年齢別の平均賃金の移り変わりをグラフ化してみる(2017年)(最新)

2017/02/26 05:30

以前と比べると随分と慣習としては薄れてきたが、それでもなお根強く残っているのが「年功序列制」。端的に説明するとエスカレーター式の出世・昇給制度で、歳を経れば誰もが昇進し、給与も増えていく仕組みである。今でもその仕組みが半ば以上残っていることに違いは無い。またそのような制度が明確化されていなくとも、同じ職場で経歴・経験を積めば有能な人材となり、その実力にあった評価がされれば、次第に昇格・給与の上乗せは望めることになる。それでは現在の日本においてはどの程度、年齢と賃金との間に関係があるのだろうか。厚生労働省が2017年2月22日付で発表した、賃金関連の情報を調査集積した結果「賃金構造基本統計調査」の最新版となる【平成28年賃金構造基本統計調査(全国)結果の概況】などをもとに、年齢と賃金との関係を確認していくことにする。

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男女で異なる年功序列制的な動きの実態


今回検証する賃金とは、「賃金(所定内給与額)」を指す。これは先行記事【フルタイムの平均賃金は30万4000円・前年比でプラスマイナスゼロ%(2017年)(最新)】で解説の通り、ざっくりと説明すると「基本給に家族手当などを足したもの」。通常はほぼ固定して受け取れる額を意味する。また今件はフルタイム労働者を意味する「一般労働者」を対象としたもので、フルタイムなら契約社員や派遣社員も該当する。ただしパートやアルバイトは「一般労働者」では無く「短時間労働者」なので、検証対象外となる。

↑ 雇用形態関連の分類。今件記事では「一般労働者」をチェックする。パートやアルバイトなどは除外
↑ 雇用形態関連の分類。今件記事では「一般労働者」をチェックする。パートやアルバイトなどは除外

まずは2016年における男女別・性別の平均賃金。

↑ 2016年の年齢階層別平均賃金(千円、月)
↑ 2016年の年齢階層別平均賃金(千円、月)

男性が50代前半まで年功序列制的に上昇、以降は下落傾向の動きをしているのに対し、女性は40代でほほ頭打ちの形をしている。男女とも50代以降、特に60代前半以降は大きな減少を示しているのは、(早期)退職で一度離職し、非正社員として再雇用される事例が増えてくるからだと考えられる(「賃金構造基本統計調査」では各属性の人数は公開されていないが、【正規・非正規就業者数の詳細をグラフ化してみる】などで該当年齢における正規・非正規社員の人数は、労働力調査のデータとして確認できる)。

女性は年齢階層別の差異はさほどない。こちらも多分に非正社員率が元々高いことが影響している。結果として若年・高齢層では男女の差が小さい傾向となる。

続いて同じ区分で前年比を計算したもの。

↑ 2016年の年齢階層別平均賃金(前年比)
↑ 2016年の年齢階層別平均賃金(前年比)

先行する「賃金構造基本統計調査」に関する諸記事にある通り、2016年は前年と比べて賃金(所定内給与額)の点では中堅層が軟調、若年層は堅調、そして性別では女性が堅調との結果が出ている。今件性別・年齢階層別の詳細で確認しても、その実情が良くわかる。なお60代後半で女性が大きなマイナス値を示し、グラフのバランスを崩すほどとなっているのは、この層の回答実数が少なくぶれが生じやすいことに加え、前年における前年比がプラス6.3%と大きな伸びを示したことの反動による部分もある。

また男女とも、特に男性において中堅層の賃金上昇率が低めどころかマイナス値を示す層があるのが目に留まる。高齢層の大幅な上昇は退職後の再雇用との事情があるにせよ、世代間格差の一端を見せられているようで、複雑な気分になる人も少なくあるまい。あるいは早期退職制度を適用した人によるものだろうか。

一部年齢階層の経年変化を検証


続いて過去のデータを絡めた、平均賃金の経年推移を年齢階層別に確認していく。男女のデータはそれぞれ存在するが、すべてを精査するとあまりにも雑多なものとなるので、男性に焦点をしぼることにする。まずは一番気になる人が多いに違いない、今件公開値では一番若い仕切りとなる、20代前半について。こちらは金額、さらには前年比の双方をグラフ化しておく。

