高齢層と女性中年層でパート・アルバイトが大幅増加…非正規社員の現状をグラフ化してみる(最新)

2020/03/03 05:16

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2020-0224労働市場に関する状況の変化において、注目を集めている事象の一つが非正規社員(職員・従業員)問題。雇用者全体に占める非正規社員の比率が増加し、該当者の生活の安定性への懸念はもちろんのこと、職場における技術や経験の継承が困難となり、企業・業態そのものが脆弱化するとの指摘、報告もある。今回は総務省統計局が2020年2月14日に発表した、2019年分の労働力調査(詳細集計)の速報結果を基に、最新のデータによる非正規社員の現状を複数の視点から確認し、現状を精査していくことにする(【労働力調査(詳細集計)年平均(速報)結果発表ページ】)。

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増加続ける非正規社員数


元となるデータは「労働力調査(詳細集計) 令和元年平均(速報)結果」の「令和元年平均(速報)結果の概要、統計表」など。場合によってはその値を基に当サイト側で独自算出した指標を用いている。

まず最初に取り上げるのは、雇用形態別で区分した、非正規職員・従業員(非正規社員、非正社員)に関する直近と近年の人数推移。【「派遣叩き」がもたらす現実……企業は「派遣を減らしパートやアルバイトを増やす」意向】で解説している通り、「派遣叩き」が世論、そしてそれに後押しされる形で各種法規制によって行われ、多業種の企業は派遣社員を敬遠する傾向にある。彼ら・彼女らの雇用そのものがリスク扱いせざるを得ないのだから、企業側が避けるのも仕方が無い。

最新データが公開された2019年においては、景況感を受けて企業側による労働リソースの需要が拡大する一方で、コスト増への懸念や必要な労働力の柔軟化、閑散期と繁盛期の差が大きい第三次産業比率の拡大の動きが見受けられる。また主婦をはじめとした就業時間の柔軟性の高い点を評価した上での需要拡大と、正規雇用が困難な事例が多々見受けられる昨今の労働市場の状況は継続。

結果としてパート・アルバイト、派遣社員、契約社員・嘱託ともに前年比で増加することとなった。

↑ 非正規職員・従業員数(雇用形態別・男女別・年齢階層別、万人)(2019年)
↑ 非正規職員・従業員数(雇用形態別・男女別・年齢階層別、万人)(2019年)

↑ 非正規職員・従業員数(雇用形態別、万人)
↑ 非正規職員・従業員数(雇用形態別、万人)

↑ 職員・従業員数(前年比、雇用形態別、万人)
↑ 職員・従業員数(前年比、雇用形態別、万人)

特にパート・アルバイトは前年比でプラス29万人と大幅な増加を示している。この大幅な増加の原因は、詳しくは後述するが、高齢者における早期雇用退職制度適用者による非正規社員としての再雇用の機会を受けたものと、在学中の学生層における就業によるものである。

派遣社員の減少は「派遣叩き」の影響が出始め大きく値を減らした2009年、そして2010年と続き、ようやく2011年には前年比プラスマイナスゼロの領域まで回復した。この期間には同時にパート・アルバイトや契約社員・嘱託が増えているところから、単に労働力が過剰で非正規社員が減らされたのではなく、「派遣社員がバッシングで雇用し難くなったのなら、同じような作業はアルバイトや契約社員に任せよう」との意図を企業が実践していたことが分かる。もっとも2012年にはさらに数は減るものの、その年が2009年以降の動きでは底となる。

2013年では労働力そのものの不足に加え、景況感の回復に伴い労働市場の活性化が生じ、さらに団塊世代の定年退職を受けて高齢層の非正規雇用希望者としての供給が大幅増加。その上、それら高齢層の離職の穴を埋めるための非正規雇用としての求人も増え、いずれの形態でも非正規社員は大きく増加した。ただし雇用者全体数は微増しているが、正規社員は減少し、その分非正規社員は増加していることから、労働のスタイルそのものの変化(非正規化へのシフト化)が進んでいる現状が改めて見て取れる(正規社員の高齢者が定年退職して非正規社員として再就職するのだから当然の話なのだが)。

2015年以降は正規社員でも前年比で増加の動きを示しており、同時に非正規社員も増加を継続している。労働市場の回復ぶりや内部構造の変化に加え、企業側の求人内容の変化が生じている実態がつかみ取れる。派遣社員が増えているのは、正規社員の求人をしても人手を集められない企業が、派遣社員で代用する需要があるのも一因ではある(景気ウォッチャーのコメントでこの方式を用いている企業の弁が少なからず見受けられる)。

2019年時点では職員・従業員全体の61.7%が正規社員、残りがパートや派遣社員、契約社員などから成る非正規社員との計算になる。もっとも上記グラフにある通り、非正規社員は兼業主婦によるパート・アルバイトが多分に含まれていることに注意しなければならない。各算出値はあくまでも老若男女すべてを合わせた結果である。

↑ 職員・従業員全体に占める割合(雇用形態別)
↑ 職員・従業員全体に占める割合(雇用形態別)

このグラフを見ると、単純に非正規社員の割合が増加の一途をたどっているように見える。しかし、先の実数のグラフと照らし合わせると、景気後退の影響が出る2008年までは「正規社員数は横ばいか微減」「非正規社員数は増加」との構図、言い換えれば企業は「景気拡大期は非正規社員の増加で、業務拡大に対応していった」のが大きな流れであることが分かる。ちなみに「世間が派遣社員制度を叩き正規雇用を求める動き」と、「不景気で雇用調整が行われ、正規社員が減る時期」「不景気に加えて派遣叩きの世論で派遣市場が縮小する時期」、さらに「パートやアルバイトの増加時期」はほぼ一致する。

