キプロスが悪化、預金封鎖周りが原因か…EU失業率動向(2013年2月分)

2013/04/03 11:30

昨今では特にヨーロッパ諸国で問題視されているのが、「若年層の高失業率」。そこで【EU統計局(Eurostat)】で毎月定期的に発表している、失業率関連の統計データを元に2011年12月分以降毎月、当サイトでは最新情報の確認と情勢の分析を行っている。今回はその2013年4月2日発表・2013年2月分の値について各種グラフを更新し、状況の把握を試みることにした。なおギリシャの値が先月比でやや下がっているが、これは誤差修正によるものである(該当リリース:【Unemployment statistics】)。

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文中・グラフ中にあるEA17やEU27については一覧ページ【ヨーロッパ諸国の失業率動向(EU統計局発表)】上の解説部分で確認してほしい。

ILO基準における2013年2月時点の発表データによる失業率は次の通り。なおこのグラフもあわせ今記事では、直近2か月分のデータが未掲載(調査途中)の場合、原則として掲載時で公開されている最新月分のデータを代用している。

↑ 2013年2月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)
↑ 2013年2月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)

今回月も前月に続き、わずか0.1%ポイントの差ではあるが、スペインすら超えてギリシャがトップについてしまった。同国の状況悪化はさらに進んでいることの裏付けといえる。無論以前スペインの事例で言及したように、毎月複数の国で過去数か月分に渡り、ゼロカンマ数%ポイントの修正が行われており、0.1%ポイント程度の差異は、正直誤差の範囲でしかない。また全体的には債務問題でしばしば報道に登る国が上位に位置しており、失業問題と経済・債務問題がまったくの正比例・連動関係とまでは言わないものの、密接な関係にあることが分かる。

今回も前回同様、該当月の前月(2013年1月)の値との差異を計算し、グラフ化を行う。失業率は(直上の解説にある通り)、国毎に細かい修正が過去にさかのぼって行われることが良くある。そこで前月比の算出の際に、今回計測月より前の月のものでも、最新のデータへ差し替えられているものがあれば(今回の場合は2013年1月分などが該当)、新しい値を入力し直した上で計算を行っている。また直近分のリリース上に掲載が無いデータは、詳細のデータベースページ【Data Explorer】を参照した上で追加し、計算する(もっとも昨今では直接データベースから値を抽出している場合が多い)。

↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2013年1月→2013年2月)(またはデータ最新一か月前→最新)
↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2013年1月→2013年2月)(またはデータ最新一か月前→最新)

国内人口の多い・少ないや各国の統計上の誤差の大小などもあるため、プラスマイナス0.3%ポイント以内は誤差と見て、動きは無視しても問題ない(概して小国の方が誤差が出やすいため、0.5%ポイント位の方が良いかもしれない)。今回月ではキプロスが悪化の動きを示している。キプロスは昨今報じられたように、そして以前【国債・公債のデフォルト確率上位国をグラフ化してみる(2013年3月15日版)】【キプロス支援と預金封鎖と「預金税」と】でも伝えている通り、国際的な金融支援と引き換えに、一時的な預金封鎖が行われている。見方を変えれば、そこまで経済情勢が悪化しており、今回の失業率悪化も納得がいく。


↑ キプロスの預金封鎖を伝える報道映像。
↑ キプロスの預金封鎖を伝える報道映像。【直接リンクはこちら】

一方上記で触れたラトビアだが、現在使われている自国通貨ラトに代え、単一通貨のユーロを導入することをEU欧州委員会に申請している。これが承認されれば2014年1月から18番目のユーロ導入国となる。その申請に際しては経済状況の改善が必要不可欠であり、その努力が失業率の低減にも表れている。


↑ ラトビアのユーロ導入申請を伝える報道映像。
↑ ラトビアのユーロ導入申請を伝える報道映像。【直接リンクはこちら】

↑ 2012年3月-2013年2月での失業率(季節調整済)(ラトビア/キプロス)
↑ 2012年3月-2013年2月での失業率(季節調整済)(ラトビア/キプロス)

そして冒頭で触れている通り、昨今の失業問題の中でも特に問題視されているのが、若年層の失業率。直近の2013年2月時点では25歳未満の失業率はEA17か国で23.9%・EU27か国でも23.5%を記録しており、5人に1人以上(間もなく「4人に」1人になりそう)が失業状態にある。中でもギリシャの58.4%(2012年12月)、スペインの55.7%を筆頭にポルトガルやイタリア、スロバキア、そして上記で触れたキプロスなど、経済的に弱い国や労働市場での問題点を抱える国、急激に経済が冷え込んだ国の若年層失業率の高さが確認できる。

