「新曲知ったけど買ってない」最大の理由は「無料の配信サイトやアプリで満足」(最新)

2019/04/21 05:00

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2019-0419インターネットとそれを利用したサービスの拡充で、対価を支払わなくとも音楽を楽しめる場面は大いに拡大した。音楽に興味はあるが、新曲を見聞きしても購入までには至らず、無料の機会で満足する層の割合は、確実に増加している。今回は日本レコード協会が2019年4月に発表した最新の調査結果資料「音楽メディアユーザー実態調査」(2018年度版)から、音楽にお金を支払ってはいないが、無料の機会で新曲を聴いた経験がある人に、なぜ購入にまで至らなかったのかについて尋ねた結果を見ていく。対価支払いというハードルを超えなかった人たちの理由から、音楽業界の問題の一端を知ることができるかもしれない(【発表リリース:2018年度「音楽メディアユーザー実態調査」報告書公表】)。


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調査対象母集団の要項は今調査に関して先行する記事【年齢階層別の「音楽との付き合い方」】を参照のこと。

今調査では音楽との接し方に関して、新曲への関心度や商品購入などの面から、大きく次の4つに区分を設定している。

↑ 該当期間における音楽との関わり合いでもっとも当てはまるもの(属性別)(2018年)(再録)
↑ 該当期間における音楽との関わり合いでもっとも当てはまるもの(属性別)(2018年)(再録)

・有料聴取層:
「音楽を聞くためにCDや有料音楽音源など音楽商品を購入したり、お金を支払ったりしたことがある」(定額制音楽配信や有料のコンサートへの参加も含む。通信料金や聴取機器の購入は除く)

・無料聴取層:
「音楽にお金を支払っていないが、無料動画サイトやテレビなどで新たに知った楽曲を聴いた経験がある」

・無関心層(既知楽曲のみ):
「音楽にお金を支払っておらず、以前から知っていた楽曲しか聴かず、新曲は(テレビなどでも)聴かない」

・無関心層:
「音楽にお金を支払わない。特に自分で音楽を聴かない(音楽には特段積極的な好意、関心を持たない。音楽への本当の意味での無関心派)」

今回はこの4区分のうち「無料聴取層」、つまり「新曲に興味はあるが該当期間において、新曲を含め音楽そのものへの対価を支払った経験が無い」人達に、どうして購入しなかったのか、その理由を尋ねたもの。新曲への興味はあるはずなのに、なぜお金を払ってCDや音源を買わなかったのだろうか。

なお今件設問は択一回答のため、最大の影響を与えた理由が提示されている。その理由のみで購入行動をとらなかったとは限らず、相対的に影響力は小さいものの、他の項目も非購入の理由となっているケースは多々想定できる。

↑ この半年間に「新たに知った曲」を購入しなかった理由は(択一回答、無料聴取層限定)(2018年)
↑ この半年間に「新たに知った曲」を購入しなかった理由は(択一回答、無料聴取層限定)(2018年)

最上位の回答は「無料の音楽・動画配信サイト、アプリで満足」の30.1%。直接的表現としてはこれ以上の意味合いは無いが、その背景にあるものを考えると、他の項目との関連性・連動性も多分に想起される。特に第2位の「現在保有している音楽で満足している」とは近い立ち位置にあるものと考えられる。現状の音源で満足できる音楽環境を構築できているので、新たな音楽・音源に対価を見いだせない。どちらがより自分にとってウェイトが大きいかであり、実のところ大きな違いは無いように見受けられる。この両選択肢が他から群を抜いて高い回答率を示している実情を見ても、音楽に興味があるが対価を支払っていない層の心境が浮かんでくる。要は「お腹いっぱいなので新たに購入判断をするまでの魅力に新曲が届いていない」である。

第3位と第4位はいずれも金銭面への指向がより強い「金銭的余裕無し」「音楽に興味はあるがお金を使おうとは思わない・思わなくなった」。前者は個人的なお財布事情も少なからぬ影響はあるのだろうが、出費の優先順位の上で音楽への評価が下がったと考えれば、行き着くところは上位陣の選択肢と大きな違いはない。

第5位の「CDや楽曲を手に入れたいとは思わない」は解釈が難しいところ。無料でも必要が無い、手元に音楽を残しておきたいとは思わないとの発想は、音楽そのものへの関心が薄れているのか、関心を覚えさせる曲に出会っていないのか、音楽そのものはすでに手元に必要な分だけあるので新たに手に入れる必要はないと考えているのか。多分に第4位までの回答と心境的にはダブっているように思える。

音楽業界だけで無くコンテンツビジネスで問題視されている不法・違法的な手法との関係が疑わる項目は「インターネット上から無料で楽曲をダウンロードした」「友人などからCDを借りたり録音してもらい無料で入手」などがあるが、回答はさほど多くない。しかも回答者の行為がすべて不法なものか否かは今件では判断できない。CDへの特典やライブ・コンサートへのシフトも回答率はごく少数(見方を変えればこれらの理由は、有料聴取層から無料聴取層へのシフトの理由としては、ごく些細なものでしかないと判断できる)。

無料聴取層においては個人ベースでの音楽資産の増加による「満腹感」が拡大し、さらに(自分にとっての評価が下がり)金銭的余裕が無くなったため、購入を決断するまでのハードルが上がり、無料の音源で満足してしまう。食欲のように「満腹でもデザートは別腹」とはいかない。

前年比を確認すると、「無料の音楽・動画配信サイト、アプリで満足」が大きく伸び、それ以外の上位陣も増加が確認できる。

↑ この半年間に「新たに知った曲」を購入しなかった理由は(択一回答、無料聴取層限定、前年比)(2018年)
↑ この半年間に「新たに知った曲」を購入しなかった理由は(択一回答、無料聴取層限定、前年比)(2018年)

直接的対価が得られない理由が増えている実情は、ビジネスとしては頭を抱える状況に違いない。

一方で無料聴取層が用いている方法を上手く活用し、自らの知名度アップやセールスに役立てている歌手や事務所、グループもある。現状を把握した上で、それをどのように分析し、音楽資産の飽和を感じる人が増えてきた昨今において、いかなる手立てを打つべきか。この判断は音楽業界関係者にゆだねられている。そしてその判断次第で、今後の業界の方向性と市場の距離の伸び縮みが決まっていくに違いない。


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