現在は景気後退・低迷期を抜け出て景況感の回復のターンのさ中にあるともいえるが、労働市場の内部構造の変化は続いており(上記に挙げた第三次産業比率の増加もその一要素)、効率的な企業経営の中で正規社員が必要とされるポジションが増えることはさほどなく、柔軟性に富んだ非正規社員の需要が増加している。ただし非正規社員枠ではまかないきれない職務領域の拡大や、非正規による求人では人的リソースを埋めきれない状況が増え、それとともに正規社員の求人も増加し、就業できるケースが増えている(労働市場の回復過程は概して「非正規の雇用増加」「正規の雇用増加」の順となる)。

また、定年退職者の再雇用や早期退職制度の適用、リストラによる中途退職者の増加も、昨今の労働市場においては重要な要素の一つ。繰り返しになるが、非正規社員の増加数では若年層よりはるかに多い中年層以降の増加が確認されている。とりわけ高齢者と女性中年層の増加が著しく、小売業などでの女性のパート・アルバイトの需要、定年退職者の再雇用が大幅に増加したものと見れば道理は通る。

↑ 非正規職員・従業員数(前年比、男女別・年齢階層別、万人)(2018年)
↑ 非正規職員・従業員数(前年比、男女別・年齢階層別、万人)(2018年)

2019年においては女性の15-24歳におけるパート・アルバイトも大幅に増加している。詳細データを確認すると、15-24歳のうち大学・大学院の在学中の状態の非正規職員・従業員は男女合わせて2018年で128万人だったのに対し、2019年では138万人と10万人も増加している。時給などの就業環境がよくなり、アルバイトにいそしむ大学生が急増したということだろう。学問に勤しむべき立場の者の非正規社員数の大幅増加が好ましいかとの問題は、疑問を呈するところではあるのだが。

失業者数の推移


正規社員は2018年の3476万人から2019年には3494万人となり、都合18万人増加している。一方で非正規社員は2018年の2120万人から2019年には2165万人となり、45万人の増加。結果として雇用者(職員・従業員)全体は正規・非正規合わせ(役員を除き)5660万人となり、前年の5596万人から64万人の増加となった(万人未満は四捨五入)。

前職の雇用形態別に離職した完全失業者数の推移を確認すると、前年より派遣社員は横ばい、正規社員は増加、パート・アルバイトと契約社員・嘱託は減少している。「仕事をしたくて職を探しているが見つからない人」の減少は、少なくとも雇用される・されないとの観点では労働市場が改善していることを意味する。正規社員の値が増えているのが気になるが、詳しくは別の機会で解説するものの、「よりよい条件の仕事を探すため」に離職し失業している人の数が多いため、転職過程にある人が増えていると考えることができる。

↑ 離職した完全失業者(前職の雇用形態別、万人)
↑ 離職した完全失業者(前職の雇用形態別、万人)

今データはあくまでも「過去1年間に前職を離職した者のうち」との前提があることに注意しなければならない。つまり「失業期間が1年以上」(なかなか再就職先が見つからない)の人は今グラフには反映されていないことに留意する必要がある。この「就職浪人1年超」に該当する人は2018年の53万人から2019年には51万人に減少している。

元派遣社員に対する風当たりの強さは継続中だが、少しずつ風は収まりつつある。次のグラフは各雇用形態別に「その時点で雇用されている人数」に対する、「前職でその雇用形態にいた人の完全失業者数の割合」を算出したものだが、元派遣社員の値がいまだに他の職種と比べれば高い値を示している。現状は29人派遣社員が雇われている場合、それとは別に1人が「元派遣社員の完全失業者」(失職してから1年未満)として存在する計算になる。

↑ 完全失業者の職員・従業員に対する比率
↑ 完全失業者の職員・従業員に対する比率

パートやアルバイト、正社員と比べて派遣社員は元々の人数が1ケタ少ないため(2019年では派遣社員は141万人、パート・アルバイトは1519万人、そして正規社員は3494万人)、単純な比率計算では「ぶれ」が生じている可能性はある。ただし10年来同じ計算式で同様の結果が出ていることから、その誤差は十分無視できる範囲に収まっていると考えてよい。解雇された派遣社員(の割合)の相変わらずの多さが認識できる。

完全失業者数の絶対数は元正規社員の立場にある人が一番多い(2019年は32万人)。しかし同じ雇用形態で現在働いている人に対する完全失業者数の比率を算出すると、元派遣社員の値が一番大きくなる。同じ雇用形態で再び就職を望む人が多い実態を考慮すれば、元派遣社員の辛さが再認識される次第である。



昨今の非正規社員の増加、雇用者全体に占めるシェアの増加の実情は上記にある通りで、労働市場の変化の表れの一側面に違いない。ただし一面的な数字のみにとらわれ、非正規社員の生活の不安定さを喧伝するばかりでは、全体的な実情を正しく把握できない。

上記の各種データにある通り、非正規社員そのものの構成や増加分の多分が、兼業主婦のパートやアルバイト、定年退職者や中途解雇者による中年層以降の再雇用から成る事実も認識する必要がある。また直近年の大幅な増加の中身が、それに加えて大学生などのアルバイト就業者の増加によるものもまた事実。正しい状況を把握せずに、全体的な、表面的な数字だけを振りかざして、バッシングの気運を高めれば、数年前の派遣叩きとその結末同様の愚が繰り返されてしまうことになる。

「木を見て森を見ず」的な判断を下さないよう、心から願いたいものだ。


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