、有料音楽配信の成長は続いているものの、それ以上に音楽ソフトの売上減が急速に進み、市場全体の売上も落ち込む結果となってしまった。そして2010年以降はモバイル端末市場の変化、具体的には従来型携帯電話からスマートフォンへのトレンドの移り変わりに伴う、利用者の有料音楽との付き合い方の激変によって、有料音楽市場も急速に縮退してしまう。

最新の2015年では上記で説明したように、サブスクリプションの大幅増加により従来型携帯向けを意味するモバイル部門の減少分を補完し切ることができ、有料音楽市場は拡大を示すことができた(詳しくは後日別途解説するが、サブスクに限れば前年比で6割近い増加)。

一方で音楽ソフトではCDの中でも特に洋盤の不調は続くが、音楽ビデオの中でもブルーレイディスクによるものが成長を続けており、全体として販売数ではプラス1%・金額でプラス6%の拡大をを示すこととなった。結果として音楽ソフト全体の売上は前年から転じてわずかではあるが拡大、アナログ・デジタルを合わせた音楽全体の売上も3年ぶりに増加へと転じた。

売上動向を長期視点で見ると……


音楽業界の動向を一歩引いた立場から眺められるのが次の図。上記のグラフを1990年までさかのぼって再構築したもの(有料音楽配信はデータ上に登場した2005年以降のみ)、さらに有料音楽配信と音楽ソフトの売上合計における両者の比率推移をグラフ化した。

↑ 音楽ソフト・有料音楽配信の売上推移(1990-2015年)
↑ 音楽ソフト・有料音楽配信の売上推移(1990-2015年)

↑ 音楽ソフト・有料音楽配信の総計売上に対する比率推移(2005年-2015年)
↑ 音楽ソフト・有料音楽配信の総計売上に対する比率推移(2005年-2015年)

有料音楽配信のデータは2005年からであることから、それまでは音楽ソフトのみのグラフとなるが、2004年以前は有料音楽配信そのものがごく少数だったことを考えると、グラフ形成上大きな問題は無い。過去のCD売上に関する記事でも述べているが、1990年代後半に音楽業界はピークを迎えており、それ以降は売上の面で漸減する傾向である実情が確認できる。

(従来型)携帯電話上の着メロがスタートしたのは1996年。ただし2004年以前は計測対象とならないほど売り上げが小さかったこと、そして音質の問題もあり、1996年-2004年の間の音楽ソフトの減少が、デジタル有料音楽配信のみに起因するとは考えにくい。2005年からは別途取り扱われるほどまでに有料音楽配信が成長し、一時期ではあるが音楽業界に救いの手を差し伸べた形になっているのが分かる。

2009年-2010年ではすでに1/4近くがソフト部門において音楽配信で占められていた。ところがそれ以降は上記で説明しているように、「従来型携帯電話からスマートフォンへの利用移行に伴う、音楽聴取者の有料音楽配信との付き合い方の変化」、そして某ユニット・グループによる手法で知られる特殊な販売スタイルに代表される「シングルCDの販促方法の多様化に伴う盛り返し」などがあり、少なくとも売上の面ではトレンドの変化が確認できる。そして2013年以降はそのドーピング効果も薄れ、再び減退に転じている。2015年は久々に増加に転じたが、サブスクリプションサービスという新たな音楽提供のスタイルに救われた感が強い。



音楽視聴需要の多様化などにより、この数年の音楽ソフトの売上は激しい動きを示している。今回年は0.1%ポイントとわずかではあるが、某グループによる特需が生じた2012年を除けば低迷感が続いていた売上動向の中で、非常に稀有な、注目に値する状況であることがうかがえる。

↑ 音楽ソフトの売り上げ推移(前年比)(-2015年)
↑ 音楽ソフトの売り上げ推移(前年比)(-2015年)

他方、有料音楽配信部門ではスマートフォンの台頭、急速な普及に伴い、大きな転換点を迎えている。曲の管理の簡易化と収録容量の増加、無料曲の増加、市場単価の減退、定額制サービスの普及など、多彩な売り上げ圧縮理由により、従量制的な従来の「有料」音楽市場が縮小を続けている。2015年のサブスクリプションによる売り上げ増は、見方を変えればアラカルト方式(1曲ごとの販売方式)の低迷に直結することになるため、諸手を挙げられる状況とは言い難い。あるいは音楽の利用スタイルそのものに大きな変化が生じている、生じさせた可能性はある。

今後さらにスマートフォンの普及率が高まり、多様なサービスが普及し、音楽への接触の様式が変わるに連れ、有料・無料楽曲感のバランス、聴取者の利用スタイルはどのような変化を見せていくのか。多分に拡大を続けているであろう無料音楽市場、さらには定額制の取得サービスの動向と合わせ、注視し続けたい。


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