一人暮らしと夫婦世帯との間の「週刊誌や雑誌、書籍の支出額」の違いをグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編))(2016年)(最新)

2016/03/11 05:08

先に【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編)・総世帯版)】において、「二人以上の世帯」と「一人暮らしの世帯(単身世帯)」を合わせた「総世帯」、つまり全部の世帯における、「新聞や雑誌、書籍などの購入度合い」を検証した。今回は「二人以上の世帯」「単身世帯」それぞれ別個の紙媒体の購入頻度や購入額の違いを、2016年2月16日に年次データが更新され直近分となる2015年分が反映された【家計調査報告(家計収支編)】の内容を元に、精査していくことにする。

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単身世帯の新聞購入率は4/5


データの取得元だが、場所は【家計調査(家計収支編)調査結果】で先の記事と同じ。そのページにある「4.詳細結果表」の項目から、「二人以上の世帯」「単身世帯」それぞれ別個について、やはり同じように「購入世帯頻度」と「支出金額」を確認する。今回は収録されている年次データのうち、先日更新されたばかりの一番新しいもの、2015年分を用いる。

グラフ中などで使われている「世帯購入頻度」とは、世帯単位での購入頻度を指す。例えば構成員の誰かが特定期間に2回雑誌を購入すれば、その世帯の該当期間における購入頻度は200%。非購入世帯も含めての平均値であることに注意。また、単身世帯は当然構成員が世帯主一人しかいないので、本人のみの購入が計測されることになる。例えば単身世帯で月に4回(≒毎週)週刊誌を購入していれば、その世帯の雑誌購入頻度は400%となる。

まずは月次購入頻度。今グラフに関しては「世帯単位での動き」であることに注意。「単身世帯」は上記にある通り本人自身のみ、そして「二人以上世帯」は夫か妻の片方どちらか、さらには子供が購入しても(子供の小遣いによる調達までは「家計」にカウントしきれていないので、あくまでも「世帯全体のお財布から買った」もののみとなるが)「購入世帯」として該当する。

↑ 2015年における単身・二人以上世帯の月次購入頻度(世帯当たり)(総務省統計局発表)
↑ 2015年における単身・二人以上世帯の月次購入頻度(世帯当たり)(総務省統計局発表)

新聞は「二人以上世帯」が「単身世帯」よりも4%ポイント近く高い。家族を持つと新聞が入り用になるようだ。また「書籍」も7%ポイント近く上回っており、夫婦のそれぞれが、あるいはいずれかが読書のために書籍を購入しているようすがうかがえる。子供がいる世帯では、子供向けの書籍購入事例もあるのだろう。

「二人以上世帯は単身世帯と比べて、購入する機会がある人が2倍以上(少なくとも夫婦)なのだから、購入頻度が高くて当然」との意見もあるに違いない。それは一理ある。しかし「雑誌・週刊誌」では「単身世帯」「二人以上世帯」の差異があまりない。前年分では単身世帯の方が購入頻度は高い結果が出ており、「その場読み・時間つぶし・短期消費性向の強い「雑誌・週刊誌」はコストパフォーマンスに劣るため、消費の際にお財布事情を気にしやすい、あるいは配偶者の目が気になる「二人以上世帯」では、手に取られにくいと考えられる」と説明したが、今年分ではむしろ「単身世帯」の方がわずかながら値は低くなっている。

その現象の理由が分かるのが、前年となる2014年分のデータとの差異を算出した次のグラフ。

↑ 2015年における単身・二人以上世帯の月次購入頻度(世帯当たり)(総務省統計局発表)(前年比)
↑ 2015年における単身・二人以上世帯の月次購入頻度(世帯当たり)(総務省統計局発表)(前年比)

紙媒体が苦境の中にあるのは複数の調査結果から明らかにされているが、今件でもそれが表れる内容となっている。「単身世帯」における新聞購入頻度の増加はイレギュラーなように見えるが、それ以外は大よそ減退。特に「単身世帯」の「雑誌・週刊誌」の下げ幅は著しく、前年比でマイナス6.1%ポイントもの値が出てしまっている。今回年で同項目において「単身世帯」が「二人以上世帯」を下回る結果が出たのは、ひとえにこの急落が原因。「一人身世帯の急速な雑誌や週刊誌離れ」の表れか、単発的なものかは来年以降の動きを見るしかないが、気になる流れには違いない。金銭周りの余裕が「単身世帯」で特に減退し、優先順位の低い対象への支出が減らされた可能性はある。あるいはスマートフォンなどで時間つぶしは十分代替できるため、わざわざ買う必要もないと判断した人が増加したのだろう。

