正社員と非正社員の賃金差は?…雇用形態別の平均賃金をグラフ化してみる(2016年)(最新)

2016/02/24 12:23

社会現象としてクローズアップされつつある非正(規)社員の増加問題。その非正社員を正社員と比べた際に、もっとも大きな違いは賃金にある。実態として正社員・非正社員間の賃金の差異はどれほどなのだろうか。厚生労働省が2016年2月18日に発表した、賃金関連の情報をまとめた調査「賃金構造基本統計調査」の最新版に該当する調査結果【平成27年賃金構造基本統計調査(全国)結果の概況】をもとに関連データを抽出し、各種切り口から現状を掌握してみることにする。

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非正社員の賃金は正社員の6割台後半


今調査における労働者の区分や「賃金(所定内給与額)」の定義は、先行記事【フルタイムの平均賃金は30万4000円・前年比でプラス1.5%(2016年)(最新)】で詳しく解説した通り。今回スポットライトを当てる「正社員」「非正社員」の区分だが、後者は前者以外、具体的には契約社員・派遣社員・嘱託を指す。また今回は「一般労働者」、つまりフルタイム勤務の労働者を精査対象としており、パートやアルバイトに代表される短時間、あるいは限定日数での就労タイプ(短時間労働者)は該当しない。

↑ 雇用形態関連の分類。今件記事では「一般労働者」のうち「正社員・正職員」と「正社員・正職員以外」の違いをチェックする
↑ 雇用形態関連の分類。今件記事では「一般労働者」のうち「正社員・正職員」と「正社員・正職員以外」の違いをチェックする


まずは2015年における雇用形態別・性別の平均賃金。

↑ 雇用形態・性別平均賃金(2015年、千円)
↑ 雇用形態・性別平均賃金(2015年、千円)

当然の結果ではあるが、正社員などの方が賃金は高い。非正社員の賃金は正社員に比して、男性で6割強、女性でほぼ7割。

失業率の面では2014年と比べて改善が見られた労働市場(【日本の学歴・年代別失業率をグラフ化してみる】)だが、賃金の上でも正社員・非正社員共に状況の改善が見て取れる。もっとも大きな上昇率を示したのは男性非正規社員で、前年比3.1%の上昇となる。

↑ 雇用形態・性別平均賃金(2015年、前年比)
↑ 雇用形態・性別平均賃金(2015年、前年比)

男性非正規社員の賃金の上昇幅が大きいのは、労働力調査を元にした雇用状況に係わる精査記事でも言及しているが、早期退職・定年退職をした壮年層の男性正規社員が、同一あるいは系列企業で非正規社員として、嘱託などの立場で再雇用されるケースが多いことが主な要因。この場合、他の企業に非正規社員としての再雇用よりも、高めの賃金が設定される場合が多い。

実際、後述の通り、年齢階層別の賃金動向では、男性・非正規における対前年増減率において、壮齢・高齢層が大きな伸びを示しているのが確認できる。

男女で異なる世代別・雇用形態別賃金動向


続いてこれらを男女それぞれ、正社員・非正社員別に年齢階層での推移を見たのが次のグラフ。

↑ 雇用形態別平均賃金推移(男性、千円)(2015年)
↑ 雇用形態別平均賃金推移(男性、千円)(2015年)

↑ 雇用形態別平均賃金推移(女性、千円)(2015年)
↑ 雇用形態別平均賃金推移(女性、千円)(2015年)

↑ 雇用形態・年齢階級別平均賃金(2015年)(前年増減率)
↑ 雇用形態・年齢階級別平均賃金(2015年)(前年増減率)

男女とも非正社員の賃金は歳を経てもほぼ横ばいで、大きな差異は生じない。作業が比較的単純で、就業上経験の蓄積も考慮されない場合が多い、つまり正社員における「社内でのさまざまな実績・経験による積み上げ」が非正規社員には(少なくとも賃金面では)生じ得難いことが原因。特に女性は30代がピークとなっている。特殊な技術・資格を持ち、それこそ「渡りの職人」のような立場なら話は別だが、普通の非正社員には正社員と同じような「積上げによる賃金のかさ上げ」を期待できず、結果として賃金もそれ相応のものに落ち着いてしまう現実が、グラフのカーブ具合に現れている。

また前年比で見ると、2015年は「男女とも下落はごくわずか」「男性は若年層はそこそこ、中堅以降は非正規社員で大きな伸び」「女性は壮齢層以降で大きな伸び」の動きが見受けられる。全般的には中堅層がやや冷遇され、若年層と高齢層が厚遇、正規社員よりは非正規社員の方が賃金上昇には恵まれたと見てよいだろう。

なお「非正社員に『社内でのさまざまな実績・経験による(賃金の)積み上げ』を求めない、求められない」動きは、業務・事業が細分化・広大化している大企業ほどその傾向が強い。企業の構成人数が多いほど、一人ひとりは「オールマイティな能力」よりも「企業全体を正しく動かす部品の一つ」「歯車」であることが求められる。結果として正社員と非正社員の賃金の格差も、大企業になるほど大きくなる。

↑ 雇用形態別賃金格差(同属性正社員・正職員を100とした場合の賃金)(2015年)
↑ 雇用形態別賃金格差(同属性正社員・正職員を100とした場合の賃金)(2015年)

49.5%は「非正規社員になりたくない」、「でも自分もなるかも」は29.4%…募る新成人の非正規就労への不安】でも解説した通り、若年層における非正規就労(つまり非正社員化)への不安は大きい。その原因の一端を、一連の賃金グラフが示す実態から知ることができる。そして賃金の面で不安が高まれば、当然将来への不安も増加し、消費を避けざるを得ない(さらに雇用の継続性の不安もある)。現状が厳しくとも将来に金銭的な余裕が期待できれば、ローンを組むなりの工夫も凝らせる。しかし上記グラフにある通り、非正規社員の立場では歳を経ても賃金の上昇は期待できず、ローンなど論外、消費を抑えざるを得なくなる。

若年層に節約傾向が強く表れているのも、お金の余力が無く、将来にも金銭面ではあまり期待できないのが主要因。いわば自己防衛本能の現れといえる。自然な反応として消費をセーブにしているにも関わらず、鞭打つ形で若年層に消費を強要するのは無理話でしかない。

また今回の各値の動向からも確認できる、そして言及しているように、高年齢層の早期退職者や定年退職者の増加に伴い発生する、主に非正規雇用としての再採用に従い、全体的な非正規社員の賃金が今後も引き続き上昇することが予想される。しかし一方で若年層から中堅層の非正社員の賃金上昇幅はそれに及ばない。経済の活性化や中長期的な企業の成長のためには、若年層の正社員としての雇用促進と合わせ、非正社員においても若年層への賃金の拡大を願いたいものである。


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