↑ 2013年2月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(2月データが無い国は直近分)
↑ 2013年2月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(2月データが無い国は直近分)

↑ 2013年2月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(2月データが無い国は直近分)
↑ 2013年2月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(2月データが無い国は直近分)

前述のようにプラスマイナス0.3%ポイント以内は誤差と判断すると、アイルランド、スウェーデン、エストニア、ルクセンブルグが悪化、ギリシャ、イタリア、リトアニア、オーストリア、アメリカが改善と読める。人口が小さな国では失業率もぶれが生じやすく、よほどの事態でない限りさほどの心配は要らないのだが、スウェーデンの1.0%・エストニアの1.5%の悪化が気になるところ。

もっともエストニアはこの1年間は多少の起伏を見せながらも全般的には改善方向の動きを示しており、今回はイレギュラーな流れとも考えられる。一方スウェーデンでは労働力の調整が続いており、これを受けて若年層の失業率は高止まりからさらなる上昇機運を示している。労働市場の調整過程で若年層がしいたげられる、万国共通のようだ。



失業今件記事のEU諸国に代表されるように、先進諸国で押し並べて若年層の失業率が高いのは、産業構造の変化、そして若年層が手掛けることが多い「技術が未習得、あるいは経験不足な状態でも可能な、比較的容易な作業」が機械化され必要人員数が減ったこと、そして為替レート上で相対的に賃金の安い新興国に、それらの作業が割り振られているのが主要因。つまり分業化が国境を越えて行われるようになった弊害ともいえる。

そして債務問題で国の財政の悪化による破たんを防ぐため、各国で緊縮財政が取られていることも悪化を後押しする大きな要素となる。緊縮財政をとればその国の国内産業が冷え込み、経済は低迷し、当然労働市場も緊縮する。家計において収支のバランスを改善するために出費を減らせば、食費も削らざるを得ず、食卓のレパートリーが貧しくなるのと同じである。

その上、ヨーロッパ諸国はやはり先進国同様に高齢化により就労年齢が上昇している。労働市場の上で、「高齢者が就業場所に居座り、席が空か」ず、若年層が割を食う事態に陥っている。また、すぐには利益が数字として表れない、それゆえに企業には「掛け替えのない財産」となる、「若年層の労働訓練・修練」は、短絡的な判断「即戦力にならない」「結果が出ない」がなされ、優先順位が下げられ、若年層の立ち位置はさらに悪化する。また既存労働者の権益を保護する動きが強まり、これが若年層の雇用窓口をさらに狭める結果につながっている。

昨今では【IMFの"「緊縮財政で景気回復」への総括"覚え書き・その2】などにもある通り、特に欧州方面での緊縮財政のリーダーシップをとっていたIMFも、「過度の緊縮財政方策では景気回復はおぼつかず、財政再建自身も困難さを増す」と判断し、これまでの自らの方針を修正、方針転換を図る姿勢を見せている。しかし一度勢いのついた動きを変えるには大きな力と時間が居るため、すぐに大規模な姿勢の変化はまだ見えてこない。

労働市場の検証や失業対策では、単純に数字だけを比べて「他国と比べれば良い方だから我慢しよう」では参考にした意味がない。「失業率の低い国、改善が出来た国から有益な手法を学び」「自国の特性を加味した上で、状況改善に役立てられるかを検証」し、積極的で先行きの明るい政策の実行が求められる。そして「安定性」という観点では短期間の労働契約ではなく、中長期的な雇用体系が望まれる。雇用はそのまま収入であり、雇用の安定は収入の安定に他ならない。

経済は多項目が連動するのが常であることから、単に雇用状況のみを改善しようとしても破綻する(逆の事例、半ば失敗例ともいえるのが、IMFのこれまでの方策)。社会福祉と雇用市場と経済すう勢、そして金融政策はお互いが密接に連動する。各国は個々の項目のみを見据えるのではなく、戦略的な観点に立ち、相互作用を意識しながら個々の政策を打ち出していく必要があろう。


■関連記事:
【日本の学歴・年代別失業率をグラフ化してみる(2012年版)】

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