↑ 年齢階層別平均賃金(20代前半男性、千円、月)
↑ 年齢階層別平均賃金(20代前半男性、千円、月)

↑ 年齢階層別平均賃金(20代前半男性、前年比)
↑ 年齢階層別平均賃金(20代前半男性、前年比)

金額の絶対額ではこの20年強の間ほとんど変化が無く、100円玉のやり取り程度の変化に留まっている(ただし直近年では上振れしている)。また、この時期においては消費者物価指数に大きな動きは無く、今値は実質賃金と変わりは無い。

2007年から2008年においては景気動向(サブプライムローンショックにはじまる「金融危機」は2007年夏から)に反して上昇しているが、手取りが低い非正社員(契約社員、派遣社員など)の失職が想定できる(実際、2008年分の該当属性の動向を見ると、前年比で正社員はプラス1.6%なのに対し、非正社員はマイナス1.3%を示している)。全体に占める「手取りの低い非正社員」の比率が下がれば、その母体での平均賃金は上昇するからだ。なお上記で解説の通り、パートやアルバイトなどの「短時間労働者」は今件「一般労働者」=「フルタイム労働者」には該当しないことにも留意しておく必要がある。

直近の2016年に限れば賃金は前年に続き大きく上昇。今回確認した期間内では最高値を示し、金融危機ぼっ発直前の水準を超えている。2013年以降前年比でプラスを計上し続けているのは、グラフの形状から見ても珍しい、そして喜ばしいパターンであることがうかがえる。

続いて30代前半-50代前半の前年比推移をまとめて確認する。



↑ 年齢階層別平均賃金(30代-50代前半男性、前年比)
↑ 年齢階層別平均賃金(30代-50代前半男性、前年比)

どの世代でも2009年の下げ幅は大きく、前年秋に発生した「リーマンショック」がいかに多大な影響を及ぼしていたかを一目て確認できる。50代の下げ幅は今世紀初頭の不景気に匹敵する値に留まっているが、30代・40代はそれをも超えており、非常に厳しい状況。とりわけ40代は前年の2008年にも大きく下げており、畳み掛ける様な賃金の引下げなのが見て取れる。

直近2016年はといえば、30代・40代はプラス圏だが50代はマイナス圏。上記でも言及しているが、早期退職者による再雇用組が平均値を引き下げた可能性が多分にある。とはいえ下げ幅も比較的おとなしい値に留まっているは幸い。

最後に、これらを一つにまとめたグラフを。

↑ 年齢階層別平均賃金(20・30・40・50代前半男性、前年比)
↑ 年齢階層別平均賃金(20・30・40・50代前半男性、前年比)

中期では30代前半が一番下側にいることに違いないが、金融危機ぼっ発以降(2008年以降)ではむしろ40代の下げ率が大きい。20代-30代、50代と比べ、1ランク下の動きのように見える。この年代の男性非正規社員が増えたのか、あるいは元々賃金が高く、しかも下げやすい層として経営陣側に目をつけられた可能性はある。

これらのグラフから分かるのは、今回対象とした1993年以降(前年比では当然1994年以降)では多少の起伏があるものの、賃金に大きな上昇・下落の変移は無い(毎年2%から3%内に収まっている)こと、そして年齢階層別に賃金の上下の点で格差が生じていること。すべての年齢階層で一斉に上昇・下落するパターンはほとんど無く、必ず互いに補完し合っているように見える。例えば2005年は30代・40代・50代がプラス、20代が大きくマイナスといった形である。今回はグラフが雑多になるため各年齢階層の後半(20代後半など)は略したが、仮に入れたとしても同じような傾向が確認できている。

ただし2009年は例外。補完云々などは無く、大きく下落している。2009年の急落ぶりと翌年の反動(ただし前年比プラスの動きを示したのは20代前半と50代前半のみ)がいかにレアケースであったか、つまり「リーマンショック」の影響力の大きさが改めて理解できるというものだ。

また今回年2016年は若年層では高い上昇幅、中堅層でかろうじてプラス、高齢層に差し掛かる層ではマイナス幅を示している。各年齢階層の労働市場の実情が大きく反映されたこの動きは、次年分の2017年も継続されることだろう。


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