正規社員と非正規社員の賃金差は?…雇用形態別の平均賃金をグラフ化してみる(最新)

2019/04/12 05:28

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2019-0402社会現象としてクローズアップされつつある非正規社員の増加問題。その非正規社員を正規社員(正規社員・正規職員)と比べた際に、もっとも大きな違いは賃金にある。実態として正規社員・非正規社員間の賃金の差異はどれほどなのだろうか。厚生労働省が2019年3月29日に発表した、賃金関連の情報をまとめた調査「賃金構造基本統計調査」の最新版に該当する調査結果【平成30年賃金構造基本統計調査(全国)結果の概況】を基に関連データを抽出し、各種切り口から現状を確認してみることにする。

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非正規社員の賃金は正規社員の6割台


今調査における労働者の区分や「賃金(所定内給与額)」の定義は、先行記事【フルタイムの平均賃金は30万6200円・前年比でプラス0.6%(最新)】で詳しく解説した通り。今回スポットライトを当てる「正規社員」「非正規社員」の区分だが、後者は前者以外、具体的には契約社員・派遣社員・嘱託を指す。また今回は「一般労働者」、つまりフルタイム勤務の労働者を精査対象としており、パートやアルバイトに代表される短時間、あるいは限定日数での就労タイプ(短時間労働者)は該当しない。グラフ中では「正規社員・正規職員」とあるのは正規社員、正規社員・正規職員以外とあるのは非正規社員を意味する。

↑ 雇用形態関連の分類。今件記事では「一般労働者」のうち「正社員・正職員」と「正社員・正職員以外」の違いをチェックする
↑ 雇用形態関連の分類。今件記事では「一般労働者」のうち「正社員・正職員」と「正社員・正職員以外」の違いをチェックする


まずは2018年における雇用形態別・男女別の平均賃金。

↑ 雇用形態別平均賃金(男女別、千円)(2018年)
↑ 雇用形態別平均賃金(男女別、千円)(2018年)

当然の結果ではあるが、正規社員の方が賃金は高い。非正規社員の賃金は正規社員に比して、男性で2/3ほど、女性で7割強。

完全失業率の面では2017年と比べて改善が見られた労働市場(【日本の学歴・年齢階層別失業率をグラフ化してみる(最新)】)だが、賃金の上では男女で大きな差が生じている。もっとも大きな上昇率を示したのは男性の正規社員で、前年比0.8%の上昇となる。色塗りの都合によりやや見え難いものとなっているが、左側・太枠表示が正規社員、右側・枠線無し表示が非正規社員である。

↑ 雇用形態別平均賃金(男女別、前年比)(2018年)
↑ 雇用形態別平均賃金(男女別、前年比)(2018年)

2018年においては男女を問わず正規社員と非正規社員との間で明暗が分かれる形になっている。このデータだけを見ると非正規社員の立ち位置にある人達が冷遇されたようにも見えるが、報告書ではこの件について、「日給や時給で働いている可能性が高いため、所定内実労働時間数の減少によるものと推測」「賃金分布では低賃金層は増加しているが、中ほどの層や高賃金層では減少。また正規社員の労働者の割合が増加していることを踏まえると、賃金の高い層の非正規社員の人が正規社員として雇用された、さらに高齢層では短時間労働者に移行したか引退したものと推測」などと説明されている。

要は労働時間が減ったので稼ぎが減った、高賃金層が正規社員として採用されたことから平均値が押し下げられた、高い賃金を得ていた高齢層が引退したか短時間労働者にシフトしたケースが多々あったなどを理由とするものである。毎年同じような状況は少なからず生じているはずだが、属性全体の平均値に影響をおよぼすほど大きな動きとなっているということなのだろう。昨今の雇用情勢を鑑みれば、理解はできる話ではある。

男女で異なる年齢階層・雇用形態別賃金動向


続いてこれらを男女それぞれ、正規社員であるか否か別に年齢階層での動向を見たのが次のグラフ。

↑ 雇用形態別平均賃金(男性、年齢階層別、千円)(2018年)
↑ 雇用形態別平均賃金(男性、年齢階層別、千円)(2018年)

↑ 雇用形態別平均賃金(女性、年齢階層別、千円)(2018年)
↑ 雇用形態別平均賃金(女性、年齢階層別、千円)(2018年)

↑ 雇用形態別平均賃金(対前年増減率、年齢階層別)(2018年)
↑ 雇用形態別平均賃金(対前年増減率、年齢階層別)(2018年)

男女とも非正規社員の賃金は年を取ってもほぼ横ばいで、大きな差異は生じない。作業が比較的単純で、就業上経験の蓄積も考慮されない場合が多い、つまり正規社員における「社内でのさまざまな実績・経験による積み上げ」が非正規社員には(少なくとも賃金面では)生じ得難いことが原因。特に女性は30代後半がピークとなっている。特殊な技術・資格を持ち、それこそ「渡りの職人」のような立場なら話は別だが、普通の非正規社員には正規社員と同じような「積み上げによる賃金のかさ上げ」を期待できず、結果として賃金もそれ相応のものに落ち着いてしまう現実が、グラフのカーブ具合に現れている。

また前年比で見ると、特段の傾向は見られないが、非正規社員の落ち込みが50代後半から60代前半以外で生じているのが分かる。理由は上記に示した通りで、雇用市場の改善が平均値を押し下げた結果であるため、一概に前年比での減少が状況悪化を意味するものでは無いことを記しておく。

「非正規社員に『社内でのさまざまな実績・経験による(賃金の)積み上げ』を求めない、求められない」動きは、業務・事業が細分化・広大化している大企業ほどその傾向が強い。企業の構成人数が多いほど、個人では「オールマイティな能力」よりも「企業全体を正しく動かす部品の一つ」「歯車」であることが求められる。結果として正規社員と非正規社員の賃金の格差も、大企業になるほど大きくなる。

↑ 雇用形態別賃金格差(同属性正規社員・正規職員を100とした場合の正規社員・正規職員以外の賃金)(2018年)
↑ 雇用形態別賃金格差(同属性正規社員・正規職員を100とした場合の正規社員・正規職員以外の賃金)(2018年)

【49.5%は「非正規社員になりたくない」、「でも自分もなるかも」は29.4%…募る新成人の非正規就労への不安】でも解説した通り、若年層における非正規就労への不安は大きい。その原因の一端を、一連の賃金グラフが示す実態から知ることができる。そして賃金の面で不安が高まれば、当然将来への不安も増加し、消費を避けざるを得ない(さらに雇用の継続性の不安もある)。現状が厳しくとも将来に金銭的な余裕が期待できれば、ローンを組むなどの工夫も凝らせる。しかし上記グラフにある通り、非正規社員の立場では年を取っても賃金の上昇は期待できず、ローンなど論外、消費を抑えざるを得なくなる(そもそも雇用の継続性すら疑わしい非正規社員では、ローン自体が査定で落とされてしまいかねない)。

若年層に節約傾向が強く表れているのも、お金の余力が無く、将来にも金銭面ではあまり期待できないのが主要因。いわば自己防衛本能の現れ。自然な反応として消費をセーブにしているにもかかわらず、鞭打つ形で若年層に消費を強要するのは無理な話には違いない。


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