なお前年2014年においても、新聞における単身世帯の増加傾向が確認されている。つまり単身世帯は少なくとも2年連続しての購入頻度の増加が生じていることになる。これにはいくつかの要因が想定される。一つは乱数的要因によるもの(2回連続イレギュラーが生じる可能性はゼロでは無い)。いわゆる「ぶれ」。そしてもう一つは、恐らくこちらが本命だろうが、単身世帯における高齢層の増加に伴い、高齢者の購入性向が全体平均に与える影響が年々色濃くなる結果によるもの。

高齢層が新聞好きなのは良く知られている話だが、単身世帯では特にその傾向が強い。実際、2015年における単身世帯でその世代別の新聞購入金額を見ると(世代別購入性向のデータは公開されていないので、購入者・非購入者を合わせた平均購入額から購入動向を推測するしかない。また新聞単価そのものは種類によって大きな違いは無い)、若年層と高齢層との間で新聞購入への姿勢に大きな違いがあるのが分かる。

↑ 2015年における単身世帯・世代別・月次平均支出金額(総務省統計局発表)(新聞)
↑ 2015年における単身世帯・世代別・月次平均支出金額(総務省統計局発表)(新聞)

そして全体的な構成比率を反映することになる、家計調査における抽出率調整後の世帯分布を見ると、確実に高齢層は増加の一途をたどっている。

↑ 単身世帯・世代別・世帯数分布(抽出率調整)(家計調査・家計支出編)
↑ 単身世帯・世代別・世帯数分布(抽出率調整)(家計調査・家計支出編)

新聞をよく読む高齢層の回答者数比率が増えれば、(二人以上世帯も合わせた)新聞全体としての購入性向が減っていたとしても、購入頻度の値が前年比でプラスとなる結果が出ても何ら不思議では無い。来年以降も前年比はプラスとなるか、あるいはマイナスでもその減り方は小さめなものとなるだろう。

なお「他の印刷物」が「二人以上世帯」で前年比の上で変わらず、「単身世帯」も下げ方は大人しいが、これは具体的には「(映画などの)プログラム、カレンダー」「学生新聞、宗教新聞、点字新聞」などが該当する。元々絶対値が小さいこともあり、誤差の範ちゅうと見て良い。

金額ベースで動きを見てみよう


この動きを金額ベースで見たのが次のグラフ。子供の存在を考えると数字に大意はない(大人と子供で購入性向は大きく異なるにも関わらず、それらをまとめて計算してしまう)のだが、一応「二人以上世帯」では「一人当たり」も(平均世帯構成人数から)算出して、グラフを併記しておく。

↑ 2015年における単身・二人以上世帯の月次「世帯当たり」平均支出金額(総務省統計局発表)(二人以上世帯・平均構成人数3.02人)
↑ 2015年における単身・二人以上世帯の月次「世帯当たり」平均支出金額(総務省統計局発表)(二人以上世帯・平均構成人数3.02人)

↑ 2015年における単身・二人以上世帯の月次「一人当たり」平均支出金額(総務省統計局発表)(二人以上世帯・平均構成人数3.02人)
↑ 2015年における単身・二人以上世帯の月次「一人当たり」平均支出金額(総務省統計局発表)(二人以上世帯・平均構成人数3.02人)

購入頻度は多少ながらも「二人以上世帯」の方が上。過去においては「「単身世帯」の方が本の購入には多少ながらもおおらかな雰囲気が見受けられる」などの可能性から、金額面では「単身世帯の方が上」の動向が確認できたが、直近年となる2015年では全項目で「二人以上世帯」の方が上の結果が出てしまった。「単身世帯」の急速な紙媒体離れの表れといえる。

例えば購入頻度がダイナミックに減った「雑誌・週刊誌」は前年2014年分の「単身世帯」における月次購入額は360.0円。それが2015年では274.2円となり、85.8円も減っている。「書籍」は727.8円から656.4円と71.4円の減。購入頻度の減少も一因だが、金額面で見ても、紙媒体と距離を置く姿勢が明確に認識できる状況には違いない。



「新聞は二人以上世帯の方が購入頻度が高い」「単身世帯で急速な紙媒体離れ、特に雑誌や週刊誌との距離拡大が進んでいる」「新聞は高齢者の増加に伴い、単身世帯全体では購入される割体が増える傾向にある」など、業界を取り巻く現状・環境の再確認ができたことになる。とりわけ「雑誌・週刊誌離れ」は注意すべき動向といえる。

今後他調査などで各業界の動向を精査する際にも、今回の結果が役に立つに違いない。


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