「新曲知ったけど買ってない」最大の理由は「今ある曲で満足」(2014年)(最新)

2014/03/20 14:30

インターネットとそれを利用したサービスの拡充で、対価を支払わなくとも音楽を楽しめる場面は大いに拡大した。音楽に興味はあるが、新曲を見聞きしても購入までには至らず、無料の機会で満足する層の割合は、確実に増加している。今回は日本レコード協会が2014年3月17日付で発表した最新の調査結果資料「音楽メディアユーザー実態調査 2013年版(概要版)」から、音楽にお金を支払ってはいないが、無料の機会で新曲を聴いた経験がある人に、なぜ購入にまで至らなかったのかについて尋ねた結果を見ていくことにする。対価支払いというハードルを超えなかった人たちの理由から、音楽業界の問題の一端を知ることができるかもしれない(【発表リリース:2013年度「音楽メディアユーザー実態調査」報告書公表】)。

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調査対象母集団の要項は先行する記事【CDの購入・レンタル性向をグラフ化してみる】を参照のこと。

今調査では音楽との接し方に関して、新曲への関心度や商品購入などの面から、大きく次の4つに区分を設定している。

↑ 該当期間における音楽との関わり合いでもっとも当てはまるもの(2013年、半年間)
↑ 該当期間における音楽との関わり合いでもっとも当てはまるもの(2013年、半年間)

有料聴取層/無料聴取層/無関心層(既知楽曲のみ)/無関心層

今回はこの4区分のうち「無料聴取層」、つまり「新曲にも興味はあるが該当期間において、新曲を含め音楽そのものへの対価を支払った経験が無い」人達に、どうして購入しなかったのか、その理由を尋ねたもの。新曲への興味はあるはずなのに、なぜお金を払ってCDや音源を買わなかったのだろうか。

↑ この半年間に「新たに知った曲」を購入しなかった理由は(2013年、複数回答、無料視聴層限定)
↑ この半年間に「新たに知った曲」を購入しなかった理由は(2013年、複数回答、無料視聴層限定)

最上位の回答は「現在保有している音楽で満足している」で39.0%。これは有料視聴層において購入額が減った人の理由の最上位にある「現在保有音楽で満足」、言い換えれば「個人的音楽飽和状態」と同じ。むしろ今件の方がより飽和しているといえる。何しろ購入が一切なかったのだから。デジタル音源利用の拡大で、「お腹いっぱい」になる人が増えた、あるいは所有音源・CDで満足せずに新規楽曲を買いたいと思わせるほどの魅力が、新曲には無かったことになる。

次いで多い回答は「YouTubeなどを使って購入しなくても好きな時に聴取できたので購入しなかった」。34.2%とほぼ1/3に達している。そして「パソコンやスマートフォンなどで無料動画配信サイトでの聴取が増えた」が28.9%と3割近く。いずれも無料視聴が有料購入・サービスの利用・購入を代替している形となる。

続く理由としては「購入したいと思ったが金銭的余裕が無かった」「パソコン・スマートフォンなどで無料での音楽ファイルのダウンロード利用が増えた」「購入したいと思うほど好きな楽曲では無かった」「購入したいと思うほど好きなアーティストでは無かった」「購入しなくても無料ダウンロードで入手したため購入しなかった」などが挙げられる(1割以上の回答率)。無料ダウンロードを原因とするものが2項目、趣味趣向によるところが2項目。

もっともこれらの項目は、最上位項目ともあわせ、多分に浅からぬ関係にある。例えばトップの「現在保有している音楽で満足」は「お腹いっぱい」状態であり、よほど刺激的で興味のある内容でない限り購入欲は生じなくなる。だからこそ「購入したいと思うほどの好きな楽曲」のハードルが上がり、購入には至らないと考えられる。

興味深いのは上位3位に挙げられている理由「無料視聴」(ストリーミングなどの利用であり、端末にダウンロードしての視聴では無い)が、「ファイルのダウンロード」よりも上位に挙げられていること。ファイル取得をするのではなく無く、聴きたい時にそのサービスにアクセスし、聴けることが前提となっている。多分に面倒が無いクラウド的な使い方を好んでいると見ることができる。

今件項目について前年分(2012年)の同条件における結果との差異を算出し、理由の変化を見ると次の通りとなる。

↑ この半年間に「新たに知った曲」を購入しなかった理由は(2013年、複数回答、無料視聴層限定)(前年からの変移)
↑ この半年間に「新たに知った曲」を購入しなかった理由は(2013年、複数回答、無料視聴層限定)(前年からの変移)

「無料のダウンロードで入手できたから購入しない」は大幅減。その一方で「現在保有している音楽で満足している」「パソコンやスマートフォンなどで無料動画配信サイトでの聴取が増えた」が大きく増え、「購入したいと思ったが金銭的余裕が無かった」がやや大きめな上げ幅を示している。個人ベースでの音楽資産の増加による「満腹感」が拡大し、さらに金銭的余裕が無くなったため、購入を決断するまでのハードルが上がり、無料の音源で満足してしまう。増加項目は浅からぬ関連性を有しているように見える。

無料視聴にせよダウンロードにせよ、音楽の対価支払いを代替している事例が多数に及ぶのは事実である。一方で状況を上手く活用し使い分け、自らの知名度やセールスに恩恵を受けている歌手や事務所、グループもある。現状を把握した上で、それをどのように分析し、音楽資産の飽和を感じる人が増えてきた昨今において、いかなる手立てを打つべきか。この判断は音楽業界関係者にゆだねられている。そしてその判断次第で、今後の業界の方向性と市場の拡縮が決まっていくに違いない。


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