週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(拡大版)…購入世帯率や購入頻度の移り変わり(家計調査報告(家計収支編)・二人以上世帯版)(2016年)(最新)

2016/03/11 10:19

デジタル媒体の伸長と共に、さらには金属疲労的体質の変容に伴う品質の劣化に伴い、新聞や雑誌、週刊誌をはじめとした紙媒体が、かつて有していた勢いを減じているのは、多方面の状況変化、各種調査結果から明確な形として表れている。またその変化も一様なものではなく、各媒体毎にその特質に連動する形で差が生じている。今回は総務省統計局が2016年2月16日付で発表した、【家計調査報告(家計収支編)における2015年分平均速報結果】の各種データを基に、世帯の大部分を構成する「二人以上世帯」における、週刊誌や雑誌、書籍など紙媒体に対する支出額の推移を確認し、状況の把握を行うことにする。

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買う人が少なくなり、買われる頻度も減少する紙媒体


グラフ生成に用いるデータの取得方法などは、これまでの「家計調査報告(家計収支編)」関連の記事にある通り。また「購入世帯数」「世帯購入頻度」などの言葉の概念は、今記事と深い関係のある先行記事【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編)・総世帯版)】にて解説しているので、そちらを参照のこと。

まずは主要紙媒体の購入世帯率を世帯単位で示したのが次のグラフ。各年ごとに、世帯単位で該当媒体を買った人が居るか否かの割合。1年の間に1部・1冊でも買えば該当することになる。全世帯が購入すれば100%となるので、最大値は100%。

↑ 主要紙媒体の購入世帯率(世帯単位)(二人以上世帯)(-2015年)
↑ 主要紙媒体の購入世帯率(世帯単位)(二人以上世帯)(-2015年)

「新聞」の世帯普及率は(今データの領域では)2002年の78.6%が天井。それ以降は毎年少しずつ、そして確実に減少している。今では「ほぼ1/3の二人以上世帯は新聞を取っていない」状態。一方で「雑誌・週刊誌」「書籍」「その他の印刷物」も少しずつだが確実に減少を続けている。「雑誌・週刊誌」はこの10年で7%ポイント強ほど減ってしまった。特に2012年以降は減退度合いが加速し、2015年では前年から0.6%ポイントも減少している。今や二人以上世帯では、10世帯のうちほぼ8世帯が「年間に1冊も雑誌を買っていない」計算になる。

続いて購入頻度。こちらは分かりやすいように月ベースで、世帯当たりどれ位の世帯が各媒体を購入しているかを示したもの。新聞の場合は自宅に投函してもらうタイプは「1か月分の契約」で1購入と換算する。例えば1か月31日分投函してもらったから100×31=3100%となるわけではない(要は契約率と見れば良い)。

↑ 主要紙媒体の購入頻度(世帯単位、月あたり)(二人以上世帯)(-2015年)
↑ 主要紙媒体の購入頻度(世帯単位、月あたり)(二人以上世帯)(-2015年)

2005年までは新聞の世帯頻度が100%近い状態だったが、それ以降は少しずつ、確実に低下を続けている。母体数が大きいから、数としては膨大なものになるのはいうまでもない(【新聞の発行部数動向】参照のこと)。先の「購入世帯率」と見比べると、世帯購入の減少分がそのまま購入頻度の低下にもつながっていることが分かる。つまり駅売りなどで販売される新聞には「大きな」変化は無いと考えられる。

2015年に限ると、新聞では購入世帯率同様、購入頻度も減退している。2012年は多少イレギュラーの可能性がある動きを示していたが(購入世帯率は落ちたものの、購入頻度は上昇した)、やはり特異な例、ぶれの範囲だったようだ。あるいは先行記事で言及している通り、震災の影響や新学習指導要領の影響の可能性はある。もっとも2005年にも似たような現象が確認されており、驚くほどのものでもない。

他の紙媒体も状況的にはさほど変わらないが、「雑誌・週刊誌」が2009年に多少持ち直しを見せているのが目に留まる。この値は「金額」ではなく「購入された度合い」を示すので、この業界にとってはポジティブな話といえる(要は購入者が購入頻度を増やした。同年の購入世帯数は増えていないので、購入者が増加したことは考えにくい)。しかし残念ながら2010年・2011年は再び大きな減少を見せ、2009年の持ち直しも帳消しとなった。それどころか2011年以降は下げ方が加速している。

この下げ方に加速がついた原因の一つとして考えられるのが、先の震災。これを起因と断言することはできないものの、タイミングは一致しており、要因の一つである可能性は高い。あるいは同時期に日本国内におけるスマートフォンの爆発的な普及率上昇が始まっていることから、むしろこれが多分に影響した可能性はある。いずれにせよ相関関係レベルでの推測であり、因果関係を立証するものでは無い。

媒体毎に購入頻度と購入世帯率をまとめてみる


「購入頻度」と「購入世帯率」の関係が分かりやすいように、「新聞」「雑誌・週刊誌」「書籍」それぞれについて抽出し、再構成したのが次のグラフ(「他の印刷物」は構成内容が雑多なので省略する)。

↑ 新聞の購入頻度と購入世帯率推移(二人以上世帯)(-2015年)
↑ 新聞の購入頻度と購入世帯率推移(二人以上世帯)(-2015年)

↑ 雑誌・週刊誌の購入頻度と購入世帯率推移(二人以上世帯)(-2015年)
↑ 雑誌・週刊誌の購入頻度と購入世帯率推移(二人以上世帯)(-2015年)

↑ 書籍の購入頻度と購入世帯率推移(二人以上世帯)(-2015年)
↑ 書籍の購入頻度と購入世帯率推移(二人以上世帯)(-2015年)

新聞は「世帯購入」の減少がそのまま購入頻度の減少につながっている形。また雑誌・週刊誌は「購入世帯率」以上に「購入頻度」の減少度合いが大きく、(新聞のように宅配による定期購入はあまり無いことから)「購入しない人が増えているだけでなく、購入者も購入冊数を減らしている」ことが推し量れる。とりわけ2011年以降の頻度の下落率がキツい。一方、今件項目中では書籍が一番減退の度合いは大人しい。とはいえ中期的に見れば、やはり減少の歩みを進めていることに違いは無い。



冒頭で触れた通り、この数年は殊更に紙媒体の販売不振ぶりが取りざたされている。しかし今グラフを見る限り、多かれ少なかれその動きは「不調」が声高に叫ばれる昔から生じているのが分かる。昨今の問題とされている事象は「昨日今日に始まったもの」ではなく、「前々から存在していたもの」で、それが顕著化・加速化しただけに過ぎない。

また、最後のグラフ群のうち「新聞」「雑誌・週刊誌」の推移を見れば分かるが、2005年前後を境に、特に「購入頻度」の値の減少が加速している。景気後退はもう少し先で、直接起因とは成りえない。この減少の理由はといえば、やはり携帯電話をはじめとするモバイル系情報端末の普及が影響していると見て間違いない。また本文で触れている通り、(特に移動過程の時間潰しとして)容易に代替されうるスマートフォンの普及が、「雑誌・週刊誌」の減退加速を招いた可能性は多分にある。

紙媒体は電子媒体と比べて購入ハードルが高い。「一人でも多くの人に定期的に購入してもらうこと」はとても重要である。新たな競合相手の登場、躍進で、日に日に過酷化する競争において、今後いかなる戦略のもとにかじ取りをしていくか。その結果は少しずつ、確実に今件データのような各調査結果に表れることだろう。


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