約2/3が「今の日本はがん治療などで仕事を続けにくい」と回答する実態(2015年)(最新)

2015/01/21 08:20

日本における最大の死因となったがんだが、その検査や治療には少なからぬ時間が必要となる。一般的ながん検診は1つの部位に付き数十分で済むものの、事前の準備や待ち時間も合わせると、半日から1日丸ごと時間を空ける必要が生じる。ましてや治療が必要との判断が下り、通院治療となれば、月数回の通院が求められることになる。そのような状況に置かれた場合、今の日本では就業の継続は可能なのだろうか。内閣府大臣官房政府広報室が2015年1月19日に発表したがん対策に関する世論調査によると、調査対象母集団のおよそ2/3は「働き続けることは難しい」と考えていることが明らかになった(【発表リリース:がん対策に関する世論調査】)。

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他の病気同様にがんもまた、治療の開始時期が治療動向・リスクの高低に大きな影響を与える。そして早期治療のためには早期発見が欠かせないが、それには定期的な検診が必要不可欠になる。ところが日本のがん検診受診率は低く、対象部位にもよるが約3割から4割程度でしかない。

↑ 性別にみたがん検診を受診した者の割合(2013年)(過去1年間、但し子宮がんと乳がんは過去2年間)(再録)
↑ 性別にみたがん検診を受診した者の割合(2013年)(過去1年間、但し子宮がんと乳がんは過去2年間)(再録)

この「検診を避ける」状況を作り出す一因が、がん検診やがん治療に対する社会的認識。がん検診、さらにはがん治療では、冒頭で触れたように時間を割いた(=休みを取った上での)通院、場合によっては入院が必要になる。検診の場合は年に1度の期間、数回分(部位ごとに検診を行い、一度にまとめて受けられないこともあるため)で済むが、治療の場合は中長期に渡り月数回単位で定期的な通院が求められる。

そこで「2週間に1度(明記は無いが事実上1日丸ごとを使い)通院しなければならない」場合を仮定し、その場合、現代の日本社会は仕事を継続できる環境にあるかと尋ねたところ、「そのような状況でも仕事を続けられる」と考えている人は28.9%に留まっていた。対して「仕事の継続は難しそう」との意見は65.7%に及ぶ。

↑ 仕事と治療等の両立についての認識(2014年11月)(がん治療・検査のため2週間に1度程度病院へ通う必要がある場合、現代の日本社会は働き続けられる環境だと思うか)
↑ 仕事と治療等の両立についての認識(2014年11月)(がん治療・検査のため2週間に1度程度病院へ通う必要がある場合、現代の日本社会は働き続けられる環境だと思うか)

がん検診・がん治療に限った話ではないが、「体のメンテナンス、チェック」に相当する医療機関への時間投入には、厳しい目が向けられているとの認識が高い。

男女別では女性、世代別では若年層の方が、より一層「がん検診や治療通院で2週に1度定期的な休みが必要な場合、働き続けられない」とする意見が強い。これはこれらの層が就労的立場が弱いことに起因する。自分自身の立ち位置を思い返し、社会全体の状況を想像してしまうからに他ならない。

また30代でややイレギュラーな値が出ているが、40代以降は大よそ少しずつ「2週に1度の通院ならば、就業の継続は可能だ」の認識が増加するが、これは回答者自身の社会的・企業内の立場が高みに登り安定し、その程度の通院ならば周囲や企業そのものからにらまれることも無いと判断できるからに他ならない(要は自分自身における「もしも」を社会全体の認識と重ねてしまっている)。

しかし一方で、50代以降でも「通院・治療に至っても仕事を継続できる」とする意見は3割前後でしかない。企業、そして社会全体の理解度の低さが「がん検診そのもの、そして検診で仮にがんが見つかり通院治療を始めたら、仕事を辞めざるを得ない。あるいは時間を割けるよう配慮してもらうのは難しいので、通院治療そのものが不可能」との発想への原因となり、それががん検診率を下げる要因となっている。

実際、「そう思わない」派に具体的理由を聞いたところ、時間を割けるような職場環境に無いとの回答者が多い。体力や精神力の上での負担の増加を挙げる人は、相対的ではあるが少ない結果が出ている。

↑ がん治療・検査のため2週間に1度程度病院へ通う必要がある場合、現代の日本社会は働き続けられないと回答した、その最大の理由(2014年11月)
↑ がん治療・検査のため2週間に1度程度病院へ通う必要がある場合、現代の日本社会は働き続けられないと回答した、その最大の理由(2014年11月)

職場環境自身にリソース的・心理的余裕が無いのも原因ではあるが、何か必要な事態が発生した際に、該当者が席を外し他の人が一時的にバトンを引き受ける雰囲気、慣習そのものが薄いのが問題といえる。この点は育児休暇(特に男性)でも見られる事象で、大いに問題視すべき点である。

一応状況的にはこの2年ほどの間に改善が見られるようではあるが、全体としてはまだまだがん検診・治療に優しい職場環境が整備されているとは言い難い。

↑ 仕事と治療等の両立についての認識(がん治療・検査のため2週間に1度程度病院へ通う必要がある場合、現代の日本社会は働き続けられる環境だと思うか)(経年変化)
↑ 仕事と治療等の両立についての認識(がん治療・検査のため2週間に1度程度病院へ通う必要がある場合、現代の日本社会は働き続けられる環境だと思うか)(経年変化)

制度の整備と共に、がん、そしてそれ以外も含め、疾病そのものとその予防・検診・治療に対する認識や理解を一人一人が、そして社会全体が高めてほしいものだ。


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